王位戦

2009-10-05

第50期王位戦第7局

8五飛戦法復活の兆しがある。
横歩取り8五飛にも多様なバリエーションがあるが、木村は少し古めの指し方を、最終局に投入した。第51期王座戦(羽生王座vs渡辺五段)は8五飛シリーズとして有名だが、第2局第3局と同様の進行となった。
図は△7四歩としたところ。王座戦第3局では△5二玉▲7五歩△7二金▲6八銀△8二銀▲7六飛△8三銀▲4八銀△7四歩と進んでいる。△7四歩は▲7五歩と先に突かれるのを嫌ったか。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v金 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 飛 ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩 
【手数=34 △7四歩 まで】

ここから▲6八銀△5二玉▲2八銀△7三桂▲3六歩△5五角▲5六飛△2八角成▲同金△5五銀と進んだ。
先手は▲2八銀〜▲3六歩と銀の活用を目指すが、△5五角の返し技があった。素朴だが有力のようだ。本譜で先手の飛車が詰んだ。

飛車を手持ちにした後手乗りの声が大きくなってきた。
図は▲2四桂としたところ。これで後手の飛車も詰んだ。一手指す方が優勢に見える熱戦だ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金 ・ ・v玉v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ 銀 ・v歩 ・ ・ ・ 桂v飛|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ 角 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 桂 玉 歩 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ ・vと ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・v飛 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 銀 
【手数=69 ▲2四桂 まで】

ここから△2三金▲8五角△9四金▲同角△同歩▲3二金△5二玉▲6五桂△同歩▲7三銀成△6六歩▲5六玉△9二角▲6六玉△5四桂▲7五玉と進んだ。
△2三金は指しにくいと思われたが木村が指すとこれで持ちこたえているようにも見えるから不思議だ。
▲8五角に△9四金も素朴な手。金を持たせると本譜の順で後手玉が相当危なく見えるが持ちこたえていると見ている。
▲6五桂は玉の逃げ道を作りつつ△同歩なら7三銀成を見せている。好手だ。

この後も手に汗握る攻防が続くが、先手玉は9一まで潜り込んで先手が逃げ切った。先手玉の追い方がまずかったか。

木村にとっては棋聖戦に続いて惜しい結果となった。タイトル保持者と同等(に近い)実力があることを知らしめた。懲りずに、腐らずに頑張って欲しい。
竜王戦に続いて、3連敗後4連勝の奇跡が起ったことになる。深浦王位の見事な防衛劇ではあるが、空き過ぎた日程(王座戦より先に始まり王座戦より後に終了)も深浦に幸いした気がする。

ともあれ長い長い王位戦は深浦の防衛で幕となった。羽生不在のタイトル戦だったが、50期という節目に相応しい内容だった。
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2009-09-14

第50期王位戦第6局

第6局は矢倉。後手深浦王位が端から先攻し、先手木村八段が受ける展開となった。
図は。3一の角を△9七角成としたところ。後手ながら先攻し一定の成果が得られたと思われるが、受け師の待ち受けるところだったか、木村らしい柔らかい受けの手が出る。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ 馬 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
|v飛 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
|v馬 歩 玉 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・v杏 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:銀 桂 香 歩三 
【手数=62 △9七角成 まで】

ここで先手は▲9八香と指した。
犠打の香が好手で、先手の攻めは遠のいたかに見えた。
しかし、攻め合いに転じた判断が悪かったのか、押し切って深浦が勝利した。

先期竜王戦に続き、今期王位戦も挑戦者3連敗の出だしから、タイトルホルダーが3連勝するという展開となった。
竜王戦では史上初の3連敗後4連勝の快挙を成し遂げた渡辺竜王が、初代永世竜王決定決戦を制したのは記憶に新しい。
果たして王位戦はどうなるか。注目の最終戦である。

戻って下図。ここで△9六香と走ったのが本譜の順だが、週刊将棋誌によると過去の順は全て△5四金だったと言う。
理由は本譜の様に▲4六角とされると飛車取りになり、勢い攻め続けるしかなくなるからだ。
△9六香成立の是非は上図での▲9八香の評価如何ということになりそうだ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
|v香 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 銀 歩 ・ 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 歩四 
【手数=48 △9六香 まで】

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2009-08-24

第50期王位戦第5局

第5局は角換り腰掛け銀。深浦王位は4、2、1、7、3筋の順で歩を突き捨てるオーソドックスな仕掛けを採用した。
飛車の引き場所は2六の浮き飛車。1日目はどんどん進んで下図。ここで▲8七歩と敢えて二枚換えを催促したのが過去例らしい。

後手:木村一基八段
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v金v歩v銀v銀 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩|五
| 歩v飛 銀 歩 ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ ・ ・ 銀 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・v角 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩四 
【手数=66 △8六飛 まで】

ここから▲7七金△8一飛▲8六歩△7五歩▲8七銀△8五歩▲7二角と進んだ。
▲7七金が深浦用意の一着。二枚換えよりは自然な感じがする。一旦飛車を下段まで退散するが、△8五歩から合わせて再攻撃。後手玉はこれ以上固められず、先手陣の当たりがきついので、ここで攻めるのは自然な感じだ。
▲7二角は封じ手で1日目の割にはサクサク進んだ。

図は△5八角成とじっと4九から成ったところ。飛車を7二角と交換した直後の△5八角成で、飛車を渡しても早い手はないと見ているのだが。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ 全 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v金v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|五
| 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ ・ 金 金 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:飛 桂 歩六 
【手数=92 △5八角成 まで】

ここから▲4二歩△4三銀▲4一歩成△2二玉▲3五桂△3四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲3四飛と進んだ。
▲4二歩が軽手。△4三銀として一旦は受けに回ってみたものの、▲3五桂〜▲2四歩の合わせが厳しかった。

深浦3連敗の出だしだったが、踏ん張って2勝を返した。
深浦は竜王戦でも挑戦者決定戦まで勝ち上がっており、3連敗しているものの決して不調という訳ではなさそうだ。
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2009-08-08

第50期王位戦第4局

まさかの3連敗で窮地に追い込まれている深浦王位。地元佐世保で行われる第4戦は負けられない一戦となった。

相矢倉でお互いに玉側の香を上げて穴熊を想定した駒組となった。

図は△3二金と穴熊のハッチを閉めたところ。この手にはもう一つの意味がある。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v玉|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金v香|二
| ・ ・v角v歩v銀v金 ・v歩v銀|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 角 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 銀 桂 ・ ・|七
| 香 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=58 △2二金 まで】

ここから▲1五歩△同歩▲同角△1四歩▲2六角△3二飛▲4五桂と進んだ。
△3二飛が狙いの一着。後手は穴熊に入城しており後は戦いを起こしたい。
一方先手は▲9八香が中途半端。決戦策の▲4五桂は封じ手だが、意外な一着だ。当然▲3五歩としてもう少し陣形を整備すると思っていたので。
封じ手の▲4五桂が木村八段の手にしては元気が良すぎると感じたが、この手以外に活路を見いだせないとう判断だったのだろう。

後手に飛車交換を拒む理由はなく、▲4五桂に△3八飛成▲同銀△4二銀▲4一飛△4五桂▲同歩というのが二日目の進行だ。
後手は悠々4五の桂を取った。先に桂損するものの▲4五同歩というのが後手陣に迫る歩ということなのだろうが、穴熊陣に対してそれほどインパクトはない。これは後手優勢が明らかであろう。

途中、木村らしい粘りの手も見られたものの終止後手ペースで終盤戦に。
図は△5五馬と1九の馬を引き付けたところ。一気の寄せを狙っている。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ 飛 ・ ・v桂v玉|一
| ・v飛 ・ ・v銀 ・v金v金v香|二
| ・v香 ・v歩 ・ ・ ・v歩v銀|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ 角 銀 歩 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩三 
【手数=98 △5五馬 まで】

図以下▲5三歩△8六香▲同角△同飛▲5二歩成△6九銀▲7九金△7五桂までで先手の勝ちとなった。

▲5三歩は承知で△8六香から攻め合い。▲同角△同飛に飛車を取れずに(▲同歩は△8七歩で寄り)▲5二歩成だが、△6九銀〜△7五桂で後手が寄せきった。

深浦は地元佐世保で角番を凌いだ。
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2009-08-03

第50期王位戦第3局

図は後手が△3七歩成と桂馬を取りつつつ金を作ったところ。先手は▲2三歩の垂らしから2筋突破を狙っており、そういう意味では既に目的は達成している。代償として桂損とと金を許したのだが、この2筋突破は見合った戦果なのか。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩v銀 ・ 歩 ・|三
| ・ ・ ・ 歩v銀v歩 ・ 飛v歩|四
| 歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 銀 ・ 歩 ・vと ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩三 
【手数=56 △3七歩成 まで】

ここから▲2二角△4二玉▲1一角成△7六歩▲同銀△6六桂▲3五香△3四歩▲同香△同銀▲同飛と進んだ。
継続手は▲2二角だが軽く△4二玉といなす。後手は得した桂馬で△6六桂。先手でかしたとはとても言えない展開だと思う。
痛いのは飛車の位置で2四だと△3三金が当たってしまう。▲3五香から銀桂交換にはなったが、3四の地点では今度は△2五角の筋を警戒しなければいけない。

その後、敢えて△2五角を打たして飛車を切って迫ったが届かなかった。
木村無傷の3連勝。深浦王位は苦しくなった。
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2009-07-25

第50期王位戦第2局

第2局は相掛りになった。
図は▲3八金としたところ。ひねり飛車の筋を先受けした手だ。それでも手の流れからするとひねり飛車模様にするかと思われたが、後手深浦王位の選択は過激だった。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・v玉v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v桂 ・ ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ 金 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=41 ▲3八金 まで】

ここから△6六歩▲同歩△4九角▲5八角△3八角成▲同飛△2七金と進んだ。
深浦の選択は△6六歩▲同歩と味を付けてから△4九角。さらに角を切って取った金を△2七金と打ち込んだ。
しかしこれはさすがに無理筋だろう。相手は受け師木村八段となればなおさらだ。

後手としては、この後ぼちぼち2筋からと金作りが間に合えばという期待があったがそうはならなかった。
先手は4四の地点で強く飛車交換を強要。互いに飛車を打ち合う展開になった。図は△4六桂と攻め合いに活路を見出そうとしたところ。一見先手陣の方が金駒が少なく、しかも壁銀になっており、後手もやれそうな気がするがそうではない。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ 角v香 ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 歩v桂 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・v桂 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩vと ・|七
| ・ 銀 金 玉 角v飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=72 △4六桂 まで】

ここから▲5二角成△5八桂成▲7七玉△5九角▲6八桂△4一歩▲7九銀△4四飛成▲6二馬と進んで、先手勝勢になった。
▲5二角成からの攻め合いは△4六桂を打たせたところからの既成路線だ。△5八桂成▲7七玉△5九角が怖いが▲6八桂で凌げる。▲7九銀のような受けの手筋の見本のような手まで出現して、ここまでこれば形勢判断も容易だ。

棋聖戦では初タイトルとはならなかったが、木村は好調を維持しているようだ。
王位戦では羽生四冠相手に互角以上に戦った深浦だが、らしくない将棋が続いている。
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2009-07-18

第50期王位戦第1局

羽生四冠(名人棋聖王座王将)のいない王位戦は実に16年振りだ。「夏と言えば王位戦。王位戦と言えば羽生」という印象が根強い。
今期王位戦は、前々期羽生から王位を奪って初タイトル、更に前期羽生の挑戦を退けた深浦王位と、棋聖戦挑戦中の木村八段の目新しいカードとなった。

深浦先手で始まった第1局は、深浦が左金で位を取る5筋位取り中飛車という斬新な将棋となった。この将棋は二日目早々に千日手となった。
封じ手は木村だったが、おそらく既に千日手を決めていて、深浦に今後の展開を考えさせるための作戦だったと思われる。だとすると千日手が戦略的に使われたことになる。

指し直し局は木村先手で相矢倉戦になった。
図は▲8六銀の手筋の早逃げにそれでも△8五桂としたところ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・ ・ ・|四
|v歩v桂 ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ 銀 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 銀 歩 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=40 △8五桂 まで】

ここから▲6五歩△7三銀▲4六角△6四歩▲3六銀△6二飛▲3八飛△6三飛▲6四歩△同角▲6六歩△6二飛と進んだ。
▲6五歩〜▲4六角で後手の右銀は7三に一次撤退。本譜のように6筋にできた拠点を逆に利用するのは、これも矢倉戦の常套手段だが、一旦△6三飛が必要なのであまり特には思えない。
既に入城している先手に対し、まだ玉が4一の後手の戦いは相当制約付きになりそうだ。

4六と6四で対峙していた角を交換したのは後手で、敵陣への角打ちを先着した。少し進んで下図。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・|四
|v歩v桂v歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 歩 歩 歩 歩 銀 ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・v角 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=63 ▲2五歩 まで】

ここから△3五歩▲同銀△3四歩と進んだ。
後手の狙いは銀を入手して△5八銀。これを実現するための手順だが、一歩損してかつ攻めの(しかも現時点ではやや遊んでいる)銀と矢倉城の銀を交換するのは違和感ある。

その後、△5八銀の筋は実現したもの、その間に作られた先手の7三のと金の方が価値が高い。
最後まで明暗を分けたのは玉の位置の差だったと思う。

木村は幸先良いスタートとなった。あれほどタイトル戦で勝てなかったのが、同時進行中の棋聖戦で羽生と互角に渡り合っている現状が自信になっているのかも知れない。
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2008-09-27

第49期王位戦第7局

振駒で先手を握ったのは羽生四冠。運は羽生に見方したのか。
後手深浦王位の一手損角換りという将棋となった。図は△7七桂としたところ。ここまでは前例ありで、近いところでは、24日のA級順位戦木村vs佐藤(千日手)もこの形だった。
ここで木村八段は▲7七角だったが。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=34 △3三桂 まで】

ここから▲7七銀△3六歩▲5六歩△3七角成▲同桂△同歩成▲2六飛△4七と▲7九玉と進んだ。
▲7七銀は新手ということになる。確かに▲7七銀でよければ角を手持ちに進めることができる。△3六歩は勢いというものか。
角桂交換の駒損でも4七のと金も大きいと見ている。とはいうものの▲7九玉の早逃げでと金の存在価値が大きく下がった。やはり無理筋という印象が強い。

しかし、△8六歩▲同歩△8七歩と挟撃の攻めがあって、先手玉も気持ち悪い形だ。後手玉は手掛かりがない。先手優勢と思っていたがそうでもなさそうだ。

図は5筋の歩を切って△5二歩を起点として先手が攻めに転じている局面。▲3五桂に強く△3四金とされて、さて先手はどうするか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 香 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ 歩v玉 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・v金 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂v歩 ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 金 桂 歩 ・vと ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
|v銀 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角二 銀 歩二 
【手数=66 △3四金 まで】

ここから▲2三桂不成△5二金▲3一角△3二玉▲3五歩△同金▲2二角打△2六香と進んだ。
▲2三桂不成はひねり出した感じの手だ。▲3一角から▲2二角打も継続手だが、角がだぶっている。羽生の寄せは異筋と思える手順が多々ある。本譜もその類いだろうか。

少し進んで下図。雰囲気は先手の異筋攻めが成立していそうで、やはり先手が押し切るかという印象だった。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:飛 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ 角 銀 ・|一
| ・v飛 ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v金v歩v歩 馬 桂v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 桂 ・ ・ ・v金v歩 ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 金 桂 歩 ・vと ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・v杏 ・|八
|v銀 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:香 歩 
【手数=82 △5二玉 まで】

ここから▲8五桂△5七と▲同玉△7八飛と進んだ。
▲8五桂は9九の銀取りでもあり、控え室では決め手との声もあった様だ。しかし△5七と▲同玉△7八飛と進んでみると、先手玉はほとんど受けなしだ。
以下▲4二角成から王手を続けるものの、9四まで逃げ切って後手の勝ちとなった。

これで七冠ロードはひとまずおあずけ。星ふたつ以上差の角番を跳ね返すのはいかに羽生と言えども容易なことではないということか。この辺りは9x9=81の「羽生のがけっプチ」シリーズに詳しい。
しかし思い起こせばあの時も七冠目を賭けた王将戦で谷川王将に破れたものの翌年再挑戦しての偉業達成だった。ロードが断たれてしまった感じではない。羽生としては目の前の目標に対して各個撃退するのみだろう。

深浦は王位初防衛。奪取も防衛も羽生とのフルセットにおよぶ死闘で、価値ある防衛だ。
これで朝日杯(これもカウントされるのね)と合わせてタイトル3期となり、九段昇段が決まった。

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2008-09-11

第49期王位戦第6局

角番の羽生四冠にとって、何はともあれ後手番の本局をブレイクしなければいけない。
▲7八金△3二金の形から羽生が△4四歩と角道を止めて、変則的な居飛車戦となった。一目散に銀冠を目指す作戦だが、先手も呼応して矢倉に組んで、玉を囲い合う将棋となった。

図は後手が5筋から動いて△5五飛と走ったところ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩 ・v金 ・v銀 ・|三
|v歩 ・v歩v銀 ・v歩v歩v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=50 △5五飛 まで】

ここから▲5九銀△5二飛▲6七金右△7三桂▲5八飛△5五歩▲4六角△2二玉▲9八香と進んだ。
王位戦の中継は解説がないが、局後の感想では両雄ともこの辺りを振り返っているが、互いに違うニュアンスなのが面白い。

- 羽生「5筋から攻めましたが、5五歩(五十六手目)と打つのでは、成果が出ませんでした。玉頭にキズが残っているので、少し悪いと思いながら指していました。勝ちになったと思ったのは6五銀(百四十二手目)のところです」
- 深浦「飛車をぶつけ、5五歩(五十六手目)と打たせて一段落ですが、5九銀(五十一手目)と引く指し方はよくなかったようです。穴熊も薄いので自信はありませんでした。終盤は何かありそうでしたが、分かりませんでした」

△5五歩と打たせたのは先手の得で一致してるようだが、形勢は互いに自信がないととらえている。
▲5九銀は飛車をぶつけるところまでは気持ち良いが、このままでは不安定なのでどこかで▲6八銀としなければいけない。穴熊への組み換えも常套手段だが、あまり堅くはなりそうもない。確かに互いに指し難い局面なのかも知れない。

5五の地点で飛車交換が行われて下図。▲5五同角と飛車を取ったのが77手目だ。
△7六銀とすり込まれて堅くない穴熊は安閑としていられない局面だ。▲4一飛と反撃した。次の一手はよくある手だが、5五の角に注目。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 飛 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・ ・v歩v歩v銀v歩|四
| ・v桂v歩 ・ 角 ・ ・v歩 ・|五
| 歩 銀v銀 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| 香 金 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩 
【手数=79 ▲4一飛 まで】

ここから△3一飛▲同飛成△同金▲7六金△同歩▲7二飛△6九飛▲5二銀△3三金▲5一銀不成△5二歩▲同飛成△4一金打と進んだ。
後手は先手の攻めを丁寧に受ける。この後角は5一の銀に取られるが、△5二歩の効果で△4一金打が龍取りの先手になっており、先手は▲6三龍と逃げることになる。
先手の5五の角は一歩も動いていない。▲9一角成と香車を取る手が出て来るが、実に103手目だ。

下図は△5五角としたところ。ここでは既に後手が良いと思うが、後手の5五の角はどうだろう。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・ ・v歩v歩v玉v歩|四
| ・v桂 ・ ・v角 ・v桂 ・ ・|五
| 歩 銀v歩 ・ ・ ・ 歩v銀 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ ・v杏 ・ ・ ・|七
| 香 玉 銀 龍 ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:飛 角 金 歩 
【手数=126 △5五角 まで】

ここから▲6六角△1九角成▲8四角△5五馬と進んだ。

角で香車を拾うのは、手渡しの場合が多いが、後手は直ぐに△1九角成と香車を取った。
▲8四角に△5五馬とした局面は、▲8四角があまり一手の価値がないので0手で香車を取って馬となって戻ってきた感じだ。

互いの5五角の振る舞いの差が、本局を象徴しているように思う。
羽生の快勝で、前期に続いて、今期も最終局にもつれ込むこととなった。

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2008-08-29

第49期王位戦第5局

▲7六歩△2六歩▲6八銀に△3四歩。先手羽生四冠の矢倉指向に後手深浦王位が追従して第5局は矢倉になった。
一度矢倉と決まったら、一日目はすらすら進み、60手目を深浦が封じた。57手目までは前例のある将棋だという。
図が封じ手の△4五歩。先手玉は穴熊で羽生の本気モードを感じる。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・ 歩 ・ ・v銀 ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・v歩 ・ 桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀v歩 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=60 △4五歩 まで】
ここから▲3三桂成△同銀上▲4五銀△8六歩▲同歩△3七歩成▲5八飛△4四歩▲5三歩成△4五歩▲4三と△同金▲2四角と進んだ。
後手の狙いは△3七歩成で作ったと金の活用だ。この手に期待して本譜を選んだと思われる。
しかし、幸便に▲5八飛と回られてしまった。△4四歩は変調で、矢倉の金と攻めの銀の交換は明らかに先手得だろう。

結局3七のと金は3七から動くことはなかった。
羽生は完勝で角番を凌いだ。

ちょっと大差になってしまったが、受けて立った後手番の矢倉戦ということで、深浦の痛手はなさそうだ。
羽生は依然角番だが、負けられない戦いが続く。七冠はまだ遥かに遠い。

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2008-08-10

第49期王位戦第4局

後手番の有力戦法としてすっかり市民権を取得した感のある一手損角換りだが、気になる記事があった。
将棋世界誌7月号「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」(p71)に

羽生四冠は《1手損には黄(または赤)信号が灯っているフォーメーションがある》と思っているのではないかと推測(バックワードフィネス)し、それは早繰り銀ではないか。と予測しました。

とあるのがそれだ。確かにタイトル戦での羽生の一手損角換り採用率は少ない。しかし本局(主催紙Web)は一手損角換りを採用した。対して先手深浦王位は早繰り銀。羽生は飛車を四間に振って受けた。これが早繰り銀対策なのだろうか?
序盤の形は省略するが、先手は▲3四歩△同銀とすることで飛車先の歩を切り、後手は▲2四同歩に△2三金と受ける展開となった。
図は▲7九玉と寄ったところ。後手がここで仕掛けた。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・v金 ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 銀 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩二 
【手数=39 ▲7九玉 まで】

ここから△4六歩▲同歩△同銀▲4三歩△同飛▲3二角△4二飛▲2三角成△5七銀成▲4四歩と進んだ。
玉の整備をし合うのは後手としては得ではない。王手飛車の位置関係に入ったこの瞬間が仕掛け時ではある。しかし、▲4三歩△同飛▲3二角の返し技があってうまくいくかどうかは微妙である。

少し進んで下図。2三の金と5七の銀を取り合う形になったことは分かると思うが、少し複雑な手順を経ている。
△5五角の飛車取りに対して▲2七飛と一つ浮いたところ。後手は5七の成銀の処置をどうするかだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ 馬v歩|四
| ・ ・ ・ ・v角v飛 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩v全 ・ ・ 飛 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 歩 
【手数=59 ▲2七飛 まで】

ここから△4七飛成▲同飛△同成銀▲2五馬△3九飛▲4九歩△5二銀打▲4七馬△1九角成▲9二銀と進んだ。
後手は4七の地点で飛車交換することで、一旦は成銀の取りを回避した。しかし成銀が敵陣から離れるので感触は良くない。
結局馬に取られて見捨てる形となった。2三の金も4七の成銀も遊び駒なので取らせてしまう感覚なのだろうか。
そうは言ってもちょっと理解に苦しむ感覚だ。駒得なので穏やかな流れにすれば先手が良いと思っていたら、▲9二銀。局面を決めに行く手だ。

少し進んで下図。先の▲9二銀は△同香に▲9一飛として、9筋に龍をつくるのが狙いだが、本譜はその狙いが現実になっている。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 銀 桂 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| 龍v香v玉 ・v銀 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・v龍 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 金 歩 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 金 香 
【手数=78 △2八龍 まで】

ここから▲4七角△6五桂▲2九香△1八龍▲2一香成△4六角▲4八金と進んだ。
局後深浦は「▲4七角〜▲2九香が苦労した局面」と感想を述べている。▲4七角は△6五桂と攻防の手で返されるのであまり手の価値がなさそうだが、▲2九香からの駒得が狙いだった。
局面を決めるまでには至らず、まったりとした流れになったきた。▲4八金も玉とは反対の方向に動く手で、セオリーとは逆だ。難解。

下図は終盤戦。▲9二銀に続く第2段のような手が出現した。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 桂 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂v金 ・ ・ ・ ・ ・ 杏|一
| 龍v香 銀 ・v玉 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
|v銀 ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 桂 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 香 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 角 ・v龍 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 歩 ・ ・v馬|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=103 ▲7二銀 まで】

ここから▲7二銀△5五銀▲7一銀不成△5六銀▲同角△5五馬▲9八玉△9五桂▲3四角△4三銀▲4四銀と進んだ。
再度敵陣に銀を放り込んだ。この手が好手で厳しかった。馬のラインで何とか自陣を支えようとするが、▲3四角〜4四銀が決め手。

深浦強し。複雑で難解な羽生好みの展開の中で一歩ずづリードを保つ差し回しは見事だった。
やはり一手損角換りは早繰り銀が鬼門なのだろうか。

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2008-08-03

第49期王位戦第3局

第3局(主催紙神戸新聞)は相掛り系の将棋になった。後手深浦王位は先手羽生四冠に銀冠に組ませて戦う方針。
図は△4二飛に▲2六飛としたところ。後手玉は入玉しても銀冠に対してメリットがない。後手番ということもあり、先手の攻めをいなす展開にしたいがさてどうするか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v金v角 ・|二
| ・ ・v桂v金v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 歩 歩 歩 銀 歩 歩 飛 歩|六
| ・ 銀 角 金 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=53 ▲2六飛 まで】

ここから△4一玉▲3五歩△5二玉▲3四歩△同銀▲3六飛△3五歩▲2六飛△3三金▲1五歩△3六歩▲同飛△2四金と進んだ。
△4一玉〜△5二玉と間合いをはかりつつ中住まいにするのが深浦の選択だった。正直ちょっと作戦的に失敗したのかと思った。
しかし、△3三金〜△2四金が力強い継続手。攻め駒の飛車を攻めるというわけだ。

この数手後飛車銀交換が行われた。
その時、先手陣は銀冠ながら、まだ入城していないだった。飛車銀交換から△2九飛と先手で飛車を下ろしたところでは、後手も主張が通った。
素人目には飛車銀交換の駒損のうえその飛車を先手で下ろされてはダメとしたものだが、この展開は先手も想定範囲のはずだ。
果たしてどちらが読み勝っていたのか。
解説がないとお手上げだ。
途中の面白くも難解なところはすっとばして下図。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 金 桂 香 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩v角|三
|v歩 ・v歩v金 ・v龍 ・ ・ ・|四
| ・ 銀 ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 ・ ・v金 ・ ・|六
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:飛 銀二 桂 歩七 
【手数=104 △4四龍 まで】

ここから▲6二飛△5二桂▲5六桂△4八龍▲4四銀△7八龍と進んだ。
△4八龍は本譜の△7八龍以下の詰めろだ。しかし羽生は▲4四銀とした。以下△7八龍と詰まされて終局となった。
さて、△4八龍は詰めろだったわけだが、羽生も分かっていたはずであり、ということはここではすでに後手の勝ち筋に入っているということなのだろうか。

深浦強し。現在好調の先手羽生をブレイクした。

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2008-07-26

第49期王位戦第2局

旬の戦法を積極的に採用するのが羽生四冠の特徴だが、本局は2手目△3二飛戦法を披露した。
後手の早石田は無理筋と言われていたことに一石を投じた手だ。この戦法で今泉三段が升田幸三賞を受賞したことは記憶に新しい。

将棋世界誌4月号に、プロの公式戦ではじめて採用した長岡四段による講座が記載されており、▲6五角が成立するかどうかが焦点の一つとされているが、奇しくも同講座の通り進行した。
図は互いに馬を作り合い、▲5八金右に△7四馬としたところ。序盤早々に9筋の歩を突き合ったことを活かして端に綾をつけいる。▲9二歩〜▲9一飛の筋が見えており先手が一本取ったに見えるが...。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v飛v銀 ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 馬 ・v歩v歩|三
| ・ ・v馬 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩 
【手数=18 △7四馬 まで】

ここから▲9二歩△同香▲3二馬△同金▲9一飛△8四歩▲8一飛成△7二銀▲7五歩△8一銀▲7四歩△同歩▲6六角△3三角▲8四角と進んだ。
▲9一飛に△8四歩が用意の一着で先手は桂馬は取れるものの本譜の順で龍を消される。同講座でも△8一銀▲7四歩と龍と馬を取り合って、後手桂損ながら飛車を手持ちにしていることが大きく後手有利としている。
実際、講座の内容は納得するもので、ここでは後手有利だと思う。しかし深浦王位も当然知っているはずで、▲6六角〜▲8四角と一歩を取ったのが事前に検討した対策だと思われる。

難解な中盤戦は飛ばして終盤。図は▲5四銀と打ったところ。先手は4筋に飛車を回っており、その上に香を配置している。4筋から殺到できれば後手陣は一気に崩壊だ。しかし、1四角もよく利いており、4七の香がいなくなると先手陣もたちまち寄ってしまう。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉v歩v金 ・ ・|二
| ・ ・v金v歩 ・ ・v銀 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ 銀 歩v歩v歩v角|四
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 香 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 歩二 
【手数=73 ▲5四銀 まで】

ここから△4四銀▲2五歩△2七角▲6五銀△2五角▲3六金△5三銀▲2五金△同歩▲2八歩と進んだ。
△4四銀は気持ちの良い手と目されており、現場でもこの手が指されて後手優勢の空気が支配的になったようだ。
しかし後続の手を見るとそうでもなさそう。▲2八歩とされた局面ではもう形勢不明だ。

この瞬間に後手は技を掛けに行った。図は6七に打った飛車を▲7八金とはじき、△6九飛成とした局面。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:金 銀 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉v歩v金 ・ ・|二
| ・ ・v金v歩v銀 ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ 銀v歩 ・ ・v歩 ・|五
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 香 歩 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v龍 ・ ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角二 桂 歩 
【手数=94 △6九飛成 まで】

ここから▲7一角△6二銀打▲5四銀と進んだ。
▲5四銀が強手で後手玉は寄ってしまった。先手玉に寄せはない。

2手目△3二飛戦法に正面から立ち向かった深浦が本局を制した。しかし、3二飛対策としては今ひとつだった。

一見手を狭めるだけでメリットがないと思われる2手目の△3二飛だが、後手番でも早石田を目指せるという、新しい観点から見れば全く新しい発想だ。将棋はまだまだこんな序盤にも未知の可能性が隠されているということを再認識させたという点でも評価される手であろう。
しかし先手が相振り飛車を選択すれば、3筋に飛車を振ってしまっているので自ら手を限定しいるので少し損ではある。

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2008-07-17

第49期王位戦第1局

19世名人の資格を得た羽生三冠のリベンジなるか。夏の風物詩、王位戦が始まった。
羽生は王位戦に16期連続出場中だ。最近は七冠再びという雰囲気さえ出てきた。
羽生から本タイトルを奪取し念願の初タイトルを得た深浦王位は、順位戦もA級に昇級した。名実共にトップ棋士となった。
両雄の対戦成績は深浦の18勝、羽生の20勝。拮抗している。

第1局は一手損角換りの腰掛け銀となった。
図は先手が4筋から動いて一段落後、後手が端を突き捨て反撃開始。さらに△7五歩。
これに対して▲6六角と打ったところ。一応7五歩と4四銀の両取りにはなっているが、いかにも狭い。▲7五角としても生還できない可能性が高い。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・v歩 ・v歩v銀v銀v歩 ・v歩|四
| 歩 ・v歩 ・ ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 角 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:歩 
【手数=45 ▲6六角 まで】

ここから△4三銀▲3五歩△6五歩▲7五角△6三金▲9四歩△7四歩▲8六角△8五歩▲9三歩成△6二飛▲9五角△9三香▲7三角成△同金▲9三香成と進んだ。
長手数進めたが、見所は先手の放った角の行方だ。案の定△9三香で詰んだが、▲7三角成〜▲9三香成で角と桂香の二枚換えとなった。
▲9三香成の局面をどう見るか。一応二枚換えだが、手順に6筋に飛車を展開しており、後手を持っても指せそうな局面だろう。

下図。▲4四香に△9六角としたところ。△5五桂は数手前に打った桂馬だ。4七の金は両雄とも見向きもしない。
▲4四香は露骨で厳しい手だが、△9六角もいかにも急所という感じの筋の良さそうな手だ。果たしてどちらが読み勝っているのか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v金 ・ ・|二
| 杏 ・v金 ・v歩v銀 ・ ・ ・|三
| ・ ・v歩 ・ ・ 香v歩v歩v歩|四
| ・ ・ ・v歩v桂 銀 歩 ・ ・|五
|v角 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 銀 歩 歩 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:銀 桂 歩三 
【手数=70 △9六角 まで】

ここから▲4三香成△同金▲5一銀△6六歩▲同歩△2五香▲2六歩△同香▲同飛△7八角成▲同玉△6七角▲8八玉△8七歩▲9八玉△7八角成▲2八飛と進んだ。
▲5一銀と飛車取りに銀を掛けられ、後手は忙しくなってきた。△2五香は2八にいる攻防の飛車を動かす犠打。飛車が自陣に利かなくなった瞬間に先手玉を寄せるべく△7八角成と角を切った。
しかし冷静に▲2八飛と引かれて後手の攻めが切れている。

しっかり受け切って、羽生の勝ち。
二枚換えの辺りでは後手が良さそうな気がしたが、後手の猛攻を見切った羽生の受けが光った一局だった。

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