竜王戦

2009-11-29

第22期竜王戦第4局

ここまで3連敗と冴えない森内九段だが、渡辺竜王が強すぎるというのがここまでの印象だ。
しかし、森内の竜王位奪回を思う気持ちは強いに違いない。永世名人としてもこのまま終わらせるわけには行かないと考えているはずだ。
森内背水の陣の第4局は、後手森内が一手損角換りに誘導した。若干意外。

図はまだ前例を踏襲した局面である。この局面、第49期王位戦第1局(羽生○vs●深浦)で羽生は▲6六角と打った。結果こそ先手の勝ちとなったが、その後出現していないようなので、決め手になるような有効手ではなさそうだ。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・v歩 ・v歩v銀v銀v歩 ・v歩|四
| 歩 ・v歩 ・ ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 歩 
【手数=44 △7五歩 まで】

ここから▲同歩△8五桂▲8六銀△2二角▲9六香△5五銀左▲7四歩と進んだ。
▲同歩も自然な手で△8五桂に▲8六銀であくまで自然だ。
△2二角が森内の研究手だろうか。本局の行方を賭した手と言っても良い。しかし▲9六香の先逃げ好手だった。△2二角は空振りに終わってしまった。森内らしくない将棋になってしまったのは残念。
▲9六香は振り飛車感覚の手で、個人的に大好きな手である。渡辺竜王は無論居飛車党だが、振り飛車感覚というよりは、現代的な当然の一手としてこの手を着手したのだと思う。

それにしても渡辺の竜王戦における強さは尋常ではない。先期から合わせて7連勝、6連覇は超一流の証である。
他棋戦や順位戦も永世竜王に相応しい活躍を期待したい。
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2009-11-12

第22期竜王戦第3局

どんどん進んだ。角換り腰掛銀の本局は封じ手の局面は下図。82手目△2七桂としたところだ。既に終盤と言える局面だが前例はあるとのこと。
ここまでの形勢はどちらかというと先手森内九段乗りの声が大きかった。故に後手渡辺竜王がどこかで手を変えると思われていた。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ 銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・v銀 ・v角v歩|五
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ 銀 ・ 歩 ・v馬v桂 ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・v歩 ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:金 桂 歩二 
【手数=82 △2七桂 まで】

封じ手は▲6八金右。
以下△3九歩成▲2四歩△同歩▲3三銀不成と進んだ。
▲6八金右で前例と離れたので、手を変えたのは森内。こちらが新手ということになる。飛車を取られたが▲3三銀不成と4四の銀をすり込んだ手がまた厳しく、一方先手玉を寄せる手が見えない状況なので依然先手乗りの声が大きい。▲2四歩の突き捨ては手筋。
ちなみに4四の銀は3三に打ち込んだ銀で2回の成らずで元の位置に戻って来た。

ほんの少し進んで下図。▲3三角と縛ったところ。誰も予想していなかった手とのことだが、次に▲2三歩とされたら終了である。厳しい。
一度飛車で王手できるものの先手玉は固く、一見早い寄せはなさそう。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:飛 銀 桂 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ 角 ・ ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ 全 ・v歩 ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・v銀 ・v角v歩|五
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ 銀 ・ 歩 ・ ・v桂 ・|七
| ・ ・ 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・vと 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:金 歩 
【手数=93 ▲3三角 まで】

ここから△3九飛▲8八玉△7九銀と進んだ。
△7九銀が鋭い一手。この一手で形勢判断が180度変わった。あれほど安心感があった先手玉だが、なんと寄っているのである。

終盤で誰も気がつかない唯一無二の正解手に手が伸びるのが渡辺将棋の魅力の一つ。
竜王戦の渡辺は強い。
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2009-10-31

第22期竜王戦第2局

駆け引きの多い序盤戦だった。6手目後手森内九段が△4四歩としたところで、角換り系や相掛り系の将棋はなくなった。図は▲4八銀としたところ。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:なし
【手数=9 ▲4八銀 まで】

ここから△5二金▲5六歩△2二銀▲7七角△8四歩▲8八銀△8五歩▲6九玉△4三金右▲6八角△4二角▲7七銀と進んだ。
△5二金で振り飛車の線もなくなった。互いに引き角にする▲6八角△4二角に▲7七銀が意外な一手。△4二角には万人が▲2四歩と権利である飛車先の歩交換を履行する一手だろう。しかし渡辺竜王の選択は▲2四歩を見送り▲7七銀。
渡辺将棋を象徴している手に映った。老獪ではあるが、圧倒的覇者になるにはもの足りない。
という訳で、紆余曲折あったが、第2局は結局矢倉戦に落ち着いた。

互いに角が睨み合う脇システムから先手が3五の地点で歩交換をした瞬間に、△6二銀としたところ。
この△6二銀は味の良い手として認識されているようだ。角を7三に引く余地と同時に銀を中央に転換する余地を同時に作っている。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v角v歩v歩 ・ ・ ・|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ ・ 角 歩 歩|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀v歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:歩 
【手数=48 △6二銀 まで】

ここから▲5五歩△同歩▲5八飛△7三角▲7五歩△8四飛▲1四歩△同歩▲1三歩と進んだ。
△4五歩とされると終了なので▲5五歩△同歩▲5八飛は当然の展開だ。
△7三角が前例のない手(新手)となった。過去の将棋は△3七歩成で▲同桂は△3六歩。▲同銀には△5三銀とするのが味が良い。
△7三角に対して先手は▲7五歩と7筋に味を付けて▲1四歩と先攻した。

先手が端から強襲した結果、角香交換で先手の駒損だが1筋を破って龍ができるという戦況となった。均衡は取れているものの、後手が余せそうな感じがするというのが第一感。ましてや後手は鉄板流の森内だ。
図は▲7四香としたところ。▲7二香成となれば挟撃の形となる。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:角 歩七 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ 龍|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・ ・ ・|三
| ・v飛 香 ・ ・v歩 ・v銀 ・|四
|v歩v歩 歩 ・ ・ ・ ・v桂 ・|五
| ・ ・ ・ 歩v歩 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩vと ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:なし
【手数=85 ▲7四香 まで】

ここから△4六角▲同歩△2一銀▲1一龍△3三角▲1八龍△7三歩▲5六金△7四歩▲2六歩△3六と▲2五歩△同銀▲6一角と進んだ。
△4六角は決断の一手。ばさりとやや遊んでいる銀と角を刺し違えた。△2一銀△3三角はクリンチとも見える。事実▲1八龍と引かれた局面を森内はあまり良いとは思っていなかったようだ。しかし先手の駒不足も深刻で、個人的には仕掛けの段階からずっと後手を持ちたい。
△7三歩で実現すると少し嫌な▲7二成香を防ぐ。しかし▲5六金に△7四歩としたのは疑問手。ここは敵の打ちたいところへ打ての△2六歩だった。
本譜は逆に▲2六歩とされて後手が困った。2五の桂を取られると3七のと金も払われてしまう。よって△3六とだが▲2五歩がまた銀取り。
後手はここ数手先手の思うままに指された感じで、形勢を損ねた。

これで渡辺2連勝の出だしとなった。渡辺は好調を維持しているようだ。
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2009-10-19

第22期竜王戦第1局

思い起こせば、渡辺竜王の初代永世竜王までの道程は第17期竜王戦で森内九段から竜王を奪取した時から始まった。奇しくも森内の竜王位は第16期で羽生四冠の初代永世竜王位を阻んでいる
巡り巡って、森内が深浦王位との挑決戦を制して竜王戦に再登場だ。

第1局は角換り腰掛銀に。先手森内が▲6六銀と中央に二枚の銀を繰り出す趣向に出て定跡形ではなくなった。
図は△4二玉を見て▲4五歩と少し前に交換した4筋の歩を合わせたところ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v銀 ・v金v銀v歩 ・|三
| ・ ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 銀 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:角 
【手数=45 ▲4五歩 まで】

ここから△3二玉▲4四歩△同銀▲7九玉△5二銀▲3六歩と進んだ。
△5二銀は柔らかい手だ。渡辺はこういう手も指せる。▲3六歩は封じ手。

少し進んで下図。▲7七角と角を打ったところ。
6六の銀は5五の地点で5四の銀とぶつかったが後手は交換に応じず、その後7七まで撤退している。
7六にいるのは後手が△8五飛と高飛車にした手に対する折衝のため。7筋の歩は後手に取らせている。
▲7七角は開いた7七の地点に角を配置しており、今までの手の継承と言える。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v銀 ・v玉 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・ ・v金v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 銀 ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 角 歩 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:歩 
【手数=63 ▲7七角 まで】

ここから△7四歩▲4四歩△4二金▲4五銀△5三銀▲1五歩△同歩▲3四銀△同銀▲3五歩△4七歩▲1八飛△5五銀と進んだ。
△7四歩が反撃重視の強気な手だ。本譜のように▲4四歩の楔を打たれるが大丈夫と見ている。
7六銀7七角の形が悪いので先手はこの瞬間に後手陣を攻め潰したい。1筋を突き捨て▲3四銀と銀捨ての強襲を決行した。対する△5五銀が局面を収める好手の様だ。

後手陣は金駒を剥がされるものの上部に広く捕まり憎い形となった。
対する先手陣は7六の地点が急所だ。
以降難しいものの後手に分のある形勢を渡辺が勝ちきったという印象だ。こういう指運が必要な将棋も渡辺は滅法強いということを再認識した。
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2009-09-07

森内四間圧勝〜第22期竜王戦挑決戦第2局

- 対局者:深浦康市王位●vs○森内俊之九段
- 棋戦名:第22期竜王戦挑戦者決定戦第2局(Web中継)
- 対局日:2009/09/01

竜王戦決勝トーナメントを勝ち進んだのは1組優勝深浦王位と2組優勝の森内九段。
深浦は久保八段を、森内は高橋九段、羽生三冠(羽生の永世竜王はおあずけ)を破っての決勝進出だ。
既に第1局は8/17に行われており深浦の先勝で迎えた第2局は後手森内が四間飛車を採用した。

四間飛車!である。しかもノーマルな。藤井システム受難のこの時代、振り飛車党は皆ゴキ中に鞍替えしてしまって、とんと見かけることがなくなって久しい。
この一局を取り上げない訳には行かないではないか。

図はがっちり銀冠に組んだのに対し、▲6八銀と5七の銀を更に穴熊にくっつける動きをしたところ。
ノーマル四間飛車の中でも主流は△4四銀型だが、本局は△5四銀型だ。△5四銀型はどちらかと言うと消極的で手詰まりも懸念される。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v金v歩 ・v角v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 角 ・ ・|七
| 香 銀 ・ 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=45 ▲6八銀 まで】

ここで後手は△8五歩と指した。
8五は桂馬の跳ねる場所なので保留するのが現代将棋というものだが、大山十五世名人は平然と△8五歩としていたものだ。大山流の△8五歩はより懐の深い指し方という捉え方が正しいのだろう。
とは言うものの、現実を顧みると△5四銀といい△8五歩といいちょっと嫌な予感がした。千日手。まさか、森内の狙いは後手番の専売特許である千日手なの?だとすると幻滅なのだが...。

局面は互いに陣形を組み直している。先手は5七の銀を一旦7七に持って行った後、結局松尾流の7九に移動している。
後手の5四の銀は一旦4三に引き4四〜5三に移動している。下図。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
|v香v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v金v銀 ・v角v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 銀 金 角 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=59 ▲6八角 まで】

ここから△1五歩▲同歩△6五歩▲同歩△1五香▲同香△6六歩▲5七金△6五桂▲5九角△6四銀▲3七角△4六歩と進んだ。
千日手は全くの杞憂だった。6筋が手薄になったこの瞬間、一歩確保を目的に1筋から果敢に動いたのは後手だった。
先に香損するものの要所を押さえて後手もやれると見ている。

少し進んで下図。駒割りは先手の桂香と金の交換。後手は金を自陣に投入しており、むしろ穴熊より固い。先手も4四に桂を打って後手の大駒を封鎖している。
頃合い良しと見て△9五歩と端攻めを決行したところ。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂 ・|一
|v香v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v金v金 ・ ・v角v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 桂v歩 ・ ・|四
|v歩v歩v銀 歩 ・ 歩 ・ 歩 香|五
| 歩 ・v歩v歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 飛 ・ 角 ・ ・|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 銀 香 ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=84 △9五歩 まで】

ここから▲7七歩△9六歩▲7六歩△8四銀引▲6六香△7四金左▲6七飛△6三歩▲3二桂成△4五飛▲3三成桂△同桂▲4六歩と進んだ。
△9五歩にまさかの手抜き。端歩を突き合った穴熊では端攻めの手抜きが有効な時もあるが、ここは取る一手だろう。
6筋に放った香で攻めるものの△7四金左〜△6三歩の先受けで無効だ。▲3二桂成には角を見捨てて△4五飛。この飛車に対する▲4六歩が自らの角道を止める評判の悪い手だった。

以降も鉄壁の自陣と端攻めの重圧のみて後手の圧勝となった。
かねてから、森内の棋風には大山流四間飛車が合っていると思っていた。是非とも、四間飛車をレーパートリの一つに加えて頂きたいものだ。

2008-12-21

第21期竜王戦第7局

初代永世竜王を賭けた第7局は世紀の一戦といっても良い。渡辺竜王が5連覇で獲得するか羽生四冠が通算7期で獲得するか。羽生の場合は他のタイトルを合わせて史上初の永世七冠となる。

第3戦までは羽生が怒濤の3連勝。大局観の違いを見せつけたという印象がある。このままあっさり奪取すると思いきや第4戦からは渡辺が3連勝。第6局の後、15日に行なわれた第2回朝日杯でも両雄は対局しており、これも渡辺の完勝で、渡辺は実に対羽生戦竜王戦の3連敗後の4連勝ということになる。

さて世紀の一戦の目撃者になるべく2日目は速攻定退し帰宅した。18時過ぎに観たBS中継は77手目の局面だった。羽生優勢と判断したが、BS中継が終了する19時には渡辺優勢に思えた。形勢が二転三転する熱戦になった。

本局は振駒で羽生先手となったが、後手渡辺の作戦は第6局同様の急戦矢倉だった。手を変えたのは羽生で△5五角と5筋の歩を角で交換した時に▲7九角ではなく▲2五歩とした。これに対し△3三銀と飛車先の歩交換を拒否したが、突っ張った指し方だ。急戦矢倉なので△5四銀くらいが相場だが、渡辺も趣向で応えた。
そして戦いは思わぬところから始まった。図は▲7五歩△同歩としたところ。こうなると次の手は明白だが、普通はあり得ない場所から戦火が開かれた。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v玉v桂v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v銀v歩v歩|三
| ・v角 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 銀 ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=36 △7五同歩 まで】

ここから▲8六歩△同歩▲8二歩△7三桂▲8一歩成△5二飛▲9一とと進んだ。
▲8六歩が継続手で、こう指せば桂か香は取れる形ではある。しかし2歩損していることと、戦っている場所が悪すぎる。ということで先手の選択肢としては「ある手」ではあるが、「指し難い手」でもある。
形勢は互角だろう。個人的には陣形は乱れるものの、得した香を5九に打つ手(少し後に実現)の味が良いので先手を持ちたい。

少し進んで下図。5五の銀を▲6四銀としたところ。5九の香が素通りになった。味の良い手だ。しかし先手陣も△8七歩成を見せられて忙しい。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| と ・ ・ ・v飛 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v金 ・v歩v銀 ・v歩|三
| ・v角 ・ 銀 ・ ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩v銀 ・ ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 香 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二 
【手数=57 ▲6四銀 まで】

ここから△6二飛▲5二香成△同飛▲6三銀不成△5一飛▲2三歩△4二金と進んだ。
渡辺ブログによると、

2日目に入って、ほぼ読み筋通りに進みましたが55手目▲6三歩成〜59手目▲5二香成と踏み込まれるのを軽視していました。ここで悪くなったと感じました。
とのことだ。
飛車を追って、▲2三歩は手筋で退路の封鎖だが、△4二金とされると継続手が難しい。▲2三歩では▲5二金も有力視されていたが、あっさり△2二玉▲5一金△8七歩成とあっさり飛車を見捨てる手がある(※)。
▲2三歩に関しては、渡辺ブログでは、
羽生名人が63手目▲2三歩を長考している時間は▲2三歩と▲5二金のどちらでも悪そうなので、さすがにまずいのではないか、と思っていました。
と振り返っている。

少し進んで、冒頭の77手目の局面。ここから数手はBS中継でリアルタイムで観戦している。
6二と6三の金銀が無骨だが、飛車さえ奪ってしまえば良いという一環の流れが感じられる。一目後手優勢と思うがどうなのだろう。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| と ・ ・ 金 ・v金 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・ 銀v飛v歩v銀 歩v歩|三
| ・v角 ・ ・ 香 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 金 ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 
【手数=77 ▲5四香 まで】

ここから△6二角▲5三香成△同角▲6一飛△4一香▲5四銀成△3五角と進んだ。
△6二角▲5三香成△同角までは必然だが、ここでどう指すか。先手は飛車を奪って当初の目標をクリアしたが、後手は今まで働いていなかった角が好位置に移動した。
本譜の▲6一飛は△4一香とされて飛車による攻めにも関わらず後手玉は若干安定し、直ぐに行く手段がなくなった。
ここは、▲2二銀として△同銀▲同歩成△同玉▲2三銀(取ったら詰み)△3一玉としてからこのタイミングで▲4八飛と落ちている金を取るのが良かった(※)。
そこで▲5四銀成として6五の桂を龍で抜いて自陣の安全度を高める方向にシフトチェンジした。これに乗じた形で△3五角としていよいよお荷物の角を捌いた。

角が手駒になると桂を外す▲6五飛成は△8七角から王手飛車のラインである。本譜もそのように進んで、もうどちらが勝っているか分からなくなってきた。
下図はその△8七角に対し▲6七玉としたところ。先手変調というのは間違いなさそう。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:金 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v香v玉v桂v香|一
| と ・ ・ ・ ・v金 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v銀 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 全 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 龍 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩v角 ・ 玉 ・ ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 桂 
【手数=89 ▲6七玉 まで】

ここから△6五角成▲同金△6九飛▲5六玉△6四歩▲6六角と進んだ。
飛車を取られるとやはり△6九飛が厳しい。後手優勢か?
△6四歩は渡辺らしい筋の良い手だが、▲6六角の返し技があった。これでまた分からなくなった。
渡辺ブログでは、この辺りをこう振り返っている。

88手目△8七角と王手竜取りがかかっては逆転かと思いましたが95手目▲6六角があまりにもピッタリの手でまた逆転。ここから1分将棋で、祈るような気持ちで指していました。

ただ、BS中継観戦中▲6六角はリアルタイムで予想できたので、この局面なら第一感級の手だと思う。

この辺りでBS中継は時間切れになってしまった。両者時間も切迫しており、勝負はもはや指運次第といった模様を呈してきた。
少し進んで下図。後手は△7三金と待ち駒をして手を預けたのに対し、▲2二角△3二玉▲1一角成としたところ。
△7三金は下駄を預けた手だ。これに対し、▲1一角成はまたしても手番を後手に渡すが、こちらは勝ちに行った手と言える。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:金 銀 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v香 ・v桂 馬|一
| と ・ ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v金 ・ ・v歩v銀 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 全 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 玉 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ 桂 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・v龍 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 香 歩二 
【手数=105 ▲1一角成 まで】

ここから△5五歩▲2四飛△6四歩▲5五玉△4四銀打▲同成銀△同銀▲同馬△6五金▲5四玉△6三銀▲4五玉△4四歩▲同角△3三桂と進んだ。
将棋は最後に間違えた方が負けるゲームである。それが▲2四飛だ。指された時は既に先手優勢の雰囲気だった検討陣からも「決め手」という声さえあった。
しかし、本譜の様に玉を追われると1一の馬は消えさらに6六の角も消されそうだ。△3三桂に▲同角成は△同桂が逆王手になるため取れない。
今度こそ形勢がはっきりした。

140手におよぶ熱戦の末、初代永世竜王は渡辺竜王の手に。歴史の一頁が刻まれた瞬間をネットを介してだが立ち会えた。

渡辺は3連敗後は開き直って戦っていた節がある。これがプラスに作用したのは間違いなさそうだ。
永世竜王まで5連覇の相手には森内九段、佐藤棋王も含まれており、羽生世代を一網打尽にした格好になっている。棋界初の大逆転劇(●●●○○○○)のおまけ付きだ。
しかしながら永世竜王がB1級ではなんともバランスが悪い。早くA級に上がって、さらには他のタイトル獲得も果たして欲しいものだ。時間の問題とは思うがなるべく早く。

一方の羽生、3連勝した時は誰がこのような結末を予想しただろう。第17世永世名人も森内九段に先を越されたが、またしても永世タイトルを先に持ってかれてしまった。
第4局といい本局といい、羽生ならば勝ちきるだろうと思われた将棋を落としているのが気になるところだ。来年早々には王将戦で王位戦で争った深浦王位との防衛戦が待っている。

文中の(※)は12/20のBS囲碁将棋ジャーナルに出演していた羽生四冠自身!の解説より。

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2008-12-12

第21期竜王戦第6局

羽生四冠が足踏みしている。永世竜王を含む永世七冠に対するプレッシャーなのか。
3連敗で土俵際に追い込まれた渡辺竜王だが、2局を返して本局を迎えた。がっぷり四つの相矢倉になるかと思ったが、渡辺としては珍しい後手急戦矢倉を採用した。

図は▲4六角に△6四銀として角交換を防いだところ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩 ・v角v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 角 ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=28 △6四銀 まで】

ここから▲7五歩△8四飛▲7四歩△同飛▲5六歩△3一玉▲2五歩と進んだ。
▲7五歩は▲4六角と覗いた時からの継続手。同歩と応じることのできない後手は△8四飛。
後手陣が飛角銀が凝り形としたところで▲5六歩。ここまでは前例があるようだ。ここで前例は△5五歩と合わせたが、渡辺はじっと△3一玉とした。▲6五歩が心配だが大丈夫と見ている。
△3一玉に関して渡辺は自身のブログで、

34手目△3一玉は新手で、誰にも言わずに温めていました。最近、後手で普通に組み合う矢倉で連敗していたので、思い切ってやってみました
と述べている。
▲6五歩に対しては△同銀▲7三角成△同桂▲6六歩が予想され、銀が逃げれば▲8三角の痛打がある。▲6六歩に銀を逃げずに△8六歩が好手難しいとのことだ。
羽生も▲6五歩の決戦策を見送って▲2五歩とした。

数手進んで下図。封じ手の▲3六歩に対して、△2七歩と叩いたところ。▲3六歩の前に指された△6二角が凝り形をほぐしつつ先手の飛車先の歩交換の逆用を見た味の良い手になっている。
▲3六歩は格調高い手で本譜の△2七歩はやってこいということだ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v角 ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v飛v銀 ・ ・v歩 角 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・v歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二 
【手数=42 △2七歩 まで】

ここから▲同飛△2六歩▲2八飛△7七飛成▲同金寄△2七銀▲2二歩△同玉▲2三歩△同玉▲2五飛△3三桂と進んだ。
△7七飛成〜△2七銀は後手の狙い筋で、両者承知の強気の応酬だ。
先手は△2七銀の瞬間に手を作らなければいけない。その手段が▲2二歩からの一連の手順だが、全て強く玉で取られて指し手に窮している。▲2五飛にも△3三桂で受け切りだ。
本譜の手順で飛車を取らせる順は後手玉が低い陣形なだけに無理筋だったようだ。図の△2七歩には悪いながらも▲3八飛とするのが、局面毎の最善手を求める羽生らしい選択だったように思う。

羽生らしくない将棋で完敗し、遂に3勝3敗となった。羽生3連勝で始まった当初を思うと全く予想外の展開だ。
3連敗後の4連勝は将棋界では前例がない。お互いにプレッシャーが最大値に達するであろう永世竜王対決は、もうどうちらが勝つが予測不能だ。

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2008-12-07

第21期竜王戦第5局

矢倉は激しい将棋である。第5局は矢倉戦に。先手渡辺竜王が細い攻めを繋いで勝ち切るか、後手羽生四冠が受け切るかという将棋となった。

図は▲1二歩と叩いたところ。
まずは後手玉の位置について記す必要があるだろう。後手玉は2一にいるが、これは仕掛けの前に2二から移動したものだ。角道から玉を反らしつつ4二の銀を3一〜2二へとし、更に玉を固める手を見せる受け重視の手だ。少し前に宮田五段の指した手とのことだ。
さて局面だが、4五の銀は行き場がなく先手は銀損が確定している。この瞬間攻めを繋げきれるかか勝負だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v玉v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ 歩|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・v歩v銀|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 銀 歩 ・ 銀 ・ 歩v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:桂 歩 
【手数=63 ▲1二歩 まで】

ここから△同玉▲3四銀△同金▲1四歩△同銀▲2六桂△2五金▲1四桂△2六桂▲6四歩と進んだ。
△同玉は少し意外だった。△2一玉との関連性に乏しく手の流れからは△同香の方が自然に感じたからだ過去を断ち切ってこの瞬間の最善手ということなら△同玉だということか。
銀損が確定した先手だが、さらに過激な手段に出た。△2六桂の飛香両取りに対し、▲6四歩! なんと飛車取りを放置した。攻めを続けられるか否かというのが最大のポイントとするならば、当然の一手なのかもしれない。

図は終盤戦。▲3四香としたところ。銀ではなく香なのは▲3四銀では△9二飛が攻防になるとのことだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 角 銀 桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ と ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v玉 ・ 銀|二
| ・ ・ ・ 全 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩 香 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v金v歩|五
|v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩v馬 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・v圭 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:金 銀 歩二 
【手数=101 ▲3四香 まで】

ここから△3三歩▲5三金△9七銀▲同桂△同歩成▲7九玉△4九飛▲6九歩△2四角▲3五歩と進んだ。
△3三歩▲5三金で後手玉は風前の灯火に見える。しかし△9七銀から王手で追って、▲7九玉の形になったので、後手は大駒を使った攻防の手がありそうだ。
△4九飛も△2四角も攻防手だが、△2四角に対する▲3五歩が好手で先手の勝ちが明らかとなった。

渡辺は2局連続で好局を勝ち切った。第6局は渡辺にとって課題の後手番だ。鬼門は続く。
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2008-11-29

第21期竜王戦第4局

追いつめられた渡辺竜王。ここまでの内容が大差なだけに、心境としてはむしろ開き直った状態だったかもしれない。
大方の予想に反して第4局は相掛りとなった。

先手羽生は早繰り銀で繰り出した銀を5六の腰掛銀の一まで戻し、更に6七に引きつけ銀矢倉に進展。後手渡辺玉は中住まいで、バランス重視の陣形だ。
先後の関係もあるが、現代将棋の申し子のように言われている渡辺が中住まいで、玉形に進展性があるのが先手の羽生陣なのが面白い。

後手陣は飽和状態なので遂に△9五歩と仕掛けたのが図。堅そうに見える先手陣だが、9筋の歩を突き合っているので端攻めは効果大だ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金 ・v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩v桂v歩 ・|三
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v歩 ・v歩|四
|v歩 ・ 歩 ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 歩 
【手数=52 △9五歩 まで】

ここから▲7四角△8八歩▲同玉△8三金▲9五歩△7四金▲同歩△同飛▲7五歩△8四飛▲6七金右△7四歩と進んだ。
▲7四角は捻った受け方だ。生角なので本譜のように取られてしまうのは覚悟の上だろう。駒損になっても先手陣は堅く7筋に築いた厚みが直接後手陣を圧迫するという判断。
▲6七金右を見て61手目の▲7五歩に対して今度は△同銀と応じたのは4筋に飛車を転回する順が4七に飛車を成る順を見せているからだ。

本譜もそのように進んで後手は龍を作ったが、先手は7三に桂馬を取りながらと金を作った。
図は▲7九歩としたところ。現代的な先受けの歩だ。この手で先手陣は飛躍的に守備力が向上したかに見えた。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角二 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ とv歩v歩 ・v桂v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・v歩|四
| 歩 ・ 銀 ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 歩 ・ ・v龍 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金 桂 歩 
【手数=85 ▲7九歩 まで】

ここから△4三玉▲3五飛△4五銀▲5六金△7七歩▲同桂△3四歩▲4五飛△同桂▲5五金△2八飛▲3六桂△7八飛成▲9七玉と進んだ。
△4三玉に▲3五飛で5五の銀取り。△4五銀の受けに▲5六金が堅陣を活かした手で羽生好調だ。永世七冠誕生近しを感じさせる局面になった。
しかしこの瞬間△7七歩が好手。△7七歩▲同桂を利かして△3四歩、▲4五飛△同桂▲5五金で金銀と飛車の二枚換えになっていよいよ先手好調かと思ったが、△2八飛が思いのほか早い手だ。△7七歩が利いている。
▲3六桂と攻めを継続するが、△7八飛成を▲同玉とは取れない。

少し前の局面まで先手優勢を通り越して勝勢と思っていたが、こうなってみるともうどちらが勝っているか分からなくなってきた。
羽生は手順を尽くして7八の龍を取り切ったが、後手玉を寄せ切ることが難しくなってきた。持将棋は点数の関係で先手負けの公算が高い。

図は△8九飛と飛車を下ろしたところ。度胸を決めた一手で、後手玉は打ち歩詰めで逃れている。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角二 桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ とv歩v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| 歩 ・ 銀 金 ・ 飛 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 桂 ・ 歩|六
| 玉 歩 桂 ・ ・ ・v玉 ・ ・|七
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|八
| 香v飛 ・ ・ ・ 銀 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金二 桂 歩 
【手数=126 △8九飛 まで】

ここから▲3八金△3六玉▲4六金△2六玉▲9八香△4九飛成と進んだ。
▲3八金はこう押さえていところだが、4五の利きが強すぎて打ち歩詰めになってしまう。△9九飛成とされるとダメなので▲9八香としたが△4九飛成と4九の銀を取られてしまった。
こうなっては後手勝ちが確定した。

最後は秒読みの中、指運の勝負という感じだったようだが、渡辺の肝のすわった手が目立った。渡辺将棋の代表局になることが約束されたと言っても良い内容の濃い将棋だった。穴熊だけでなく、本譜のようにバランス重視の将棋も強いということを証明した一局でもある。
現代将棋っぽく堅い、攻めている、更に指し手が羽生であるということから、観戦していて容易に先手良しという形勢判断をしていたが実は難しい形勢だったということだと思う。特に印象に残っているのは鉄壁だと思った▲7九歩が二枚飛車に対してあまり役に立っていなかったことだ。

今年最後のタイトル戦が12月を待たずに終わってしまうことは回避できた。野次馬としてみれば接戦になればなるほど盛り上がるとしたものだ。

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2008-11-16

第21期竜王戦第3局

第3局は一手損角換りに。第49期王位戦第7局(羽生●vs○深浦)と同一局面。羽生四冠はこの重要な将棋を先手番で落としているが、今回は後手番だ。
図は渡辺竜王が▲7九玉と新手を指したところ。
王位戦の羽生はここで▲7七銀と指している。▲7七銀以下△3六歩の猛攻を受けたが、▲7九玉はこの筋に対して戦場から離れているというメリットがある。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=35 ▲7九玉 まで】

ここから△3六歩▲5六歩△3七歩成▲5五歩△2八と▲5四歩△3八と▲同金△4九飛▲6八玉と進んだ。
▲7九玉は△3六歩に対してより価値の高い手ということだったが、それでも後手は△3六歩を決行した。以下は騎虎の勢いで角銀と飛車の交換になった。
後手は銀一枚取られた上に、次に▲5三歩成を見せられている。しかし壁銀+7九玉型で最も嫌な駒を入手している。飛車である。

控え室でも、この攻め合いは銀一枚取られるので有力視されていなかったようだ。しかし、この筋が成立していることを見抜いた人物がいる。羽生は純粋に局面を読むことで、一流棋士さえも選択肢から外してしまう枝葉からこの有力筋を発見した。
後手優勢という雰囲気になった。

先手玉は形が悪すぎて、手入れが難しい。故に攻め合いに活路を見出すしかない。
そこで▲5二歩の手裏剣が下図。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:金 銀 桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ 歩 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ 馬v歩 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・vと ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ 歩v龍 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 銀二 歩 
【手数=53 ▲5二歩 まで】

ここから△4一玉▲2一銀△4二銀▲3二銀成△同玉▲2二歩△3一金▲2一金△5三銀打と進んだ。
▲2一銀では▲7五角や▲5三銀もあるが、羽生は全て受け切る自信があるようだ。
以降は無理に攻めさせて切らして勝つという、(想像するに)羽生のイメージ通りに進んだ。

これで羽生の3連勝となった。
3局を振り返ると、仕掛けの時点で羽生が優勢になっている将棋ばかりだ。
一見不利になりそうな局面が実はそうではないという、第一感を覆す見事な大局観が光っている。まさに「名人に定跡なし」だ。

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