棋王戦

2009-04-02

第34期棋王戦第5局

佐藤棋王の将棋は序盤から創意工夫があり、何が飛び出すか分からない面白さがある。そこが魅力的なのだが、そこは諸刃の剣。時にはうまく行かない時もある。
第5局はそんな佐藤将棋が裏目に出てしまった一局かも知れない。

後手久保八段のゴキゲン中飛車に対して先手佐藤があまり見かけない駒組をしたのが下図。8八の銀を▲7七銀と上がったところ。先手の主張は6筋の位で、ここを奪還されてしまっては即作戦負けに繋がりそうだ。
当然後手も6五の地点に対して動いた。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v飛 ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v銀 ・v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 
【手数=35 ▲7七銀 まで】

ここから△7三桂▲6六銀左△5五銀▲同銀△同歩▲7七桂△3三角▲3六歩△9二香▲3七桂△4二角!▲6六銀△9五歩と進んだ。
△7三桂は当然の揺さぶり。5五の地点で銀交換になった。互いに角銀を持ち合うことになったが、後手は△3三角と角を手放した。この角が一見ぼやっとしているが、△9二香〜△4二角として狙いが見えてきた。
気がついてみると、先手陣は左桂を跳ねており9筋が薄く、本譜の端攻めを受ける手だてがない。△4二角の瞬間に▲5二銀という手があるが、△5二同飛▲4一角△6二飛▲3二角成に△1五角があって決め手にはならない。

久保は5度目のタイトル挑戦で念願の初タイトルを手にした。振り飛車党のタイトルホルダーは藤井竜王以来である。振り飛車党にとって数少ない希望の光だ。
久保は順位戦の昇級こそ逃したものの、最多対局(73局)最多勝利(49勝)。棋王戦を有終の美で飾って最高の年になった。
反対に佐藤は7年ぶりの無冠となった。

これで7大タイトルの内、羽生四冠(名人王座棋聖王将)以外は全てB1級の棋士(渡辺竜王、深浦王位、久保棋聖)が保持するという事態になった。上位クラスの層が厚くなったということか。

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2009-03-22

第34期棋王戦第4局

先手久保八段の四間飛車はまあ想像の範疇だとしても、後手佐藤棋王の棒銀には驚いた。第4局はクラッシックな将棋となった。

後手の棒銀はスピード重視の△4二銀型。図は△7五歩の仕掛けに▲同歩△同銀としたところ。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・v金v銀v玉v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 角 銀 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:歩 
【手数=32 △7五同銀 まで】

ここから▲9五角△7四飛▲7六歩△6六銀▲同銀△同角▲7五銀△9四歩▲7七角△同角成と進んだ。
先手が▲7五同歩と応じたのは▲9五角の幽霊角があるから。△7四飛と当たりを避けた手に対し、▲7六歩の催促。後手の強気に応えて△6六銀▲同銀△同角▲7五銀と進んだ。
この▲7五銀には△同飛▲同歩△9一角成で難解というのが定跡だが、後手は△7五同飛ではなく△9四歩。初めて見る手だ。

局面は一旦収まり下図。△8二飛と7二の飛車を8筋に移動したのに呼応して▲8八飛としたところ。
先手は馬を作っているが働きは今一つ。何となく後手の誘いに乗った形で馬を作らされた感じもする。▲7一馬には△8四飛と縦に逃げて何も起きない。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v玉 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v角v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 馬 歩|六
| ・ 歩 桂 金 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:なし
【手数=55 ▲8八飛 まで】

ここから△8六歩▲同歩△8七歩▲5八飛△8六飛▲8九歩△8八歩成▲同歩△8七歩▲5六歩△8八歩成▲5五歩△7八と▲同飛△8九飛成と進んだ。
△8六歩以降自然な手の連続で簡単に龍を作るのに成功した。

以降の先手の指し方は悪いながら粘る指し方に終止した。いくら久保と言えども毎回軽快に駒が捌ける訳ではなく、悪くなると相手に決め手を与えずに粘る将棋も巧い。
しかし、本局はチャンスは訪れなかった。
仕掛けの辺りから先手指し方に疑問手があったと思われる。本譜の△9六歩は二枚換えよりも良いと判断した訳で、確かに収まると先手だけ銀を使っており、さらに歩損。一理ある指し方だ。

佐藤は2連敗後の2連勝。虎の子の棋王位を守ることができるか。

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2009-03-09

第34期棋王戦第3局

佐藤棋王は2連敗で早くも角番に追い込まれている。棋王位を失うと無冠になってしまう。

そんな正念場の対局も佐藤の将棋にぶれはなかった。後手久保八段のこきげん中飛車に、佐藤は無骨とも思われる仕掛けを断行した。
図は▲4一角としたところ。後手としては▲4一角は気持ち悪いものの無理筋と判断しているところに敢えて飛び込んでいるのが佐藤らしい。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ 角v銀 ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v歩v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:なし
【手数=31 ▲4一角 まで】

ここから△4二飛▲3二角成△同飛▲2二金△5二飛▲3一金△2六歩▲同飛△5三角▲4六飛△3一角▲4三飛成と進んだ。
割り打ち角から▲2二金とぶち込む手が成立しているとして、踏み込むのはいかにも佐藤らしい。
一方▲2二金に対して△5二飛とあっさり3一の銀を見捨てた手は捌きの久保らしい。▲3一金に△2六歩が狙いの一手でこの歩を取ると本譜のように△5三角の飛車金両取りとなる。
△2六歩は観戦していて気づかなかった好手だ。
しかし先手は堂々▲2六同飛。金を取らせて龍をつくった。駒損でも駒の効率でバランスが取れているという大局観だ。剛直でいかにも佐藤らしい選択ではある。それでも本譜は駒得が大きく後手優勢だと思うのだが。

中盤の下図。▲2二銀のぶち込みがこれまた佐藤らしい無骨な手だ。いかにも筋が悪い。

後手:久保利明八段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v角 ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・ ・ 銀 ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v金v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ 龍 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:歩二 
【手数=57 ▲2二銀 まで】

ここから△6四角▲1一銀不成△5四金▲2二歩成△7四歩▲2四歩△2五桂▲2三歩成△5三飛▲2六龍△1四歩▲2四歩と進んだ。
みすみす働きの悪い角に逃げられ、▲1一銀不成と香を拾っている間に△5四金と遊び駒を中央に進出されている。
その間に先手は▲2二歩成▲2四歩▲2三歩成▲2四歩と2筋でと金生成。確実な攻めだがそれだけに足が遅すぎるとしたものだが、後手に手がないのを見越した卓越した大局観の裏付けがあったのかも知れない。
途中に指された△7四歩が少し嫌な予感のする手だ。指した時は△7三角あるいは△7三桂の余地を作った価値の高い手だが、これらが指されないと単なる傷になりかねない。

頃合いと見て後手が攻め合いにギアチェンジし、壮絶な打ち合いを演じているのが下図。▲5五銀の飛車取りを放置して△5七銀成としたところ。果たしてどちらが攻め勝っているのか。

後手:久保利明八段
後手の持駒:飛 金 香 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ 銀|一
| ・v玉v銀 ・ ・ と ・ と ・|二
| ・v歩 ・v歩 ・ ・ 金 ・ ・|三
|v歩 ・v歩 ・v飛 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v歩 馬 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 桂 歩v全 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・vと ・|八
| 香 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 桂二 歩 
【手数=108 △5七銀成 まで】

ここから▲5四銀△1九と▲8六桂△7三香▲5二と△6四香▲6一と△6七成銀▲8九玉と進んだ。
△1九とと香を拾ったのは、本譜の▲8六桂に△7三香を用意したもの。△6四香を実現するには香が一枚では足りないのだ。7四歩が傷となってしまったのが後手にとっては痛い。
狙いの△6四香が実現したものの▲6一と△6七成銀に▲8九玉で、先手玉は詰まず、後手玉は必至で先手の勝ちが確定した。

角番にもかかわらず、佐藤にしか指せない佐藤らしい将棋を披露した一局となった。

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2009-03-04

第34期棋王戦第2局

本局の先手久保八段の作戦は石田流三間飛車。しかし単なる三間飛車にはならなかった。
ことの発端は図の▲7四歩だろうか。久保は超急戦を狙っていた。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:なし
【手数=9 ▲7四歩 まで】

ここから△7二金▲7五飛△4二玉▲7三歩成△同銀▲2二角成△同銀▲7七桂△5四角▲5五角と進んだ。
▲7五飛が見かけない手で久保八段の研究手の様だ。▲7六飛だと本譜の△5四角が当たってしまうということだろうが、▲5五角から一歩も譲らない決意表明の手と言える。

図は△6四角の飛車取りに▲7四飛としたところ。少し前に7筋で殺到した先手だが、仮に△6四角で攻め足が止まってしまうようでは久保の超急戦は疑問符が付くことになる。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ 飛v角v角 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:金 銀 歩 
【手数=27 ▲7四飛 まで】

ここから△2七角成▲7五銀△6五桂▲6四銀△5七桂成▲同玉△4九馬と進んだ。
▲7五銀に△5五角なら▲6六銀△6四角の千日手のコースも見える。後手に選択肢があるのでやはり先手の作戦は成功したとは言えないと思う。
しかし、佐藤棋王も乱戦の雄だ。売られた喧嘩を買って出た。▲7五銀△6五桂と千日手コースを否定。かくして両者足を止めての壮絶な打ち合いとなった。居飛車振り飛車対抗形でここまで激しい攻め合いは記憶にない。

このような乱戦は手番を渡すのはとても勇気が必要だろう。現在手番は後手が持っている。ここで寄せきれれば後手の勝ちなのだが。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:金 銀二 桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 龍 ・ ・v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v玉v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 金 ・ ・v馬 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 金二 桂 歩二 
【手数=41 ▲6八玉 まで】

ここから△5六金▲7八玉△7七歩▲8九玉△6七金▲7六角△7八銀▲8八玉と進んだ。
△5六金と攻防に金を置いたが、▲7八玉の早逃げ。△7七歩にも▲8九玉として先手玉は相当安全になった。△6七金に▲7六角が真の攻防手で先手勝ちがはっきりしたようだ。

乱戦だけあって57手の短手数だったが、スリリングな将棋だった。
久保は初タイトルまであと1勝だ。

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2009-02-09

第34期棋王戦第1局

振り飛車受難の時代が到来して久しく、角道を止める振り飛車はほとんど見られなくなった。台頭するのが角道を止めない、ゴキゲン中飛車系の力戦振り飛車だ。
久保八段も多分に漏れず、四間飛車からゴキゲン中飛車と石田流三間飛車に基軸を修正した振り飛車党の一人だ。そして最も成功を収めている一人とも言える。
今期の勝率は0.719と圧倒的だ。タイトル挑戦は過去4回(第26期棋王戦、第49期、第55期王座戦、第57期王将戦)。ちなみに相手はいずれも羽生四冠。そろそろ初タイトルと行きたいところだ。
受けて立つ佐藤棋王としては虎の子の棋王位である。やすやすと手放す訳にはいくまい。

第1局は後手久保のコキゲン中飛車から5筋の位を確保した。対する佐藤の作戦は今や主流ではない3七銀〜4六銀とする指し方。いずれに左銀も繰り出して5筋を奪還するのが狙いだが、後手が面白い対応策を見せたのが下図。
図は△4四歩に▲4六銀と繰り出したところ。このままでは5五の歩が取られてしまう。

後手:久保利明八段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v飛v銀 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:なし
【手数=19 ▲4六銀 まで】

ここから△4五歩▲同銀△4三銀▲4六歩△3二金▲4七金△2二角▲9六歩△3三桂と進んだ。
△4五歩▲同銀と一歩を犠牲に銀桂交換に持っていくのが狙いの手だ。しかしこの手は▲4六銀と出た時から先刻承知であろう。

少し進んで下図。先手は2筋の歩を切った。そろそろ捌きのアーティストの捌きを見たいところだ。

後手:久保利明八段
後手の持駒:銀 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v金 ・v飛 ・v金v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| 歩 ・ ・v銀 歩 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 金 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:桂 歩三 
【手数=45 ▲2八飛 まで】

ここから△5五飛▲同角△同角▲7七銀△4四角打▲5四歩△7七角成▲同桂△7六銀と進んだ。
△5五飛はこう行きたいところ。個人的にはこのような手が指せるのが振り飛車の醍醐味と思っている。
▲7七銀はやむを得ない受けだが、△4四角打が力を貯めた手。次に△7七角成▲同桂△7六銀の狙いがある。
ここで▲5四歩が不可思議な手だ。本譜は結局先の手順を許す訳だが、その代償がない。例えば▲5四歩では▲4一飛とでもしておけば、本譜の牽制にはなる。

久保にとって初タイトルに向けて幸先の良い先勝となった。

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2009-01-12

棋王戦挑戦者は久保八段

- 対局者:久保利明八段○vs●木村一基八段
- 棋戦名:第34期棋王戦挑戦者決定戦第1局(Web中継)
- 対局日:2008/12/26

棋王戦挑戦者決定戦は勝者の山から木村八段、敗者復活の山から久保八段が勝ち上がった。
既に久保が二連勝して挑戦権を得ている。ここでは第2局ではなく第1局を振り返る。

図は▲6五歩としたところ。角道を止めない中飛車だったが、歩越銀には歩で対抗ということで▲6六歩から延ばしたものだ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩v銀v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 ・ ・ 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 
【手数=29 ▲6五歩 まで】

ここから△同銀▲6八銀△7六銀▲5五歩と進んだ。
後手木村は堂々△同銀だが、▲6八銀が久保らしい軽快な手だ。△7六銀と突っ込んでくるが▲5五歩の味が良い。振り飛車を持ちたい感じだ。
なお、▲5五歩は戸辺四段の著書「楽しく勝つ!! 力戦振り飛車」で紹介されている。

しかし、木村も知らないはずがなく、想定の局面と思われる。歩得を主張して、押さえ込むつもりで、これはこれで木村らしい。
図は△5五歩としたところ。控え室に来た戸辺四段も「これはひと目良さそうな手ですね」。森けい二八段はこの手を予想していたとのこと。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・ 歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v銀 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=38 △5五歩 まで】

ここから▲7七桂△8六歩▲同歩△同飛▲4五歩△5四金▲5六歩△4五歩▲5五歩△4四金▲5四歩△5二歩▲4三歩と進んだ。
捌こうとする先手、押さえ込もうとする後手の攻防が続くが、押さえ込み網が今にも崩壊しそうだ。▲5四歩に△5二歩と卑屈に受けて何もなければ良いが、▲4三歩の手裏剣で痺れた。

久保は第26期以来、8期ぶりの棋王戦挑戦になる。第26期棋王戦の相手は羽生棋王。この時久保はタイトル戦初登場だったが羽生の前に屈した。特に第4局の羽生の妙手は印象に残っている。
今回は佐藤棋王が相手だ。羽生が絡まないタイトル戦ではあるが、興味深い顔合わせとなった。

2008-10-05

羽生の七冠遠のく

10月2日、羽生四冠は34期棋王戦挑戦者決定トーナメントの3回戦で久保八段に破れた。
これで事実上来年中に七冠になる可能性はなくなった。

ベスト8の顔ぶれは以下となった。棋王戦はベスト4まで行くと、敗者復活戦システムがある。
振り飛車党の旗色が悪いが、羽生に勝った久保には是非挑戦者になって欲しい。

阿部八段
渡辺竜王

鈴木八段
木村八段

深浦王位
橋本七段

阿久津六段
久保八段

2008-03-30

第33期棋王戦第5局

本年度最後のタイトル戦、棋王戦最終局は振り駒で佐藤棋王が先手に。棋王戦は先手の連勝が続いている。
矢倉の将棋となった。

図は先手が▲1八香〜▲1九玉と穴熊に入ったところ。穴熊に組み換えて駒組勝ちを目指すのは矢倉も例外ではなく、すんなり穴熊に組めれば先手の勝率は跳ね上がる。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:なし
【手数=47 ▲9九玉 まで】

ここから△3三桂▲8八銀△6四角▲7七金寄△7三桂▲1七香と進んだ。
△3三桂では先に△6四角としておけば▲8八銀の瞬間に△8六歩がある。△3三桂は本譜の様に▲7七金寄まで指されて損とされる。後手は敢えて本譜を選択したと見るべきだろうが、狙いは何か?
ひとしきり玉を固めてから▲1七香が柔軟な手だった。一旦▲1八香と指しているだけに指し難いが△3三桂で後手陣の端が弱くなったのを見越した手だ。
先手は守っては穴熊の陣形、攻めては端攻めの準備万端で不満のない展開だ。

図は先手の端攻めを後手が全力で受け止めるべく△2四銀打としたところ。後手陣は金銀は沢山あるが効率はあまりよくない。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:香 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・ ・v桂v歩 ・|三
| ・ ・v歩v角v歩 ・v金v銀 ・|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ ・v銀 ・ 飛|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 金 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 銀 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:桂 香 歩二 
【手数=72 △2四銀打 まで】

▲3六歩△2六銀▲1六飛△1五銀引▲同飛△同銀▲1四桂△3一玉▲1三角成と進んだ。
飛車取りだがこの瞬間に技を掛けた。飛車を切って▲1四桂〜▲1三角成で先手好調。「堅い」「攻めてる」=「切れない」、穴熊の必勝パターンだ。

佐藤棋王が防衛、二連覇で幕を下ろした。
羽生としては名人戦に弾みをつけたいところだっただけに、不本意な結果となった。本調子なのか心配だ。本局の狙いも分からず終い。
佐藤はA級順位戦こそ調子が良くなかったが踏みとどまって、棋聖、棋王を防衛できたのでまずまずの一年だったのではないだろうか。

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2008-03-10

第33期棋王戦第3局

超急戦ごきげん中飛車。△5四歩再びである。

この手に関してもう一度経緯をまとめると、
1) 第78期棋聖戦第4局(渡辺●vs○佐藤)で佐藤棋王が指して話題になった。一見無筋だが、ここに目をつけたのはいかにも佐藤らしい。
渡辺竜王は▲6三桂成△同玉▲6六香だった。
▲6六香は後手の歩切れを突いて自然な手だが、きわどいながら後手が勝った。
2) 第57期王将戦第2局(羽生○vs●久保)では久保八段が採用した。
羽生王将は▲6三桂成△同玉▲9六角と手を変えた。この手も一見△7四歩と受けられて損な様だが、この形で▲6六香としたのが先の棋聖戦第4局より明快だ。
現在のところこの▲9六角がこの形での決定打と目されている。

さて本局は、佐藤が再び△5四歩を採用した。△5四歩が成立することを身を以て証明するということか。先手羽生が予定とばかりに▲9六角。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:銀 桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀 ・ 龍|一
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v玉 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 角 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・v馬 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:香 歩三 
【手数=25 ▲9六角 まで】

▲9六角に対し、△5三玉。王将戦第2局でも検討されていた手だ。
以下、▲6六香△7四桂▲2二歩△6六桂▲同歩△7四歩▲同角△6六馬▲6五桂△6二玉▲6四歩△7二銀▲3一龍△同金▲6三銀△7一玉と進んだ。
後手の頼みは現在8八の馬が遠く1一龍の取りになっていること。これを生命線として、薄氷の受けで凌ぐしかない。
▲6六香も▲2二歩も龍取りを遮断するのが目的で、背後ではずっと1一龍をめぐる攻防が続いている。
しかし、▲6五桂〜▲6四歩と後手玉を下段に落として、▲3一龍と目標の龍を切った。取った銀で▲6三銀として攻めるが△7一玉がらしからぬ弱気な手だったのではないだろうか。
ここは△5一玉としてみたい気がする。

△5四歩を指すからには▲9六角の対策を詰みまで検討してるに違いないと思うのだが、後手の対応が一貫性に欠ける気もする。
△5四歩を巡る攻防は▲9六角で無理筋というのが現在のところの結論のようだ。

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2008-02-24

第33期棋王戦第2局

後手羽生二冠のごきげん中飛車に先手佐藤棋王は本家新丸山ワクチンで対抗の一局は終盤戦に見所の多い一局になった。
図は仕掛け辺り。後手が△5五銀〜4四角と6筋にロックオンしたのに対して、先手も6二飛と回る等して、6筋で戦いになっている。
△6五桂に対して、後手は▲6六歩ではもたないと見て▲6六歩とした。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v銀 ・v歩v桂v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v角v歩 ・ ・|四
| ・ 歩 ・v桂v銀 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 銀 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ ・ 桂 金 ・ 銀 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 歩 
【手数=49 ▲5六歩 まで】

ここから△6四銀引▲6六歩△7七桂成▲同金寄△2六角▲5八飛△2五桂▲2八飛△5九角成▲2五飛△4八馬▲2七飛△1五桂と進んだ。

激しい戦いになるかと思ったが、△6四銀引と自重。一転△2六角〜△2五桂と2筋での手作りを目指した。
これに乗ずる形で、先手も応じて2五の桂を飛車でとったものの飛車が狭い状況に追い込まれて、△1五桂で飛馬交換の権利を得た。
この辺りでは、角2枚では後手陣に隙はなく、桂損ではあるが飛車を持った後手が優勢になったと思った。

図は△6五歩▲同桂△6四歩としたところ。強く攻めを催促する形で決めに行った。先手の攻めは切れていますよ、という訳だ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ 歩 ・ 桂 ・ ・ ・ ・v桂|五
| 歩 銀 ・ 角 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・v龍 ・ ・|八
| 香 ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 桂 歩 
【手数=80 △6四歩 まで】

ここから▲7三歩△6二金▲2六角△5二金左▲8四歩△6五歩▲8三歩成△同玉▲8四歩△8二玉▲3三角成と進んだ。
▲3三角成と手が戻るようでは終局近しと思われた。しかし3三馬は自陣にはよく利いている。後に2六の角も1五を経由して3三に馬を作る形になる。

図は▲8八同馬(先に触れた1五を経由して3三馬としたという上図の▲2六角)に一旦△1一龍と退避したところ。手を渡すが先手に攻め筋はなくやはり後手優勢だろう。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:角 金二 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v玉v歩v銀v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ 桂v桂v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 銀 銀 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 馬 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・v龍 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:銀 桂 歩 
【手数=115 ▲8八同馬 まで】

ここから▲6五銀△同銀▲7三銀△8三玉▲8四歩△9二玉▲9五歩△8七銀(?)▲同金△9九龍▲9八桂と進んだ。
▲6五銀は本譜の▲7三銀を打つための捨て駒。▲9五歩は最後のお願いという感じの手だ。
ここで△8七銀は羽生らしくない終盤での悪手。駒を渡した上に確実に先手に手が戻る。ここは△7六金くらいで勝ちだったと思う。

終盤のねじり合いが見応えのある将棋だった。佐藤の粘り方は若かりし日の羽生のようだった。
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2008-02-15

第33期棋王戦第1局

二冠同士の対決である。熱戦の期待度が特大の棋王戦が始まった。
第1局は後手番佐藤棋王の一手損角換り。佐藤陣が右金をぐいっと△3四金と盛り上がったのを機に、羽生二冠が5三の地点に角銀交換から成桂を作るという展開になった。
先手が攻めの二の矢をいかに作るかという将棋になったと思ったのだが、予想外の方向に進んで行った。
それから少し進んだのが下図。2六にいた飛車に対し△3七角と打ち、▲2九飛△7五歩▲同歩としたところ。3七に打った角が狭いがこれが生還すれば後手有望と思ったのだが...。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・ 圭 ・v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v金 ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・ 歩v歩 歩v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 銀v角 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 金 ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:銀 歩 
【手数=58 △7五歩 まで】

ここから▲同歩△9三桂▲4六銀打△7三飛▲3七銀△5三飛▲4六銀右△7六歩▲同銀△8四桂▲6五銀と進んだ。
後手は△5五角成としないで△9三桂。▲4六銀打とされて角が御用になってしまった。
角取りを放置して△7三飛〜△5三飛と成桂を外しに行ったが、これでは3七に放った角の意味は何だったのか、ということになってしまう。
さらに、△8四桂の銀取りに▲6五銀と歩頭に銀を出る手があるようでは(△同歩なら▲6四角の準王手飛車)、後手の指し方はちぐはぐと言わざるを得ない。既にはっきり先手優勢になったと思う。

しかしなかなか決め手が出ない不思議な展開に。
図は▲4一角に△3二桂と受けたところ。駒の損得から判断しても依然先手優勢だろう。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:飛 金 歩七 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v玉 ・|二
|v桂v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩v桂 ・ 銀v歩 歩v銀 ・v香|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・v角|五
| ・ ・v香 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:飛 金 
【手数=122 △3二桂 まで】

ここから▲9六歩△2九飛▲6八金寄△4二金▲7四角成△3三角▲5六馬△4五歩▲同銀△4四桂▲5五馬と進んだ。
ここで▲9六歩と自陣に手が戻るのが不思議な感覚だが、羽生らしい手と思った。
△2九飛と△4二金でとりあえず自陣の脅威を半減させるが、一旦退いた馬がぐるりと5六まで回ってきて、▲5五馬。またしても歩頭の捨て駒が出現した。

総手数187手、熱戦ではあったが終わってみれば終始先手がリードしていたと思う。
2度の歩頭の捨て駒が印象に残る一局だった。
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