第57期王将戦第5局
追いつめられた久保八段は先手番の本局の命運を四間飛車にかけた。四間飛車は最近居飛車の対策に押され気味の感があるが、ここぞという場面での採用は四間飛車党にとってはうれしいことだ。
対する羽生王将も最近見ることの少なくなった5七銀左の鷺宮定跡を採用した。ただ羽生が理由もなく採用するはずもなく、おそらく図の△6四歩がテーマだったようだ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v飛v銀v金v金v玉v角 ・|二
|v歩 ・ ・ ・v銀v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 銀 ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:なし
【手数=30 △6四歩 まで】
新しい指し方のようで手元に資料なし。
少し進んで下図。封じ手の▲7五歩に対して△8四飛としたところ。後手の対応は強気だ。▲8六歩からの逆襲が見えている。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金v金v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v桂 ・v銀v歩 ・v歩 ・|三
| ・v飛v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 銀 ・ ・ 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 歩
【手数=46 △8四飛 まで】
以下▲8六歩△7五歩▲8五歩△7四飛▲8三角△7六歩▲7四角成△7七歩成▲6九飛△6八歩▲7九飛と進んだ。
後手の狙いは飛車を見切って△7七歩成を決行することにあった。
△7七歩成に対し一旦▲6九飛として△6八歩と打たしたのが工夫の手順だった。後々になってこの△6八歩があるのとないのでは大違いになる。
形は違うが、この踏み込んだ羽生の指し方は第55期王座戦第3局(久保●vs○羽生)を思い出す。あの時は△7七飛成と飛車を切ったが、対局相手も感覚も似ていると思う。
終盤戦は両者一歩も譲らない激しいものとなった。下図は△5九飛と飛車を下ろしたところ。次の手はなるほどと思った。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金v金v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v桂 ・v銀v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ 馬 ・v歩 ・v歩v桂v歩|四
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 ・ ・ ・ 金 銀 桂 歩 ・|七
| ・ ・v馬v歩 ・ ・ 金 玉 ・|八
| 香 ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:飛 銀 歩三
【手数=68 △5九飛 まで】
ここから▲4六金△1五歩▲2五桂△7七馬▲3五歩△1六歩▲3四歩△6三金▲同馬△同銀▲5一飛△3一歩▲5三飛成と進んだ。
▲4六金は部分的には悪形だが、この場合は上部に厚い好手だ。
△1六歩▲3四歩と互いに譲らない。
▲5一飛は狙いを秘めた手で、本譜は狙い通りになる。即ち▲5三飛成だ。△同金は▲3三銀が厳しい。場合によっては詰みまである。
これは先手が勝ちだと思った。
しかし羽生はその手順を選択した。先手玉が3七〜4八と逃げた時に7七の馬がいなくなると▲5九玉と飛車を取る手が生じる。
本譜もそのように進んで先手玉に王手は続くものの不詰め。したがってやはり先手勝勢というのは間違いなかったのだ。
しかし、羽生は先手玉が詰むと読んで本譜を選択したようだ。図は△7五桂としたところ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:飛 銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v桂v銀v金v歩 角v歩 ・|三
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v桂 ・|四
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・ ・|五
| ・ 玉 ・ ・ 歩 金 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ 歩v杏|七
| ・ ・ ・v杏 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v角|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:飛 金 銀 歩七
【手数=108 △7四桂 まで】
以下▲7五玉△6四金▲同歩△6五飛までで後手の勝ち。
これが羽生ブランドか。久保は最後の最後で間違えてしまった。▲7五玉は頓死である。
久保にとっては惜しい敗戦となった。羽生は安定度抜群で王将位4連覇となった。
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