将棋

2009-10-31

第22期竜王戦第2局

駆け引きの多い序盤戦だった。6手目後手森内九段が△4四歩としたところで、角換り系や相掛り系の将棋はなくなった。図は▲4八銀としたところ。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:なし
【手数=9 ▲4八銀 まで】

ここから△5二金▲5六歩△2二銀▲7七角△8四歩▲8八銀△8五歩▲6九玉△4三金右▲6八角△4二角▲7七銀と進んだ。
△5二金で振り飛車の線もなくなった。互いに引き角にする▲6八角△4二角に▲7七銀が意外な一手。△4二角には万人が▲2四歩と権利である飛車先の歩交換を履行する一手だろう。しかし渡辺竜王の選択は▲2四歩を見送り▲7七銀。
渡辺将棋を象徴している手に映った。老獪ではあるが、圧倒的覇者になるにはもの足りない。
という訳で、紆余曲折あったが、第2局は結局矢倉戦に落ち着いた。

互いに角が睨み合う脇システムから先手が3五の地点で歩交換をした瞬間に、△6二銀としたところ。
この△6二銀は味の良い手として認識されているようだ。角を7三に引く余地と同時に銀を中央に転換する余地を同時に作っている。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v角v歩v歩 ・ ・ ・|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ ・ 角 歩 歩|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀v歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:歩 
【手数=48 △6二銀 まで】

ここから▲5五歩△同歩▲5八飛△7三角▲7五歩△8四飛▲1四歩△同歩▲1三歩と進んだ。
△4五歩とされると終了なので▲5五歩△同歩▲5八飛は当然の展開だ。
△7三角が前例のない手(新手)となった。過去の将棋は△3七歩成で▲同桂は△3六歩。▲同銀には△5三銀とするのが味が良い。
△7三角に対して先手は▲7五歩と7筋に味を付けて▲1四歩と先攻した。

先手が端から強襲した結果、角香交換で先手の駒損だが1筋を破って龍ができるという戦況となった。均衡は取れているものの、後手が余せそうな感じがするというのが第一感。ましてや後手は鉄板流の森内だ。
図は▲7四香としたところ。▲7二香成となれば挟撃の形となる。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:角 歩七 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ 龍|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・ ・ ・|三
| ・v飛 香 ・ ・v歩 ・v銀 ・|四
|v歩v歩 歩 ・ ・ ・ ・v桂 ・|五
| ・ ・ ・ 歩v歩 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩vと ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:なし
【手数=85 ▲7四香 まで】

ここから△4六角▲同歩△2一銀▲1一龍△3三角▲1八龍△7三歩▲5六金△7四歩▲2六歩△3六と▲2五歩△同銀▲6一角と進んだ。
△4六角は決断の一手。ばさりとやや遊んでいる銀と角を刺し違えた。△2一銀△3三角はクリンチとも見える。事実▲1八龍と引かれた局面を森内はあまり良いとは思っていなかったようだ。しかし先手の駒不足も深刻で、個人的には仕掛けの段階からずっと後手を持ちたい。
△7三歩で実現すると少し嫌な▲7二成香を防ぐ。しかし▲5六金に△7四歩としたのは疑問手。ここは敵の打ちたいところへ打ての△2六歩だった。
本譜は逆に▲2六歩とされて後手が困った。2五の桂を取られると3七のと金も払われてしまう。よって△3六とだが▲2五歩がまた銀取り。
後手はここ数手先手の思うままに指された感じで、形勢を損ねた。

これで渡辺2連勝の出だしとなった。渡辺は好調を維持しているようだ。
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2009-10-19

第22期竜王戦第1局

思い起こせば、渡辺竜王の初代永世竜王までの道程は第17期竜王戦で森内九段から竜王を奪取した時から始まった。奇しくも森内の竜王位は第16期で羽生四冠の初代永世竜王位を阻んでいる
巡り巡って、森内が深浦王位との挑決戦を制して竜王戦に再登場だ。

第1局は角換り腰掛銀に。先手森内が▲6六銀と中央に二枚の銀を繰り出す趣向に出て定跡形ではなくなった。
図は△4二玉を見て▲4五歩と少し前に交換した4筋の歩を合わせたところ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v銀 ・v金v銀v歩 ・|三
| ・ ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 銀 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:角 
【手数=45 ▲4五歩 まで】

ここから△3二玉▲4四歩△同銀▲7九玉△5二銀▲3六歩と進んだ。
△5二銀は柔らかい手だ。渡辺はこういう手も指せる。▲3六歩は封じ手。

少し進んで下図。▲7七角と角を打ったところ。
6六の銀は5五の地点で5四の銀とぶつかったが後手は交換に応じず、その後7七まで撤退している。
7六にいるのは後手が△8五飛と高飛車にした手に対する折衝のため。7筋の歩は後手に取らせている。
▲7七角は開いた7七の地点に角を配置しており、今までの手の継承と言える。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v銀 ・v玉 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・ ・v金v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 銀 ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 角 歩 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:歩 
【手数=63 ▲7七角 まで】

ここから△7四歩▲4四歩△4二金▲4五銀△5三銀▲1五歩△同歩▲3四銀△同銀▲3五歩△4七歩▲1八飛△5五銀と進んだ。
△7四歩が反撃重視の強気な手だ。本譜のように▲4四歩の楔を打たれるが大丈夫と見ている。
7六銀7七角の形が悪いので先手はこの瞬間に後手陣を攻め潰したい。1筋を突き捨て▲3四銀と銀捨ての強襲を決行した。対する△5五銀が局面を収める好手の様だ。

後手陣は金駒を剥がされるものの上部に広く捕まり憎い形となった。
対する先手陣は7六の地点が急所だ。
以降難しいものの後手に分のある形勢を渡辺が勝ちきったという印象だ。こういう指運が必要な将棋も渡辺は滅法強いということを再認識した。
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2009-10-05

第50期王位戦第7局

8五飛戦法復活の兆しがある。
横歩取り8五飛にも多様なバリエーションがあるが、木村は少し古めの指し方を、最終局に投入した。第51期王座戦(羽生王座vs渡辺五段)は8五飛シリーズとして有名だが、第2局第3局と同様の進行となった。
図は△7四歩としたところ。王座戦第3局では△5二玉▲7五歩△7二金▲6八銀△8二銀▲7六飛△8三銀▲4八銀△7四歩と進んでいる。△7四歩は▲7五歩と先に突かれるのを嫌ったか。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v金 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 飛 ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩 
【手数=34 △7四歩 まで】

ここから▲6八銀△5二玉▲2八銀△7三桂▲3六歩△5五角▲5六飛△2八角成▲同金△5五銀と進んだ。
先手は▲2八銀〜▲3六歩と銀の活用を目指すが、△5五角の返し技があった。素朴だが有力のようだ。本譜で先手の飛車が詰んだ。

飛車を手持ちにした後手乗りの声が大きくなってきた。
図は▲2四桂としたところ。これで後手の飛車も詰んだ。一手指す方が優勢に見える熱戦だ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金 ・ ・v玉v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ 銀 ・v歩 ・ ・ ・ 桂v飛|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ 角 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 桂 玉 歩 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ ・vと ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・v飛 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 銀 
【手数=69 ▲2四桂 まで】

ここから△2三金▲8五角△9四金▲同角△同歩▲3二金△5二玉▲6五桂△同歩▲7三銀成△6六歩▲5六玉△9二角▲6六玉△5四桂▲7五玉と進んだ。
△2三金は指しにくいと思われたが木村が指すとこれで持ちこたえているようにも見えるから不思議だ。
▲8五角に△9四金も素朴な手。金を持たせると本譜の順で後手玉が相当危なく見えるが持ちこたえていると見ている。
▲6五桂は玉の逃げ道を作りつつ△同歩なら7三銀成を見せている。好手だ。

この後も手に汗握る攻防が続くが、先手玉は9一まで潜り込んで先手が逃げ切った。先手玉の追い方がまずかったか。

木村にとっては棋聖戦に続いて惜しい結果となった。タイトル保持者と同等(に近い)実力があることを知らしめた。懲りずに、腐らずに頑張って欲しい。
竜王戦に続いて、3連敗後4連勝の奇跡が起ったことになる。深浦王位の見事な防衛劇ではあるが、空き過ぎた日程(王座戦より先に始まり王座戦より後に終了)も深浦に幸いした気がする。

ともあれ長い長い王位戦は深浦の防衛で幕となった。羽生不在のタイトル戦だったが、50期という節目に相応しい内容だった。
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2009-09-28

第57期王座戦第3局

王座戦における羽生の強さは比類ない。挑戦者山崎七段を迎えた今期もここまで2タテである。第3局は横歩取り8五飛。この戦法の先手側における山崎の功績は大きく、山崎流・新山崎流として認知されている程だ。
その山崎に羽生は8五飛をぶつけてきた。本気モードということか。

将棋は最新形の一変化に進む。図は△3五飛と3五の歩を取られたのに対し、▲2五飛と飛車をぶつけたところ。山崎はこの将棋を経験済みで、▲2五飛では▲3六歩と指している。▲3六歩ではつまらないと見たか。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v角 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 飛 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 桂 歩 歩 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:山崎隆之七段
先手の持駒:歩三 
【手数=35 ▲2五飛 まで】

ここから△同飛▲同桂△1五角▲2三歩△3三銀▲8五飛△4四銀▲6五桂△2九飛▲1六歩△4八角成と進んだ。
△同飛は当然で△1五角までは必然だろう。激しい将棋になった。
▲2三歩に対し銀を桂の利きに△3三銀としたのが、羽生らしい強手だった。桂馬が入ると△3六歩が厳しい。
▲8五飛はひねり出したという感じの手だ。▲6五桂は桂馬の躍進と角道を開けた一石二鳥の手だが、今ひとつ利いていない感じだ。
▲1六歩は催促の手だが、当然△4八角成とされた。ただでさえ△4八角成としそうなものなので、疑問手だと思う。

形勢判断はまだ早いかも知れないが、居玉の山崎流はいかにも薄く、逆に後手の中原囲いは飛車に強い。△4八角成の局面は後手にとっては満足できる分かれであろう。

山崎のタイトル戦初挑戦は第3局78手で力尽きた。渡辺竜王もタイトル戦初挑戦は王座戦敗退という結果だったがそれをバネとして永世竜王まで駆け上がった。山崎もこれをバネにすることが出来るか。注目したい。

これで羽生は王座戦18連覇だ。直近の5期に関しては無敗の15連勝。前王座が福崎九段というのは嘘のような本当の話だ。凄すぎる。
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2009-09-21

第57期王座戦第2局

第2局は、山崎七段の一手損角換りに先手羽生王座が棒銀で対抗するという将棋になった。

図は▲2四歩と飛車先の歩を交換したところ。力戦派の山崎なので△2三歩はないだろうと予想していた。

後手:山崎隆之七段
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v金 ・ ・ ・|三
|v歩v歩 ・v歩v銀v歩v銀 飛v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 銀 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:角 歩二 
【手数=35 ▲2四同飛 まで】

ここから△2三金▲2八飛△2七歩▲同飛△3八角▲2八飛△4九角成▲1六角△2七歩▲同角△3九馬▲5六歩と進んだ。
案の定△2三歩ではなく△2三金だった。後手は▲2八飛に△2七歩と叩いて強引に馬を作り行った。歩切れになったが後手の馬は最悪でも飛車と刺し違えることできる。
△3九馬の局面は手が難しいが、▲5六歩はプロっぽい手だ。
後手は2段目がスカスカなのを逆手に取ってどこかで8二の飛車を2筋に振る転回にしたいところだ。

少し進んで下図。この間、大駒交換の折衝もあった。△2九飛と飛車をおろしたところ。ここは△2二飛も指してみたいところだがどうだろう。

後手:山崎隆之七段
後手の持駒:桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v金 ・ ・ ・|三
|v歩v歩 ・v歩 ・v歩v銀 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ 歩v銀 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩v金 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 角 銀v飛 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:角 桂 歩四 
【手数=64 △2九飛 まで】

ここから▲3五歩△3九飛成▲1六角△6九銀▲6八金右△6五桂▲6六銀△1五歩と進んだ。
▲3五歩が羽生独特の幻惑の手だ。時間切迫の中このように選択権を渡されると迷ってしまう。先に▲1六角だと、△2五銀がないが、ここでは△2五銀とする手も魅惑的に見える。しかし山崎はさほど迷わず△3九飛成。強い手だ。
△6九銀▲6八金右としてから△6五桂。山崎も負けてはいない。取れる金を取らずに△6五桂と相手に手を選択させる羽生流の間合いで応じた。
ここで羽生が間違えた。週刊将棋によると▲6六銀は失着とのこと。本譜は△1五歩だったが、△2二飛ならば後手優勢だった。

なんと言う羽生の強さ。羽生が強いのは今更言うまでもないが、王座戦の強さは半端ではない。
渡辺竜王もタイトル戦の初舞台である第51期王座戦で羽生王座の洗礼を受けている。山崎の初挑戦も羽生王座の壁に屈っしてしまうのか。

なお、棋譜中継は英語版も用意された。このようなグローバルを意識した試みは大賛成だ。
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2009-09-14

第50期王位戦第6局

第6局は矢倉。後手深浦王位が端から先攻し、先手木村八段が受ける展開となった。
図は。3一の角を△9七角成としたところ。後手ながら先攻し一定の成果が得られたと思われるが、受け師の待ち受けるところだったか、木村らしい柔らかい受けの手が出る。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ 馬 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
|v飛 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
|v馬 歩 玉 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・v杏 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:銀 桂 香 歩三 
【手数=62 △9七角成 まで】

ここで先手は▲9八香と指した。
犠打の香が好手で、先手の攻めは遠のいたかに見えた。
しかし、攻め合いに転じた判断が悪かったのか、押し切って深浦が勝利した。

先期竜王戦に続き、今期王位戦も挑戦者3連敗の出だしから、タイトルホルダーが3連勝するという展開となった。
竜王戦では史上初の3連敗後4連勝の快挙を成し遂げた渡辺竜王が、初代永世竜王決定決戦を制したのは記憶に新しい。
果たして王位戦はどうなるか。注目の最終戦である。

戻って下図。ここで△9六香と走ったのが本譜の順だが、週刊将棋誌によると過去の順は全て△5四金だったと言う。
理由は本譜の様に▲4六角とされると飛車取りになり、勢い攻め続けるしかなくなるからだ。
△9六香成立の是非は上図での▲9八香の評価如何ということになりそうだ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
|v香 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 銀 歩 ・ 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 歩四 
【手数=48 △9六香 まで】

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2009-09-07

森内四間圧勝〜第22期竜王戦挑決戦第2局

- 対局者:深浦康市王位●vs○森内俊之九段
- 棋戦名:第22期竜王戦挑戦者決定戦第2局(Web中継)
- 対局日:2009/09/01

竜王戦決勝トーナメントを勝ち進んだのは1組優勝深浦王位と2組優勝の森内九段。
深浦は久保八段を、森内は高橋九段、羽生三冠(羽生の永世竜王はおあずけ)を破っての決勝進出だ。
既に第1局は8/17に行われており深浦の先勝で迎えた第2局は後手森内が四間飛車を採用した。

四間飛車!である。しかもノーマルな。藤井システム受難のこの時代、振り飛車党は皆ゴキ中に鞍替えしてしまって、とんと見かけることがなくなって久しい。
この一局を取り上げない訳には行かないではないか。

図はがっちり銀冠に組んだのに対し、▲6八銀と5七の銀を更に穴熊にくっつける動きをしたところ。
ノーマル四間飛車の中でも主流は△4四銀型だが、本局は△5四銀型だ。△5四銀型はどちらかと言うと消極的で手詰まりも懸念される。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v金v歩 ・v角v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 角 ・ ・|七
| 香 銀 ・ 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=45 ▲6八銀 まで】

ここで後手は△8五歩と指した。
8五は桂馬の跳ねる場所なので保留するのが現代将棋というものだが、大山十五世名人は平然と△8五歩としていたものだ。大山流の△8五歩はより懐の深い指し方という捉え方が正しいのだろう。
とは言うものの、現実を顧みると△5四銀といい△8五歩といいちょっと嫌な予感がした。千日手。まさか、森内の狙いは後手番の専売特許である千日手なの?だとすると幻滅なのだが...。

局面は互いに陣形を組み直している。先手は5七の銀を一旦7七に持って行った後、結局松尾流の7九に移動している。
後手の5四の銀は一旦4三に引き4四〜5三に移動している。下図。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
|v香v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v金v銀 ・v角v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 銀 金 角 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=59 ▲6八角 まで】

ここから△1五歩▲同歩△6五歩▲同歩△1五香▲同香△6六歩▲5七金△6五桂▲5九角△6四銀▲3七角△4六歩と進んだ。
千日手は全くの杞憂だった。6筋が手薄になったこの瞬間、一歩確保を目的に1筋から果敢に動いたのは後手だった。
先に香損するものの要所を押さえて後手もやれると見ている。

少し進んで下図。駒割りは先手の桂香と金の交換。後手は金を自陣に投入しており、むしろ穴熊より固い。先手も4四に桂を打って後手の大駒を封鎖している。
頃合い良しと見て△9五歩と端攻めを決行したところ。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂 ・|一
|v香v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v金v金 ・ ・v角v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 桂v歩 ・ ・|四
|v歩v歩v銀 歩 ・ 歩 ・ 歩 香|五
| 歩 ・v歩v歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 飛 ・ 角 ・ ・|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 銀 香 ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=84 △9五歩 まで】

ここから▲7七歩△9六歩▲7六歩△8四銀引▲6六香△7四金左▲6七飛△6三歩▲3二桂成△4五飛▲3三成桂△同桂▲4六歩と進んだ。
△9五歩にまさかの手抜き。端歩を突き合った穴熊では端攻めの手抜きが有効な時もあるが、ここは取る一手だろう。
6筋に放った香で攻めるものの△7四金左〜△6三歩の先受けで無効だ。▲3二桂成には角を見捨てて△4五飛。この飛車に対する▲4六歩が自らの角道を止める評判の悪い手だった。

以降も鉄壁の自陣と端攻めの重圧のみて後手の圧勝となった。
かねてから、森内の棋風には大山流四間飛車が合っていると思っていた。是非とも、四間飛車をレーパートリの一つに加えて頂きたいものだ。

2009-09-05

第57期王座戦第1局

17連覇(!)中の羽生王座に挑戦するのはタイトル戦初登場の山崎七段。以前は有望若手として「東の渡辺 西の山崎」として期待されていた。奇しくも渡辺のタイトル戦初挑戦も王座戦(第51期)で羽生王座にタイトル戦の洗礼を受けている。気がつけば渡辺は初代永世竜王である。実績では水をあけられてしまった山崎だが渡辺と並んで羽生世代の次の世代を担っていることは変わらない。

山崎先手の第1局は相掛り系の将棋になった。先の名人戦第4局と同様の展開で、名人戦では先手を持った羽生が後手を持っている。珍しい8五飛の高飛車は名人戦と同様だ。
図の▲6八銀までは名人戦と同様だが、次の一手が後手を持った羽生の意図かも知れない。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・ ・v金v角 ・|二
| ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 銀 歩|七
| ・ 角 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:山崎隆之七段
先手の持駒:歩 
【手数=23 ▲6八銀 まで】

ここから△9五歩▲同歩△9六歩▲3八銀△9五飛▲2六飛△4二銀▲8六飛△7一金▲4八玉△4一玉▲3九玉△1四歩▲8四飛△4四角と進んだ。
いきなりの△9五歩にも驚きだが、△9六歩に対する▲3八銀もそれを上回る奇異な手だ。▲同香と取れないようでは序盤早々の屈辱感が大きすぎる。
しかし山崎は、甘んじて後手の主張を受け入れて▲3八銀〜▲2六飛〜▲8六飛として、ひねり飛車の様に玉を右に囲う順を選んだ。確かに3九玉まで行くと9筋は玉から遠く一理ある指し方だ。
第一印象では良くなかった▲3八銀だが、手将棋でも簡単に悪くならない山崎将棋の長所という見方が正しいのかも知れない。
しかし▲8四飛と浮いたのは、余計だった。3四の歩を守りつつ玉側の端を睨む△4四角はこの場合の形だが、▲8四飛△4四角の交換は先手が大分損をしたと思う。

少し進んで下図。先の△4四角を活かして△1六歩▲同歩△1七歩ともう片方の端攻めを敢行したところ。両方の端を一方が攻める展開は珍しい。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v金 ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩v桂v歩 ・|三
| ・ 飛v歩 ・ ・v角v歩 ・ ・|四
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
|v歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 歩 歩 歩 銀 ・ ・v歩|七
| 歩 角 金 ・ ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 玉 桂 香|九
+---------------------------+
先手:山崎隆之七段
先手の持駒:歩二 
【手数=52 △1七歩 まで】

ここから▲2七銀△2四歩▲7四飛△2五歩▲1七香△2六歩▲1八銀△2五桂▲3八金△6二金▲4八玉△8三銀▲7六飛と進んだ。
しかしこの端攻めは急ぎ過ぎだったかもしれない。▲2七銀が手筋の受けで、▲1八銀と引っ込められても崩れていない。
成果が得られたか分からない端攻めに続いて今度は△8三銀を飛車を攻める。これはこれで難しいか。▲7六飛の局面で先手の角は完全に隠居してしまった。
戻って端攻めでは△7五飛と先手の飛車の自由度に制限を加えるのが良かったと囲碁将棋ジャーナルで谷川九段が解説していた。また直ぐの端攻めよりは先に2筋の歩を延ばしても後手十分だったと思う。

後手の模様が良さそうだけど具体的に形勢差に結びつかない局面が続いたが、その後の展開で先手の飛車は遂に御用となった辺りから、後手優勢がはっきりしてきた。

局面はずっと飛んで下図。一旦取られた先手の飛車は金駒との二枚換えで再び先手の持ち物になって▲1二飛としたところ。ここでは後手ははっきり優勢。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:金二 銀 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|一
| ・ ・v金 ・ ・v銀 ・ ・ 飛|二
| ・ ・v桂v歩v歩 ・ ・ 杏 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
|v飛 ・v銀 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
|v歩 ・ ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 銀|七
| 歩 角v馬 ・ 香 玉 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:山崎隆之七段
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=107 ▲1二飛 まで】

ここから△3一金▲7六歩△1一歩▲同飛成△8八馬▲2二成香△4五歩と進んで以下幾ばくもなく後手が投了に追い込まれた。
ここでは既に先手が悪いが▲1二飛は局後山崎が悔やんでいる。

「ここで▲1二飛がひどすぎる。△3一金と打たれて寄りがないことは分かっていましたが…。ここは▲1一飛と打つべき。チャンスをもらったかもしれないのに、何をやっているんだか。△3一金なら▲2二成香で、本譜より一手早いです」

山崎のタイトル戦初陣は黒星となった。しかし既に形勢差がついているこの局面を悔やむところに強さを感じた。
余談ではあるが▲7六歩で角道が開いたのは実に109手目だった。
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2009-08-24

第50期王位戦第5局

第5局は角換り腰掛け銀。深浦王位は4、2、1、7、3筋の順で歩を突き捨てるオーソドックスな仕掛けを採用した。
飛車の引き場所は2六の浮き飛車。1日目はどんどん進んで下図。ここで▲8七歩と敢えて二枚換えを催促したのが過去例らしい。

後手:木村一基八段
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v金v歩v銀v銀 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩|五
| 歩v飛 銀 歩 ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ ・ ・ 銀 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・v角 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩四 
【手数=66 △8六飛 まで】

ここから▲7七金△8一飛▲8六歩△7五歩▲8七銀△8五歩▲7二角と進んだ。
▲7七金が深浦用意の一着。二枚換えよりは自然な感じがする。一旦飛車を下段まで退散するが、△8五歩から合わせて再攻撃。後手玉はこれ以上固められず、先手陣の当たりがきついので、ここで攻めるのは自然な感じだ。
▲7二角は封じ手で1日目の割にはサクサク進んだ。

図は△5八角成とじっと4九から成ったところ。飛車を7二角と交換した直後の△5八角成で、飛車を渡しても早い手はないと見ているのだが。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ 全 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v金v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|五
| 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ ・ 金 金 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:飛 桂 歩六 
【手数=92 △5八角成 まで】

ここから▲4二歩△4三銀▲4一歩成△2二玉▲3五桂△3四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲3四飛と進んだ。
▲4二歩が軽手。△4三銀として一旦は受けに回ってみたものの、▲3五桂〜▲2四歩の合わせが厳しかった。

深浦3連敗の出だしだったが、踏ん張って2勝を返した。
深浦は竜王戦でも挑戦者決定戦まで勝ち上がっており、3連敗しているものの決して不調という訳ではなさそうだ。
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2009-08-13

Kifu for iPhone

iPodTouch(2G)を購入したのは今年始め。かつてはPalm OSのVisorを所有しており、Pocket将棋というソフトで棋譜を持ち歩いていた。iPodTouchのような携帯可能なデバイスにまず最初にあったらいいなと思うのは、棋譜を持ち歩けるソフトなのだ。

さてこのKifu for iPhoneだが、Web上の棋譜中継では欠かせない存在であるkifuで有名な柿木さんの作品である。既に2008年末には開発を終えており後は認可待ちという状況であることを嗅ぎ付けてiPodTouch購入に踏み切ったのは嘘のような本当の話だ。
期待通り2009年1月に晴れて公開されるやいなや、速攻でゲットしたのは言うまでもない。

Kifu for iPhoneは棋譜再生ソフトだ。出来ることは、棋譜の保存と読み込み、棋譜を記録して保存することが可能だ。それと現在の盤面をMailに吐き出すMail戦用の機能もある。機能としては必要十分で重宝している。
目玉機能はWeb上のプロ棋戦の棋譜を読み込む機能であろう。
 「Menu」→「Web」
がそれだ。
kifu形式がデファクトスタンダードであるからこそ可能な機能だ。なお、一部のkifu形式ではない独自方式のものには対応していない。また、名人戦のように有料サイトも(現在のところ)は非対応だ。

各人のPC上にあるkifuはKifu for iPhoneで読めるのか。Web機能で可能だ。URLからは読めるので予めPCから任意のkifuをどこかのサーバーにアップロードしておいて、Web機能でURLを直打ちすれば良い。ちょっと面倒臭いし、一般的ではないが、iPhoneというデバイスの特徴を考慮するとやむを得ないのかも知れない。

iPhone OS 3.0に対応済み。

Shogi Kifu
[iTunes Storeへのディープリンク]

2009-08-08

第50期王位戦第4局

まさかの3連敗で窮地に追い込まれている深浦王位。地元佐世保で行われる第4戦は負けられない一戦となった。

相矢倉でお互いに玉側の香を上げて穴熊を想定した駒組となった。

図は△3二金と穴熊のハッチを閉めたところ。この手にはもう一つの意味がある。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v玉|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金v香|二
| ・ ・v角v歩v銀v金 ・v歩v銀|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 角 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 銀 桂 ・ ・|七
| 香 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=58 △2二金 まで】

ここから▲1五歩△同歩▲同角△1四歩▲2六角△3二飛▲4五桂と進んだ。
△3二飛が狙いの一着。後手は穴熊に入城しており後は戦いを起こしたい。
一方先手は▲9八香が中途半端。決戦策の▲4五桂は封じ手だが、意外な一着だ。当然▲3五歩としてもう少し陣形を整備すると思っていたので。
封じ手の▲4五桂が木村八段の手にしては元気が良すぎると感じたが、この手以外に活路を見いだせないとう判断だったのだろう。

後手に飛車交換を拒む理由はなく、▲4五桂に△3八飛成▲同銀△4二銀▲4一飛△4五桂▲同歩というのが二日目の進行だ。
後手は悠々4五の桂を取った。先に桂損するものの▲4五同歩というのが後手陣に迫る歩ということなのだろうが、穴熊陣に対してそれほどインパクトはない。これは後手優勢が明らかであろう。

途中、木村らしい粘りの手も見られたものの終止後手ペースで終盤戦に。
図は△5五馬と1九の馬を引き付けたところ。一気の寄せを狙っている。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ 飛 ・ ・v桂v玉|一
| ・v飛 ・ ・v銀 ・v金v金v香|二
| ・v香 ・v歩 ・ ・ ・v歩v銀|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ 角 銀 歩 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩三 
【手数=98 △5五馬 まで】

図以下▲5三歩△8六香▲同角△同飛▲5二歩成△6九銀▲7九金△7五桂までで先手の勝ちとなった。

▲5三歩は承知で△8六香から攻め合い。▲同角△同飛に飛車を取れずに(▲同歩は△8七歩で寄り)▲5二歩成だが、△6九銀〜△7五桂で後手が寄せきった。

深浦は地元佐世保で角番を凌いだ。
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2009-08-03

第50期王位戦第3局

図は後手が△3七歩成と桂馬を取りつつつ金を作ったところ。先手は▲2三歩の垂らしから2筋突破を狙っており、そういう意味では既に目的は達成している。代償として桂損とと金を許したのだが、この2筋突破は見合った戦果なのか。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩v銀 ・ 歩 ・|三
| ・ ・ ・ 歩v銀v歩 ・ 飛v歩|四
| 歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 銀 ・ 歩 ・vと ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩三 
【手数=56 △3七歩成 まで】

ここから▲2二角△4二玉▲1一角成△7六歩▲同銀△6六桂▲3五香△3四歩▲同香△同銀▲同飛と進んだ。
継続手は▲2二角だが軽く△4二玉といなす。後手は得した桂馬で△6六桂。先手でかしたとはとても言えない展開だと思う。
痛いのは飛車の位置で2四だと△3三金が当たってしまう。▲3五香から銀桂交換にはなったが、3四の地点では今度は△2五角の筋を警戒しなければいけない。

その後、敢えて△2五角を打たして飛車を切って迫ったが届かなかった。
木村無傷の3連勝。深浦王位は苦しくなった。
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2009-07-25

第50期王位戦第2局

第2局は相掛りになった。
図は▲3八金としたところ。ひねり飛車の筋を先受けした手だ。それでも手の流れからするとひねり飛車模様にするかと思われたが、後手深浦王位の選択は過激だった。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・v玉v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v桂 ・ ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ 金 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=41 ▲3八金 まで】

ここから△6六歩▲同歩△4九角▲5八角△3八角成▲同飛△2七金と進んだ。
深浦の選択は△6六歩▲同歩と味を付けてから△4九角。さらに角を切って取った金を△2七金と打ち込んだ。
しかしこれはさすがに無理筋だろう。相手は受け師木村八段となればなおさらだ。

後手としては、この後ぼちぼち2筋からと金作りが間に合えばという期待があったがそうはならなかった。
先手は4四の地点で強く飛車交換を強要。互いに飛車を打ち合う展開になった。図は△4六桂と攻め合いに活路を見出そうとしたところ。一見先手陣の方が金駒が少なく、しかも壁銀になっており、後手もやれそうな気がするがそうではない。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ 角v香 ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 歩v桂 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・v桂 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩vと ・|七
| ・ 銀 金 玉 角v飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=72 △4六桂 まで】

ここから▲5二角成△5八桂成▲7七玉△5九角▲6八桂△4一歩▲7九銀△4四飛成▲6二馬と進んで、先手勝勢になった。
▲5二角成からの攻め合いは△4六桂を打たせたところからの既成路線だ。△5八桂成▲7七玉△5九角が怖いが▲6八桂で凌げる。▲7九銀のような受けの手筋の見本のような手まで出現して、ここまでこれば形勢判断も容易だ。

棋聖戦では初タイトルとはならなかったが、木村は好調を維持しているようだ。
王位戦では羽生四冠相手に互角以上に戦った深浦だが、らしくない将棋が続いている。
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2009-07-18

第80期棋聖戦第5局

初タイトルにあと一勝というところにいる木村八段だが、同時挑戦中の王位戦は先勝した。数字上は棋聖王位と一気に二冠のチャンスがある。
羽生棋聖は土壇場に(も)滅法強い。果たして最終局、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか。

木村先手の本局は横歩取り系の将棋となった。飛車の位置を巡って面白い駆け引きがあったが、そこはスルーして下図。先手は2七に歩を打たされており、しかも壁銀。これは先手にとってマイナスポイントだ。
後手が狙いの一つである7四の地点での歩交換で△7四飛としたところ。次の手は当然の反撃。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:角 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・|六
| 歩 ・ 桂 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 銀 ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 歩二 
【手数=38 △7四同飛 まで】

ここから▲8三角△7五飛▲7六歩△7一飛▲6五角成△7三銀▲8五歩△3一玉▲8四歩△8二歩と進んだ。
先手は馬を作ることに成功したが、後手にしてみれば許容範囲だという。△7三銀までは前例があるらしく▲8五歩が木村が準備していた一手だったようだ。前例は▲8五桂とのこと。
馬を作って△8二歩と謝らせても、まだ後手持ちの形勢というのが控え室の見解。

先手は▲3六歩から壁銀を活用したいが、局面にその余裕はない。7筋からの反撃が防ぎにくく、それ以上のスピードで局面をリードしなければいけない状況なのだ。
図は▲8三馬としたところ。部分的には後手が困っているが、鮮やかな一手があった。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:角 桂 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 圭 ・ ・ ・ ・v金 ・v玉v香|一
| ・ 歩v飛 ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 馬v銀v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 金 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:香 歩 
【手数=71 ▲8三馬 まで】

ここから△7四角▲7二馬△5六角▲4八金△6五桂▲5六歩△8九飛と進んだ。
7四角が狙いの一手。飛車の取り合いは角の丸損になるが、先手は飛車に弱すぎる。相対的に後手は玉が2一と深い位置にいる。

残念ながら本局は木村の良い面が全く出ず、羽生の完勝。2連敗の出だしだったが、防衛に成功した。

本局も梅田望夫氏によるWeb観戦記「梅田望夫最終局観戦記」は棋聖戦中継 plusで楽しめる。今回はコンピュータ将棋の話題を絡めた構成となっている。
GPS将棋が△7四角を予想していたということで、コンピュータ将棋の進化ぶりが伺える。Web観戦記では避けては通れないx-dayにも触れている。奇しくも本局は「先手が局所的には随分ポイントを稼いでいるが、総合的には後手有利」という将棋だった。大局観を論理的に翻訳することの難しさに関して改めて思いを馳せながら、観戦記を楽しんだ。

今日の第一回のエントリーで『私個人はと言えば、「コンピュータが進歩に進歩を続けて人間のプロの最高峰に挑みながら、紙一重のところで人間が勝つ」ということが相当長く続く未来の戦いを見てみたいと思う。』と書いたが、私は、私が見たい未来を、見ることができる、と確信した。相当先までx-dayは来ないのではないかと、私は強く思った。人間の能力の深淵を垣間見た一日だった。

と結んでいるが、共感できる。

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第50期王位戦第1局

羽生四冠(名人棋聖王座王将)のいない王位戦は実に16年振りだ。「夏と言えば王位戦。王位戦と言えば羽生」という印象が根強い。
今期王位戦は、前々期羽生から王位を奪って初タイトル、更に前期羽生の挑戦を退けた深浦王位と、棋聖戦挑戦中の木村八段の目新しいカードとなった。

深浦先手で始まった第1局は、深浦が左金で位を取る5筋位取り中飛車という斬新な将棋となった。この将棋は二日目早々に千日手となった。
封じ手は木村だったが、おそらく既に千日手を決めていて、深浦に今後の展開を考えさせるための作戦だったと思われる。だとすると千日手が戦略的に使われたことになる。

指し直し局は木村先手で相矢倉戦になった。
図は▲8六銀の手筋の早逃げにそれでも△8五桂としたところ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・ ・ ・|四
|v歩v桂 ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ 銀 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 銀 歩 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=40 △8五桂 まで】

ここから▲6五歩△7三銀▲4六角△6四歩▲3六銀△6二飛▲3八飛△6三飛▲6四歩△同角▲6六歩△6二飛と進んだ。
▲6五歩〜▲4六角で後手の右銀は7三に一次撤退。本譜のように6筋にできた拠点を逆に利用するのは、これも矢倉戦の常套手段だが、一旦△6三飛が必要なのであまり特には思えない。
既に入城している先手に対し、まだ玉が4一の後手の戦いは相当制約付きになりそうだ。

4六と6四で対峙していた角を交換したのは後手で、敵陣への角打ちを先着した。少し進んで下図。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・|四
|v歩v桂v歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 歩 歩 歩 歩 銀 ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・v角 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=63 ▲2五歩 まで】

ここから△3五歩▲同銀△3四歩と進んだ。
後手の狙いは銀を入手して△5八銀。これを実現するための手順だが、一歩損してかつ攻めの(しかも現時点ではやや遊んでいる)銀と矢倉城の銀を交換するのは違和感ある。

その後、△5八銀の筋は実現したもの、その間に作られた先手の7三のと金の方が価値が高い。
最後まで明暗を分けたのは玉の位置の差だったと思う。

木村は幸先良いスタートとなった。あれほどタイトル戦で勝てなかったのが、同時進行中の棋聖戦で羽生と互角に渡り合っている現状が自信になっているのかも知れない。
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2009-07-12

第80期棋聖戦第4局

第4局は一手損角換りに。最近タイトル戦で目にする木村八段の一手損角換りは柔らかい受けが印象的で、本局もそのような展開に持ち込みたいところだろう。
羽生棋聖は棒銀の早い動きで対抗した。2六の銀を立て直すのが通例だが、3七銀と指さなかったのが本局の趣向。2六銀のまま▲6八金右としたのが下図。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v玉v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・v歩v歩 ・v銀v歩v銀 ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:角 歩 
【手数=35 ▲6八金右 まで】

ここから△7三角▲3七角△6三金▲3八飛△3三歩▲1六歩△9四歩▲3五銀と進んだ。
お互いに角を打ち合う展開になったが、こうなると2六の銀が違和感がある。▲3八飛の銀取りに△3三歩と受けたのにも違和感。このような常識的な大局観に照らし合わせると、その範疇から外れるような手が最近のプロ将棋には多くなった。
▲3五銀は派手な手だが、3七の角がいなくなると3八の飛車が素通しとなるのでタダという訳ではない。先手は凝り形の角銀を捌く狙いだ。

図は▲3七角と打ったところ。後手の反撃を緩和している。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 銀 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・v歩 ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・v銀v歩 ・v歩 歩|四
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ 飛 ・v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩 角 ・ ・|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:銀 
【手数=55 ▲3七角 まで】

ここから△7二飛▲7五歩△8五桂▲1五飛△7七桂成▲同金直△7六歩▲同金△1八歩▲同飛△3六角▲2八飛△2七銀と進んだ。
△7二飛は指されて見れば当然だが、先手が軽視していた手かも知れない。先手は後手が右桂を捌いている間に▲1五飛と端を狙うが△1八歩と最後の歩と叩いたのが好判断。先手の飛車をいじめる展開になった。

この後飛角交換となって後手優勢になった。やはりこのような将棋では飛車に威力は絶大だ。
羽生もしぶとい受けで対抗して下図。8一の飛車を6一に成りかえっての金取りに△6三銀と5四の銀を引いて受けたところ。先手陣の銀銀桂はいずれも受けた手で△6一飛成は待望の手だ。
△6三銀はいかにも木村らしい手で、これで受けきりと見ている。すわ木村棋聖誕生か。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 馬 ・ ・ 龍 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v香v金 ・ ・v玉v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v銀v歩 ・v歩 歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 歩|四
| ・ ・ 歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 金 ・ 歩v角 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・v銀 ・|七
| ・ 玉 桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀v龍 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:歩五 
【手数=100 △6三銀 まで】

ここから▲8二馬△同金▲6三龍△3五角打▲5七香△2九龍▲5二銀△3四歩▲1三歩成△同桂▲3三歩△同玉▲5三龍△4三金打と進んだ。
▲8二馬に△同金は本譜のように▲6三龍と銀をぼろっと取られるが、△3五角打が厳しい。ただこの展開は後手が明白に優勢という印象ではない。
この後互いに疑問手が出たようだが、疑問手は最後に指した方が罪が大きい。△4三金打は敗着。受けになっていなかった。ここは桂合すればまだ先の分からない将棋だったという。

羽生薄氷の勝利。勝負は最終局に持ち越しとなった。
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2009-06-29

第80期棋聖戦第3局

名人戦を防衛したばかりの羽生棋聖だが並列進行中の棋聖戦はまだ終わっていない。
第3局は愛知県豊田「ホテルフォレスタ」での開催だが、名人戦第7局も同ホテルで行われており、移動なしで本局に挑んだようだ。

木村八段は前局でタイトル戦初勝利を果たし、22日には橋本七段との王位戦挑戦者決定戦を制しており、上昇気流に乗っている。

戦型は相矢倉に。近いところでは第21期竜王戦第5局(渡辺○vs●羽生)と同様の展開に。ここで竜王戦では△3三桂としたが、手を変えた。△3三桂は今までの流れに沿った無難な手と言える。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v角v歩v歩v歩v銀v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 銀 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:なし
【手数=45 ▲9六歩 まで】

ここから△7三桂▲2五歩△3三銀引▲1七香△8一飛▲1八飛△8二飛▲1五歩△同歩▲同香△1二歩▲5八飛と進んだ。
△7三桂は一方的な守勢になるのを嫌ったか。しかし後手がら攻める手がある訳ではなく、飛車の移動で手待ちをすることに。
一方ほぼ先攻の権利がある先手は一旦1八に浮いた香車をもう一つ浮いて、端に手をつけた。これは攻めるというよりは一歩を手にするのが目的だ。
これに対する△1二歩は慎重過ぎたか。この手の意味は△1二歩に▲1七歩なら、そこで△1三歩とすることでパスするのが狙いだったそうだ。しかし▲5八飛とされて目論見は外れた。

▲5八飛の手の流れに沿って先手は5筋から動いた。呼応するように後手は8筋から動いた。互いに5筋と8筋を取り込み合う展開になって下図。
△9五歩▲同歩と端を突き捨ては意味は攻守を入れ換えるためだった。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v角 ・v銀v金v玉v歩|二
| ・ ・v桂v歩 ・v金v銀v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・ 歩v歩v歩 ・ ・|四
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 香|五
| ・v歩 ・ 銀 ・ 銀 歩 ・ ・|六
| ・ ・ 金 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩四 
【手数=73 ▲9五同歩 まで】

ここから△同香▲同香△6五桂▲同銀△9五角▲8三歩△同飛▲7四銀△8七歩成▲同金△6八角成▲同金△8一飛▲8六歩△5七歩▲2八飛△1三歩と進んだ。
後手が攻める展開にはなったが、先に駒を損するだけにそれなりの成果がないといけない。本譜は先手の丁寧な受けに後手が窮した感じだ。△1三歩と手を戻すようでは変調だ。

先に謝った△1二歩を攻めが途絶えたタイミングで△1三歩と突くのは羽生らしい手だとは思うが、本局では変調にしか映らない。以降は木村の鉄壁の受けだけが印象に残った。

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2009-06-28

第67期名人戦第7局

羽生名人の出力が不安定で郷田九段にチャンスありというのが第5局終了時の見立てだったが、第6局は後手郷田九段の陽動振り飛車が不発でフルセットまでもつれ込んだ。
最終局は振駒で羽生先手となった。戦型は相矢倉だが両者工夫の陣形に。先手は早囲い、後手は左美濃。3筋と7筋を互いの角で歩交換が行われ、▲7六歩としたのが図の局面。封じ手だがこれはこの一手だろう。
早めに▲4六歩を決めているのは新工夫とのこと。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・v玉v銀 ・ ・|二
|v歩 ・v銀v歩 ・v金 ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・v角 ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ ・ 歩 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:歩 
【手数=33 ▲7六歩 まで】

ここから△5三角▲4七銀△6四銀▲3六銀△3一玉▲4八飛△2二玉▲4五歩△同歩▲6五歩△3五角▲同銀△5三銀▲3七桂と進んだ。
先手は狙い通りの攻めの駒組から、囲いもそこそこで4筋から矢倉崩しの要領で先攻した。一手のロスもなく、破壊力は抜群だ。
後手は△2二玉と入城して、先手に攻めさせる方針を選択した。受けきるのは至難な感じがする。
あと気になったのは△6四銀だ。なぜ△7四銀ではないのだろうか。

案の定先手の猛攻を後手が凌げるか、という将棋となった。図は△3七角に4八の飛車を▲3八飛としたところ。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 銀v銀 ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩v金 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・v角 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:角 歩二 
【手数=59 ▲3八飛 まで】

ここから△1九角成▲4四銀成△同銀▲3三歩△同桂▲同桂成△同銀引▲3四歩△同銀▲同飛△4三銀打▲3九飛△2八馬▲3四桂と進んだ。
△1九角成は不可解。この局面に至る前に△1五角▲2六角△同角▲同歩の交換が入っているので読み筋通りなら当然△2六角成ともたれて指すと思われたので。
▲3四歩に対し△同銀と取ってしまうのは、一旦駒損しても局面を収めてしまおうという手だが、▲3四桂まで進んでみると依然先手の攻めが繋がっている。

このまま先手が攻め続けて、羽生の快勝譜となった。全体を振り返ると薄氷で防衛に成功したという感じか。
郷田にしてみれば消化不良のまま終局してしまった本局と、陽動振り飛車という作戦を選択した第6局に悔いが残る今期名人戦になった。

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2009-06-20

第80期棋聖戦第2局

今期棋聖戦の挑戦者決定戦では、新鋭稲葉四段が勝ち進んでいたことで話題となった。挑決戦では後手番の木村八段の一手損角換りに対して果敢に攻めたが、木村の受けに屈して初挑戦とはならなかった。
本局はその挑決戦と同様の進行となった。羽生棋聖が稲葉側を持っていることが興味深い。

図で稲葉は▲3四歩としたが、ここで羽生が手を変えた。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v銀 ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 角 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:歩二 
【手数=32 △8二飛 まで】

ここから▲2四銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛△5五銀打▲5八金△3六歩▲3八歩と進んだ。
▲2四銀はシンプルな順で挑決戦とは離れたがまだ実戦例はあるようだ。真に実戦例と離れたのは△5五銀打。木村らしい局面全体を包括するような銀打ちだ。
△3六歩に対する▲3八歩は部分的には随分損な気がする手。名人戦第5局の△5二歩までは行かないが似た雰囲気の手だ。一連の読み筋とは別次元の、現局面での最善手ということなのだろう。

少し進んで下図。歩で味付けをして、▲6四銀と技を掛けたところ。受け師の本領発揮か、はたまた先手の技が決まるのか。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・|二
|v歩v飛v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ 銀v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 角 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ 金 ・ 歩 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:なし
【手数=47 ▲6四銀 まで】

ここから△4四角▲5五銀△同銀▲4五銀△8六銀▲4四銀△同銀▲5六角△8七歩▲6五角と進んだ。
▲4五銀に△8六銀と互いに角取り。先手は▲4四銀と角銀交換から7七の角を放置して▲5六角とした。
△8七歩で、後手の二枚換えになりそうな局面に。実際二枚換えになったが、8七の歩と8六の銀がかぶっているため、先手も戦えるというのが羽生の読みだろうか。

図は終盤戦。▲2二歩△同金と後手陣の形を乱したところ。本局2度目の▲2二歩△同金だ。技を掛けたが決め手にならず、局面が収まりつつある。
二枚換えの後手が優勢かといえばそうでもなく、形勢は互角か。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・v金 ・|二
|v歩 馬v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|四
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 角 ・ ・ 飛 ・ ・|六
| 歩v全 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 歩 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:銀 歩 
【手数=80 △2二同金 まで】

ここから▲5九玉△4二玉▲4六歩△6五歩▲7五角△7二金と進んだ。
▲5九玉△4二玉と自陣の整備が続く。▲4六歩も8三の馬を引き付けるための手と思われるが悪手だった。△6五歩で先手は困った。△7二金で8三の馬が局面から消えることが確定して、後手勝勢に。

木村はタイトル戦初白星。一方の羽生は並列進行中の名人戦もあり対局過多なのは仕方ないところだが、相変わらず出力不安定なのが気になる。

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第67期名人戦第6局

第6局は後手郷田九段が陽動振り飛車を採用した。
後手番の勝率が上がっているのが注目されているが、原因の一つは後手番でも勝率の悪くない戦法が選択的に指されていることがあると思う。一手損角換りやごきげん中飛車がそれにあたる。
陽動振り飛車はそういう訳ではなく、現代将棋では注目されていない戦法である。古風な郷田らしい選択ではある。

図は駒組途上の局面。陽動振り飛車も振り飛車の一種なので居飛穴は天敵だ。本譜も居飛穴を警戒している。△4五歩と角道を通して、△7三桂も入城より優先している。
ここで▲8八玉は指しにくく、角道を避けて▲8八銀からミレニアムが発想としてはまず浮かぶ局面だ。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・ ・v飛 ・|二
|v歩 ・v桂v銀v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 角 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:なし
【手数=32 △5二金左 まで】

ここから▲8八玉△5四歩▲3七桂△4四銀▲4六歩△同歩▲同角△4五歩▲5七角△6五歩▲4七銀と進んだ。
羽生名人の選択は堂々▲8八玉。最強の手で角道は怖くないと見ている。▲8八玉が成立していれば先手良しというのがこの局面の見立てだったが、これを機に後手が猛攻撃を仕掛ける順にはならなかった。
▲8八玉の継続手としては当然▲9八香から穴熊を目指す順も有力だが、▲8八玉のまま左辺で戦線を拡大した。これは先手ペースと言えるだろう。

曲線的な羽生らしい手順を経て下図になった。▲4六飛に対して、△4三歩としたところ。△4三歩は手順に一手で陣形を引き締める手で、後手挽回したか、という声もあった。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v角 ・v銀 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・v桂v歩 ・ 歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 角 歩 飛 銀 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:歩四 
【手数=68 △4三歩 まで】

ここから▲4五歩△3五銀▲同銀△同飛▲3六歩△3四飛▲4四歩△同飛▲4五銀△5六歩▲同飛△3七角成と進んだ。
▲4五歩に△3五銀は意外だった。3六の銀を相手にするのは損で、△5六歩を決めてから△5三銀したい。△3五銀は勝負手で本譜の順で二枚換えになったのは両者とも読み筋だったようだ。
少し後手が盛り返した気はするが依然先手良しだろう。

下図は終盤戦。6五の桂を▲6五飛と食いちぎったところ。先手が決めに行った局面だ。△同銀では▲8四桂で後手玉は寄っている。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・ 龍v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v銀 歩 ・ ・ ・v歩|三
|v桂 ・v歩v銀 ・v歩 ・v歩 ・|四
| 銀 桂 ・ 飛v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・v馬 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v角 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:銀 桂 歩三 
【手数=105 ▲6五飛 まで】

ここから△8六桂▲7三銀△同金▲同桂成△同玉▲8五桂△8三玉▲8四歩△同馬▲同銀△同玉▲7三角△同銀▲9五金と進んだ。
△8六桂と桂を捨てるのがはっとする順で、▲同銀とすると今度は▲8四桂には△同馬とできるので△6五銀と飛車を取れる。
羽生は△8六桂を放置して▲7三銀から攻める。9五の銀を▲8四歩△同馬▲同銀と清算したので△8六桂が盤面に残る展開となった。
先手陣も受けは難しく、後手陣を寄せるしか勝ちがない状況になっているが、淀みない見事な寄せが炸裂した。▲9五金が決め手で取れば▲7三桂成が空き王手となる仕組みだ。

郷田の意外な陽動振り飛車。羽生の堂々▲8八銀。そして鮮やかな寄せの3点が印象に残る名局となった。
これで3−3のタイになり名人位の行方は最終局に持ち越しとなった。最終局も熱戦が期待できそうだ。

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2009-06-13

第80期棋聖戦第1局

木村八段が、3度目のタイトル戦登場。過去のタイトル戦は、第18期竜王戦(対渡辺竜王)と第56期王座戦(対羽生王座)だが、意外なことに未だ白星がない。ここらあたりでタイトル戦初勝利といきたいところだろう。
対する羽生棋聖は名人戦が同時進行中だ。名人戦をみるかぎり調子は良くないと感じる。

戦型は後手羽生が5筋から動く急戦調の矢倉に。角を右辺に転回するこの形は苦杯をなめた第21期竜王戦で渡辺竜王が採用して話題になったものだ。従来は急戦調だから先手に飛車先の歩を切られるのはやむを得ないと考えられていたが、△3三銀と2筋を守る感覚が新しい。
図は△4二金右としたところ。先手銀は二枚の銀を中央に繰り出し古来の感覚では美しいとされている形だ。堂々とした自然な陣形ではあるが現代の目で見れば古風と言えるかも知れない。
対して後手陣は低くて現代的な構え。色々な意味で対称的な陣形となった。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v金v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v銀v歩v歩|三
| ・v角v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 銀 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=36 △4二金右 まで】

ここから▲7九角△2二玉▲4六角△7三角▲5五歩△8六歩▲同歩△同飛▲7九玉△4四銀右▲3六歩△1二香と進んだ。
先手は慌てず自然な手で駒組勝ちを目指す。▲5五歩と角交換を拒否したのは方針に従ったものだが、歩切れとなった。後手は飛車筋の歩交換も果たし二枚の歩をもった。
そして、△1二香。まるで渡辺竜王が羽生に乗り移ったかのようだ。

少し進んで下図。後手陣は穴熊完全体である。反面攻め味は乏しく、一旦切った8筋の歩を合わせて手待ちをしている。

後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v金v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v銀v香|二
| ・ ・v角v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v飛v歩 ・ ・v銀v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 歩 桂 ・ ・ 歩|五
| 歩 ・ 歩 銀 銀 角 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=70 △8四飛 まで】

ここから▲3五歩△同銀▲3三歩△同桂▲同桂成△同銀▲6八角△2二金上▲4五銀△9五歩と進んだ。
▲3五歩から動くのが機敏で、先手が戦機をつかんだ。しかし、▲6八角では過激に▲3五角と切って攻め続けるのが正解だったようだ。
先手が一呼吸ついたおかげて△9五歩と後手に攻める順が回ってきた。穴熊は桂がなくなってしまったが依然遠いという特徴は残っている。

以降は木村らしく受けに回る展開となったが、後手の攻めが繋がってしまった形になった。
将棋は後手が勝ったものの、駒組の段階では両者共先手持ちということで見解が一致していた。これが渡辺世代だとまた違った見解が得られるのかも知れない。

さて、本局は前期棋聖戦第1局第21期竜王戦第1局に続いて梅田望夫氏によるWeb観戦記が楽しめる。
過去2回のWeb観戦記は今春上梓された「シリコンバレーから将棋を観る -羽生善治と現代」にまとまった形になっている。

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2009-06-06

第67期名人戦第5局

第5局は秋田県秋田市「秋田キャッスルホテル」で行われた。数多のタイトル戦を戦い抜いてきた羽生名人にとっても秋田県でのタイトル戦は初めてとのこと。これで羽生は47都道府県で戦ったことのない県は宮崎県のみとなった。東国原知事、何とかなりませんかね。

将棋は横歩取り系。図は先手郷田九段が3六の飛車を▲2六飛としたところ。一触即発の緊張感漂う局面だ。
角交換から△4四角の筋が見えるが大丈夫と見ている。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v角 ・v歩|三
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ 玉 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:歩三 
【手数=21 ▲2六飛 まで】

ここから△8八角成▲同銀△4四角▲2四飛△3三桂▲5五角と進んだ。
後手は前述の順を決行。△4四角に対して▲2四飛は唯一の手のようだ。▲5五角が郷田の試してみたかった手。アクロバティックな応手が続く。

ほんの少し進んで下図。飛車角交換から△2七飛と飛車をおろしたところ。次の一手が好手だった。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩 馬v歩v桂 ・v歩|三
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩v飛 歩|七
| ・ 銀 金 ・ 玉 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:角 歩四 
【手数=32 △2七飛 まで】

ここから▲2三歩△5二歩▲7五馬△4四飛▲8二歩△同銀▲1八角△2五飛成▲6三角成△7一金と進んだ。
▲2三歩が好手。これで既に後手が痺れている。△5二歩は封じ手だが、羽生にとって辛い手となった。ここまで緩まない応手の連続だが、△5二歩は劣勢を受け入れて、チャンスを伺う方針だから。
以下後手陣を乱しつつ二枚目の馬を作って先手好調。いかに羽生と言えども逆転の可能性がほとんどないほど形勢は離れてしまった。

手数は長いものの、以降ノーチャンスで郷田の快勝譜となった。

本シリーズで初めて先手に白星がついた。ここまでの5局を振り返ってみると羽生の調子がおかしい気がする。名人位防衛に黄信号が灯った。

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2009-05-25

第67期名人戦第4局

「錯覚いけないよく見るよろし」第4局の舞台はかの高野山である。
相掛り系の本局は、序盤から手将棋模様となり慎重に時間を使い合う展開となった。

後手は飛車先の歩交換後8五の高飛車に引くという趣向。図は△7四歩に▲3六銀としたところ。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・ ・v金v角 ・|二
| ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:歩 
【手数=25 ▲3六銀 まで】

ここから△7五歩▲5六歩△3三桂▲4六歩△4二銀▲6六歩△7三銀▲6七銀△7四銀▲7六歩と進んだ。

△7五歩は意欲的な手だ。角道を封じきれれば作戦勝ちが見込めるがリスクも大きい。具体的には▲2五銀からの速攻を覚悟しなければならない。
ここで1日目が終了。封じ手は気合いから言っても当然▲2五銀と予想したが、羽生名人の選択は▲5六歩。意外だったが柔軟な手だったかも知れない。
対する△3三桂は郷田九段渾身の序盤の勝負手。桂馬を跳ねてしまうと進展が見込めないし、角道も止まってしまう。駒組の進展があまりないところを咎められる可能性もある。
これを受けて一旦は▲4六歩。しかし右辺はここまでで▲6六歩以降は左辺の手だ。後手の角道が止まっているから可能になった手だが、ややバランスを欠いたというから将棋は難しい。
この辺りを羽生は局後に後悔している。

「さっき▲4六歩と突いたので、ここでは▲4七銀と引きべきでこちらが自然でした。この辺りの指してはチグハグでした」

ということらしい。

7筋の折衝から戦いが始まって下図。△7六歩▲8六角として7七の角を退かしたところ。ここで華麗な手が出た。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v金 ・v銀v金v角 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v桂 ・ ・|三
|v歩v飛 ・ ・v歩 ・v歩 飛v歩|四
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| 歩 角v歩 ・ 歩 歩 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 銀 ・ ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=59 ▲8六角 まで】

ここから△4五桂▲3四飛△3一歩▲4五銀△9九角成▲5七桂△6六銀▲6五桂△4七香と進んだ。
△4五桂が序盤の△3三桂の顔を立てた意味でも大きな華麗な手だ。ただし成立しているかは紙一重だ。応手が▲同銀ではなく▲3四飛だったところを見ると成立していたようだ。
△4五桂に▲同銀は△9一角成と△7七歩成の二通りの手が考えられ、羽生は後者を警戒していた様だ。▲3四飛は捻り出した感のある手だ。
▲5七桂は一手の価値としては小さい手だ。本譜の様に△6六銀と突進される。ここで▲6五桂と跳ねるのでは手の調子としてもおかしい。

難解ながら序盤で差がついていたようで、その微差を維持したまま郷田が終局まで辿り着いた。

これでここまで後手番の4連勝というのも特筆しておくべきであろう。

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2009-05-10

第67期名人戦第3局

先の2局はがっぷり四つの矢倉戦だったか、第3局は横歩取り8五飛車になった。近いところでは第58期王将戦第7局(深浦●vs○羽生)が8五飛だった。横歩取り8五飛車復活の兆しか。
この戦法は研究勝負になる可能性が高い。どこで温めていた新手が出るのかという見方も面白い。

進行は第74期棋聖戦第3局(佐藤○vs●丸山)と同じ松尾流と呼ばれる8五飛戦法では古株の順だ。図は△5五馬と1九の馬を天王山に引き付けたのに対し、先手も▲5六角成と8三の角を馬にした局面。
丸山棋王ここで△4四馬としているが、ここで羽生名人が新手を放った。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:香 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉v銀 ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩 ・ 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・v馬 桂 歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 馬 ・ ・ 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:桂 歩 
【手数=49 ▲5六角成 まで】

ここから△5六同馬▲同歩△2五歩▲3六飛△5二玉と進んだ。
△同馬と取ってしまうのが、前から「ある手と思っていた」とのことだ。盤面から馬が消えた局面で、△2五歩は一回様子見の手だが、じっと△5二玉と手を渡したのが羽生らしい手だ。

少し進んで下図。先手は銀取りを何とかしなければいけない局面だ。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:香 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀v玉 ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ 桂 歩 ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 飛 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ ・v馬 ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:角 桂 歩三 
【手数=66 △2八角成 まで】

ここから▲1六銀△7六歩▲8二角△7七香▲9一角成△7八香成▲同銀△4六金▲2九香と進んだ。
▲1六銀は▲3八銀から銀を中央に使う手が最初に目に映るし、何より第1局の印象もあり指しにくいと思われたが、郷田九段は▲1六銀。当然ながらきっちり読みの入った上での選択だったようだ。
△7六歩は緩い感じがするが、羽生らしい手ではある。▲8二角も緩い手なので呼応した手なのかも知れない。
後手は金を入手したので△4六金の飛車桂両取りが実現した。4五の桂が急所なのでこれを抜けるのが大きく、難解ながら後手ペースになった感じがするが、▲2九香が返し技だ。

図は終盤戦。△3八飛の王手の局面。飛車の威力は大きく、先手玉はいかにも薄い。▲4八歩は4筋に歩がたたなくなるし、△3九飛成とされると次に△5九龍がある。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:香 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 馬 ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・v金 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・|五
| ・ ・v歩 歩 歩v桂v金 ・ 銀|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 銀 玉 ・ ・v飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:角 桂 香 歩三 
【手数=84 △3八飛 まで】
ここから▲6七玉△7七香▲6九銀△8四飛▲8六香△6四飛▲8三香成△7九香成▲7三成香△8四飛▲9六角△6九成香▲6三成香△同銀▲7三馬と進んだ。
先手は堂々と▲6七玉。2度目の△7七香が出現し緩手と思われた△7六歩の垂らしの顔は立ったか。しかし▲6七玉から左辺への脱出路としては機能していない。
△8四飛は挟撃攻めを目論んだ手で、▲8六香は攻めを遅らせる犠打。▲8六香を打たせて一旦△6四飛とした。香車の利きがなくなった時に再度の△8四飛。凝った手だが▲9六角が攻防手だった。
少しだけ後手が良さそうな気がしていたが、この手を境に先手優勢になった。7三にいる成香で6二の銀を取らずに▲6三成香としたのが好手で、▲7三馬が厳し過ぎてここでははっきり先手勝勢だろう。

しかし、郷田は着地に失敗してしまう。後に先手が最後のお願いで△3七飛成と王手をした時に事件が発生した。合駒をすれば勝ちだったが、即詰めをするために持ち駒温存で玉を逃げたのだ。
ところが、詰めろだと思っていた局面が詰まないことに気付いた既に遅かった。

名人戦らしい8五飛の熱戦だったが、郷田痛恨の錯覚で終局となった。

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2009-04-26

第67期名人戦第2局

第2局もコクのある矢倉戦となった。
図までは前例のある局面で、第21期竜王戦第5局(渡辺○vs●羽生)では羽生名人は後手を持って指している。竜王戦では羽生は△2一玉と指している。
郷田九段の手は後手番でも先攻するという意思を感じさせる一手だった。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 歩 銀 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:なし
【手数=49 ▲6六銀 まで】

ここから△8六歩▲同歩△9五歩▲同歩△同香▲9六歩△同香▲9七歩△同香成▲同桂△8四歩▲9六香と進んだ。
△8六歩がその一手。無理筋っぽい手だが、この手で先手の受け後手の攻めという構図の将棋となった。
△8四歩は▲8五桂を防ぐ手だが、桂損しているので指しにくいと言われていた手。さらに▲9六香も控え室の検討にあまりなかった手のようだ。

少し進んで下図。△8三桂と控えて桂馬を打ったところ。後手の細い攻めが成立している感じがする。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v歩 ・v飛 ・ ・v銀v金v玉 ・|二
|v桂v桂v角v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
| 歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩v銀v歩|四
| 香 ・ ・ 歩 ・v桂 ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 銀 歩 銀 歩 歩 歩|六
| 桂 玉 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:なし
【手数=74 △8三桂 まで】

ここから▲9六玉△9五桂▲4五銀△4四歩▲5四銀△同金▲4六桂△4三銀と進んだ。
先手は堂々▲9六玉。△9五桂で寄せにくいと言われてる桂頭の玉の形にしたところで、▲4五銀と攻めに転じた。
これが超一流の呼吸というものだろうか。難解だ。

少し進んで下図。4六の桂馬を▲3四桂と飛んで王手を掛けたところ。この手も本命視されていなかった手だ。代わりに▲3四歩が検討されていた。△4六歩には▲4五桂がある。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:銀 香 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v角v歩v金v銀 ・v歩 ・|三
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ 桂 ・v歩|四
|v桂 ・ ・ 歩 歩v歩 歩v銀 ・|五
| 玉 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 桂 ・ ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=91 ▲3四桂 まで】

ここから△3一玉▲8五歩△8一香▲8四歩△8五歩▲同桂△8四角▲9四歩△同歩▲8六角△5二歩と進んだ。
△3一玉も予想になかった手。利かされだし、何かの折で8六角と覗かれる手が生じそうだ。先手も▲8五歩として▲8六角を狙ってきた。
しかし△8一香が用意の一手。

少し進んで下図。先手の攻めが一段落した雰囲気だ。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:銀 桂 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v飛 ・v歩 ・v玉 ・ ・|二
| ・v香 ・v銀v金 ・ ・v歩 ・|三
|v歩v銀v歩 ・ ・ ・ 桂 ・v歩|四
|v桂 桂 ・ ・ ・v歩 歩v銀 ・|五
| 玉 角 歩 金 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 香|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治名人
先手の持駒:角 金 歩三 
【手数=118 △3二同玉 まで】

ここから▲9七玉△8五銀▲5九角△8六歩▲8八歩△9六銀打▲9八玉△8七歩成▲同歩△同桂成▲同金△9五桂▲7七金△8六銀と進んだ。
▲9七玉は早逃げだが、△8五銀と自然に進撃されて角を逃げざるを得ない。桂頭の玉囲いが下段に押し戻された。
△9五桂に対する▲7七金では▲8八金で難解だったようだが、本譜は先手玉は寄っている。

以下は後手玉に即詰みがあるかどうかという将棋となったが、際どく後手玉は詰まず、5七の地点まで逃げ切った。
不動駒は1一と9九の二枚の香のみという熱戦だった。

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2009-04-12

第67期名人戦第1局

2期振りに名人戦の挑戦権を得た郷田九段。待ち受けるのは羽生十九世永世名人だ。
お互い手の内を知り尽くした羽生世代同士の対決ということで波長の合った好局が期待できる。
郷田先手で始まった第1局は▲7六歩△8四歩の出だし。両雄の対戦成績は羽生36勝、郷田17勝で羽生が大幅に勝ち越しているが矢倉を除くとほぼ五分の星になるという。
郷田は実利よりも真理を追究するタイプなので、当然ながら矢倉を受けて立った。

図はその序盤。▲3五歩△同歩▲同角に△5三銀としたところ。やや早めの動きだがよくある展開の一つだ。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀 ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:歩 
【手数=26 △5三銀 まで】

ここで先手は▲6八角とした。

この当然の一手に3時間26分の大長考。後々の展開を読んだと思われるが、この局面で大長考するのは加藤九段と郷田位だろう。
日本シリーズで3連覇するほど時間の短い将棋も苦にしない郷田だが、このような長考も可能な二日制タイトル戦である名人戦は郷田の力を最大限に引き出せる舞台である。

少し進んで下図。互いに陣形を囲い合ったので先手が猛攻するかと思いきや、▲6五歩と突いてい少し違う展開になっている。
後手の陣形が厚いのと、△9三香の形を咎める目的で先手も陣形を厚くする方針に軌道修正したものと思われる。確かに▲7五歩で後手の左桂が使いにくくなっている。ここで後手はどう指すのだろうと思っていたが、矢倉素人には目から鱗の手が着手された。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・v角v金v玉 ・|二
|v香 ・v歩 ・ ・v金 ・v歩v歩|三
|v歩v歩 ・ ・v歩v銀v銀 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ 金 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 銀 歩 歩|七
| ・ 玉 金 角 ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:歩 
【手数=57 ▲7五歩 まで】

ここから△2四角▲同角△同歩▲9五歩△同歩▲9四歩△同香▲8三角△3八歩と進んだ。
△2四角が素人には思いも付かない発想だ。角交換後の▲5一角が見えているからだが、2四に馬を作られても意外と狭いことを見越している。
先手も▲5一角ではなく▲9五歩と自陣の端歩を突いた。本譜のように9三の香を取りきるのが狙いだ。先の9三香を咎める方針としてはぶれはないが、自陣の端歩だけにそれなりの反動はありそうだ。
後手も香車を取られるまでに、それに見合った手を指さなければならない。それが△3八歩。一手指す方が優勢に見える見応えのある攻防が続く。

少し進んで下図。▲3六歩と指したところ。逆に△3六歩とされると終わりなのでそれを防いだ手だが、ここで後手に三手一組の好手が出た。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ 角v歩 ・ ・v金 ・ ・v歩|三
|v香v歩 ・ ・v歩v銀v銀v歩 ・|四
|v歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 金 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ ・v馬 銀 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:歩 
【手数=75 ▲3六歩 まで】

ここから△3五歩▲同歩△2三銀▲9四角成△3六歩▲2六銀△4六馬と進んだ。
△3五歩▲同歩△2三銀が好手順。自陣を固めながら△3六歩の余地を作った。先手はようやく香車を取ったが△3六歩が実現した。結局3七の銀は1六の僻地へ追いやられることになる。
この辺りは僅かながら後手ペースというのが検討陣の見立て。

少し進んで下図。1六の銀がちょっと悔しい。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛v歩 ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v歩 ・ ・v金 ・v銀v歩|三
| 馬v歩 ・ ・ 歩 ・ ・v歩 ・|四
|v歩 ・ 歩 歩 ・ ・v銀 ・ ・|五
| ・ ・ ・ 金 ・ ・v歩 ・ 銀|六
| ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・v馬 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:香 歩三 
【手数=96 △5二歩 まで】

ここから▲7四歩△1九馬▲4六香△4四歩▲7三歩成△同桂▲8四馬△3七歩成▲7三馬△4七と▲5九飛△3七馬▲3九飛△6一歩と進んだ。
▲7四歩は手渡しの意味?△1九馬が自然でかつピッタリの手なので疑問手だろう。この手を境に後手優勢がはっきりした感じだ。
それでも▲8四馬で予め当たりを避ける意味で▲5九飛はあったようだ(BS囲碁将棋ジャーナルの谷川九段の解説による)。△6一歩で盤石か。

下図は終盤戦。▲7三飛と飛車を攻防に打ったところ。しかしこの手は疑問手で▲5一飛として、▲5二飛成〜5三歩成を狙った方が勝ったらしい(これも谷川解説)。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:飛 角 銀 桂二 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・v玉 ・|二
| ・ ・ 飛 ・ ・v金 ・v銀v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・v歩 ・|四
|v歩 ・ ・ 歩 ・ ・v銀 ・ ・|五
| ・ ・ ・ 金 ・ 香 ・ ・ 銀|六
| ・ 歩 桂 ・ ・ ・vと 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:角 金 香 歩五 
【手数=121 ▲7三飛 まで】

ここから△3四角▲4五歩△4六銀▲6四角△4九飛▲7一飛成△4二桂▲3一金△3二銀打▲同金▲3一銀△3三玉▲5六金△7二歩と進んだ。
どこかで先期竜王戦第4局のような▲7九歩の先受けはありそうだが、格調高い郷田将棋にそのような手はないというのも控え室共通の見解だ。
一頻り後手陣に迫ったところで▲5六金と手を戻した。ここで△7二歩として△7六桂を見せるのが憎い手。▲同龍は後手陣が見えなくなり指しきれない。

矢倉の熱戦を制したのは羽生名人だった。
郷田としては9三香を咎めるためとは言え自陣の端歩から動いてしまった(動かされた)ことと、右銀が1六の僻地へ追いやられてしまったことて、戦況を悲観してしまったのが敗因かも知れない。

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2009-04-06

後手勝ち越しという快挙

2008年度後手が勝ち越した。1967年度から将棋連盟がデータを蓄積し始めて以来初と言う。

平成20年度将棋年鑑と2008年度のデータをまとめると下記となる。

年度 総対局数 持将棋 千日手 実対局数 先手勝 後手勝 先手勝率
1988 2403 6 28 2357 1258 1099 .534
1989 2489 6 43 2423 1309 1114 .540
1990 2474 5 39 2415 1284 1131 .532
1991 2428 4 54 2354 1244 1110 .528
1992 2320 6 49 2228 1204 1024 .540
1993 2309 4 37 2243 1171 1072 .522
1994 2265 6 35 2217 1147 1070 .517
1995 2225 4 40 2169 1146 1023 .528
1996 2160 2 27 2119 1116 1003 .527
1997 2228 2 36 2184 1138 1046 .521
1998 2256 6 43 2197 1135 1062 .517
1999 2461 3 59 2394 1215 1179 .508
2000 2439 6 44 2379 1248 1142 .522
2001 2413 2 57 2368 1228 1140 .519
2002 2401 3 51 2342 1263 1079 .539
2003 2365 5 56 2290 1228 1062 .536
2004 2343 4 46 2286 1266 1020 .554
2005 2349 3 48 2294 1217 1077 .531
2006 2347 6 32 2290 1194 1096 .521
2007 2398 5 48 2330 1238 1092 .531
2008 ???? ? ?? 2340 1164 1176 .497

後手番は後手番故に一手の差がある。将棋は論理的には先手必勝と考えられており、プロ棋士のデータはこれを裏付けていた。
ところが僅差ではあるが年度のデータとして後手が先手に勝ち越したのだ。これは大事件だ。

この辺りの考察では9x9=81の以下の記事が参考になる。
序盤四手チャート2008 (1)
序盤四手チャート2008 (2)

ここ数年の流行戦法である一手損角換りは、手損を得と考える後手にとっては魅力的な作戦だが、この作戦をもっても5割越えは果たしていない。

後手勝率躍進の原動力は角道を止めない戦法だろう。角道を止めるという行為が棋理に反するのかもしれない。
角道を止める振り飛車が角道を止めない力戦系振り飛車に移行したのが後手勝率が上がった最大の要因だと思う。

では将棋は先手必勝ではないのか?
短期的には後手も善戦するが、それでも近い将来には先手勝率が5割以上に落ち着くと思う。

まあ、私の様なアマチュアには関係ない話ではあるが。
それでも私は今後も角道を止める四間飛車を愛好するだろう。

2009-04-02

第34期棋王戦第5局

佐藤棋王の将棋は序盤から創意工夫があり、何が飛び出すか分からない面白さがある。そこが魅力的なのだが、そこは諸刃の剣。時にはうまく行かない時もある。
第5局はそんな佐藤将棋が裏目に出てしまった一局かも知れない。

後手久保八段のゴキゲン中飛車に対して先手佐藤があまり見かけない駒組をしたのが下図。8八の銀を▲7七銀と上がったところ。先手の主張は6筋の位で、ここを奪還されてしまっては即作戦負けに繋がりそうだ。
当然後手も6五の地点に対して動いた。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v飛 ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v銀 ・v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 
【手数=35 ▲7七銀 まで】

ここから△7三桂▲6六銀左△5五銀▲同銀△同歩▲7七桂△3三角▲3六歩△9二香▲3七桂△4二角!▲6六銀△9五歩と進んだ。
△7三桂は当然の揺さぶり。5五の地点で銀交換になった。互いに角銀を持ち合うことになったが、後手は△3三角と角を手放した。この角が一見ぼやっとしているが、△9二香〜△4二角として狙いが見えてきた。
気がついてみると、先手陣は左桂を跳ねており9筋が薄く、本譜の端攻めを受ける手だてがない。△4二角の瞬間に▲5二銀という手があるが、△5二同飛▲4一角△6二飛▲3二角成に△1五角があって決め手にはならない。

久保は5度目のタイトル挑戦で念願の初タイトルを手にした。振り飛車党のタイトルホルダーは藤井竜王以来である。振り飛車党にとって数少ない希望の光だ。
久保は順位戦の昇級こそ逃したものの、最多対局(73局)最多勝利(49勝)。棋王戦を有終の美で飾って最高の年になった。
反対に佐藤は7年ぶりの無冠となった。

これで7大タイトルの内、羽生四冠(名人王座棋聖王将)以外は全てB1級の棋士(渡辺竜王、深浦王位、久保棋聖)が保持するという事態になった。上位クラスの層が厚くなったということか。

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2009-03-30

第58期王将戦第7局

最終局は後手羽生王将の横歩取り(取らせ)中座飛車。一世を風靡したこの戦法も最近はあまり見かけなくなった。先手の対策が進化して一時程の後手番のドル箱的存在ではなくなったのが理由の一つだ。そういう意味ではこの大事な最終局でこの戦法を選択したのは意外と言える。

図は封じ手の局面。▲4六角一目だが、2筋から殺到する決戦の手順が見えているだけに決断の手になる。さて深浦王位の選択は。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v歩|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・v桂 ・|五
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・|六
| 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 銀 金 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 桂 歩二 
【手数=50 △2五同桂 まで】

ここから▲4六角△2七歩成▲同金△3七桂不成▲同銀△3八角▲2四角△2九角成▲と進んだ。
封じ手は決断の▲4六角。こうなるともう止まらない。飛車の取り合いになったが、先手の中住まいは直ぐに詰めろが掛かってしまいそうで、後手に手段が多い将棋となった。
▲4六角では▲7四桂が有力だったと週刊将棋誌の「中村修九段の見た第7局」にもある。善悪は分からないが後手の中原囲いに嫌みをつけて、彼我の陣形差を薄めた方が実戦的だった気もする。

下図は▲2三歩△同銀としたところ。少し後手が良いのではないかと言われていいたようだ。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:桂二 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 飛 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ 馬 ・v歩v歩v歩v銀 ・|三
| ・ ・ ・v歩v桂 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ 歩v銀 ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 銀 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 桂 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v龍 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=80 △2三同銀 まで】

ここから▲5六桂△6一桂▲8三馬△6二金寄と進んだ。
▲5六桂は4八桂の活用だがやや指しにくい。▲5三角成と行けないようではやはり後手優勢か。
△6一桂と7三の馬に当てながら、▲5三角成を防ぎ、更に△6二金寄と6四に桂馬が跳ねた時の当たりを予め避けた手が羽生らしい柔らかい受け。

第7戦までもつれ込んだものの、羽生が王将位を死守した形となった。これで羽生は王将戦5連覇。休む間もなく名人戦が控えている。
深浦は二冠のチャンスを逃したが、A級も降落してしまった現時点では二冠はまだ早いということなのだと思う。

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2009-03-22

第34期棋王戦第4局

先手久保八段の四間飛車はまあ想像の範疇だとしても、後手佐藤棋王の棒銀には驚いた。第4局はクラッシックな将棋となった。

後手の棒銀はスピード重視の△4二銀型。図は△7五歩の仕掛けに▲同歩△同銀としたところ。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・v金v銀v玉v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 角 銀 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:歩 
【手数=32 △7五同銀 まで】

ここから▲9五角△7四飛▲7六歩△6六銀▲同銀△同角▲7五銀△9四歩▲7七角△同角成と進んだ。
先手が▲7五同歩と応じたのは▲9五角の幽霊角があるから。△7四飛と当たりを避けた手に対し、▲7六歩の催促。後手の強気に応えて△6六銀▲同銀△同角▲7五銀と進んだ。
この▲7五銀には△同飛▲同歩△9一角成で難解というのが定跡だが、後手は△7五同飛ではなく△9四歩。初めて見る手だ。

局面は一旦収まり下図。△8二飛と7二の飛車を8筋に移動したのに呼応して▲8八飛としたところ。
先手は馬を作っているが働きは今一つ。何となく後手の誘いに乗った形で馬を作らされた感じもする。▲7一馬には△8四飛と縦に逃げて何も起きない。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v玉 ・ ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v角v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 馬 歩|六
| ・ 歩 桂 金 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:なし
【手数=55 ▲8八飛 まで】

ここから△8六歩▲同歩△8七歩▲5八飛△8六飛▲8九歩△8八歩成▲同歩△8七歩▲5六歩△8八歩成▲5五歩△7八と▲同飛△8九飛成と進んだ。
△8六歩以降自然な手の連続で簡単に龍を作るのに成功した。

以降の先手の指し方は悪いながら粘る指し方に終止した。いくら久保と言えども毎回軽快に駒が捌ける訳ではなく、悪くなると相手に決め手を与えずに粘る将棋も巧い。
しかし、本局はチャンスは訪れなかった。
仕掛けの辺りから先手指し方に疑問手があったと思われる。本譜の△9六歩は二枚換えよりも良いと判断した訳で、確かに収まると先手だけ銀を使っており、さらに歩損。一理ある指し方だ。

佐藤は2連敗後の2連勝。虎の子の棋王位を守ることができるか。

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2009-03-16

中原の5七銀

稀代の棋士、中原誠十六世名人が現役引退を表明した。
脳出血のリハビリで休場していたが、復帰は叶わなかった。

ご本人が「印象に残る将棋」として選んだのは、第37期名人戦第4局。図は▲3三歩△同桂と歩を叩いたところ。

後手:米長邦雄
後手の持駒:金 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v玉 ・ ・|二
| ・ ・v銀 ・ 金 ・v桂v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩v銀 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 歩|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・|六
| ・ 歩 金v馬 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v銀 歩v飛 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:中原誠
先手の持駒:角 金 歩 
【手数=82 △3三同桂 まで】

ここから▲5七銀△同馬▲5四角と進んだ。
▲5七銀がしばしば紹介される有名な妙手。取られる銀を馬で取らせることで手を稼いでいる。

自然流と称される十六世名人だが、確かにタイトルを保持していた矢倉全盛時代はそんな印象がぴったりだったが、平成に入った辺りから中原囲いを軸とした相掛り系のやや無理筋っぽい将棋スタイルに変わった印象がある。

長い間お疲れさまでした。

2009-03-15

第58期王将戦第6局

順位戦ではまたしても降級の憂き目に合ってしまった深浦王位だが、王将戦ではあと一勝で奪取、2冠のチャンスが巡ってきている。
本局は後手深浦の4手目△3三角戦法から四間飛車となった。

図は先手が3筋の歩を突き捨てた後、飛車先の歩を交換して▲2六飛と引いたのに対し、△3六歩と突き越したところ。次に△4四角を見ている。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・ ・v銀 ・v香|一
| ・ ・v玉 ・v飛 ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・v歩 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角 歩 
【手数=26 △3六歩 まで】

ここから▲5九金右△4四角▲3六飛△3五歩▲4六飛△9九角成▲3四歩△4四馬▲同飛△同歩▲3三歩成△同金▲1六角△3四香▲2二歩と進んだ。
▲5九金右は△4四角を打ってみろ、という手だ。△4四角と打たせても大丈夫なら手待ちとしては有効そうだ。挑発された訳ではないだろうが、後手は△4四角。飛香両取りなので打ちたくなる角ではある。
しかし、先手も代償として▲3四歩を打てるので、駒損は回復できる。▲3四歩は▲8八銀を入れるかどうかは迷うところだ。本譜は直ぐに打ったため△4四馬と自陣に退却した。
ばっさりと馬飛交換の▲4四同飛が先手の選択で、確かに▲1六角の味は良い。△3四香は受けるだけのつまらない手で、それに対し▲2二歩は好手。こう進めば△4四角を打たせる手法は成立してそうだ。

図は中盤戦。▲2二歩はと金に昇格しており、早い手は必要ない局面となっている。先手は現在歩切れなので△7四香は次に△7六香と走れればという手だが。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・ ・ と ・v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・ ・ 圭 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v金 ・v歩|三
| ・ ・v香 ・v歩v歩 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ 銀 角 ・ ・|八
| ・ 桂 銀 金 金 ・ ・ 香v龍|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:飛 桂 
【手数=60 △7四香 まで】

ここから▲6八桂△6四銀▲1一成桂△6二金▲2二飛△6五銀▲7七香と進んだ。
当然先手は▲6八桂と△7六香を許さない。△6五銀に▲7七香と丁寧に指して優勢を拡大。

△4四角を許容する指し方が印象に残る一局だった。

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2009-03-11

将棋界の一番長い日をソウルで観た

既に一週間前の話になるが、将棋界の一番長い日=A級9回戦を振り返る。

8回戦までの経過を振り返ってみると、挑戦の方は6勝の郷田九段が勝てばすんなり、郷田の相手は5勝の木村八段なので負けた場合は木村八段と同率プレーオフ。もう一人5勝を挙げている佐藤棋王も郷田が負けて自身が勝てばプレーオフだ。
郷田、木村、佐藤の三人の争いとなっている。

一方降級の方は、3勝の三浦八段、谷川九段、鈴木八段、深浦王位に絞られている。
谷川vs鈴木のカードは敗者が即降級。三浦は自身が勝てば順位の差で残留確定、深浦は自身が勝っても三浦が勝ったら降級という厳しい条件だ。

挑戦者も注目だが、それ以上に谷川が気になる。その谷川vs鈴木は最も早く終局。相振りの一戦は谷川に軍配があがった。負けた鈴木は無念の降級。
森内vs三浦戦は三間飛車の森内が三浦を破った。これで深浦は自力になったが、丸山vs深浦戦は深浦が破れて降級が決まった。タイトル保持者の降級は史上初とのことだが、それだけ層が厚くなったということだろう。

一方挑戦の方は郷田vs木村戦で郷田が勝ってすんなり名人戦挑戦を決めた。

氏名   9回戦 勝敗
森内九段 三浦○ 5-4
三浦八段 森内● 3-6 挑
郷田九段 木村○ 7-2
丸山九段 深浦○ 5-4
木村八段 郷田● 5-4
藤井九段 佐藤● 4-5
谷川九段 鈴木○ 4-5
佐藤棋王 藤井○ 6-3
鈴木八段 谷川● 3-6 降
深浦王位 丸山● 3-6 降

将棋とは関係ないが、この日は仕事で韓国ソウルにいた。
今回の出張は顧客製品のトラブルシュート。韓国の方は皆働き者なので解決するまで拉致状態になることも少なくない。幸いこの日はさくっと解決し、ホテルに21時前に戻れた。
この日を見届けるために重い思いをして持ってきたiBookをネットに接続。異国の地でいつもと違う環境のせいか、なかなか棋譜がロードされない。どうやらサーバートラブルだったようだが、終止接続は悪かった。
ネットの調子が悪いのでBS中継頼りとなったが、日本のBSも視聴可能なのは幸いだった。渡辺竜王と山崎七段の解説コンビはなかなか面白かった。渡辺の解説は明解で良い。でも早く解説される側にならないとね。

2009-03-09

第34期棋王戦第3局

佐藤棋王は2連敗で早くも角番に追い込まれている。棋王位を失うと無冠になってしまう。

そんな正念場の対局も佐藤の将棋にぶれはなかった。後手久保八段のこきげん中飛車に、佐藤は無骨とも思われる仕掛けを断行した。
図は▲4一角としたところ。後手としては▲4一角は気持ち悪いものの無理筋と判断しているところに敢えて飛び込んでいるのが佐藤らしい。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ 角v銀 ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v歩v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:なし
【手数=31 ▲4一角 まで】

ここから△4二飛▲3二角成△同飛▲2二金△5二飛▲3一金△2六歩▲同飛△5三角▲4六飛△3一角▲4三飛成と進んだ。
割り打ち角から▲2二金とぶち込む手が成立しているとして、踏み込むのはいかにも佐藤らしい。
一方▲2二金に対して△5二飛とあっさり3一の銀を見捨てた手は捌きの久保らしい。▲3一金に△2六歩が狙いの一手でこの歩を取ると本譜のように△5三角の飛車金両取りとなる。
△2六歩は観戦していて気づかなかった好手だ。
しかし先手は堂々▲2六同飛。金を取らせて龍をつくった。駒損でも駒の効率でバランスが取れているという大局観だ。剛直でいかにも佐藤らしい選択ではある。それでも本譜は駒得が大きく後手優勢だと思うのだが。

中盤の下図。▲2二銀のぶち込みがこれまた佐藤らしい無骨な手だ。いかにも筋が悪い。

後手:久保利明八段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v角 ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・ ・ 銀 ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v金v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v馬 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ 龍 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:歩二 
【手数=57 ▲2二銀 まで】

ここから△6四角▲1一銀不成△5四金▲2二歩成△7四歩▲2四歩△2五桂▲2三歩成△5三飛▲2六龍△1四歩▲2四歩と進んだ。
みすみす働きの悪い角に逃げられ、▲1一銀不成と香を拾っている間に△5四金と遊び駒を中央に進出されている。
その間に先手は▲2二歩成▲2四歩▲2三歩成▲2四歩と2筋でと金生成。確実な攻めだがそれだけに足が遅すぎるとしたものだが、後手に手がないのを見越した卓越した大局観の裏付けがあったのかも知れない。
途中に指された△7四歩が少し嫌な予感のする手だ。指した時は△7三角あるいは△7三桂の余地を作った価値の高い手だが、これらが指されないと単なる傷になりかねない。

頃合いと見て後手が攻め合いにギアチェンジし、壮絶な打ち合いを演じているのが下図。▲5五銀の飛車取りを放置して△5七銀成としたところ。果たしてどちらが攻め勝っているのか。

後手:久保利明八段
後手の持駒:飛 金 香 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ 銀|一
| ・v玉v銀 ・ ・ と ・ と ・|二
| ・v歩 ・v歩 ・ ・ 金 ・ ・|三
|v歩 ・v歩 ・v飛 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v歩 馬 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 桂 歩v全 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・vと ・|八
| 香 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:角 桂二 歩 
【手数=108 △5七銀成 まで】

ここから▲5四銀△1九と▲8六桂△7三香▲5二と△6四香▲6一と△6七成銀▲8九玉と進んだ。
△1九とと香を拾ったのは、本譜の▲8六桂に△7三香を用意したもの。△6四香を実現するには香が一枚では足りないのだ。7四歩が傷となってしまったのが後手にとっては痛い。
狙いの△6四香が実現したものの▲6一と△6七成銀に▲8九玉で、先手玉は詰まず、後手玉は必至で先手の勝ちが確定した。

角番にもかかわらず、佐藤にしか指せない佐藤らしい将棋を披露した一局となった。

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2009-03-04

第34期棋王戦第2局

本局の先手久保八段の作戦は石田流三間飛車。しかし単なる三間飛車にはならなかった。
ことの発端は図の▲7四歩だろうか。久保は超急戦を狙っていた。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:なし
【手数=9 ▲7四歩 まで】

ここから△7二金▲7五飛△4二玉▲7三歩成△同銀▲2二角成△同銀▲7七桂△5四角▲5五角と進んだ。
▲7五飛が見かけない手で久保八段の研究手の様だ。▲7六飛だと本譜の△5四角が当たってしまうということだろうが、▲5五角から一歩も譲らない決意表明の手と言える。

図は△6四角の飛車取りに▲7四飛としたところ。少し前に7筋で殺到した先手だが、仮に△6四角で攻め足が止まってしまうようでは久保の超急戦は疑問符が付くことになる。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ 飛v角v角 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:金 銀 歩 
【手数=27 ▲7四飛 まで】

ここから△2七角成▲7五銀△6五桂▲6四銀△5七桂成▲同玉△4九馬と進んだ。
▲7五銀に△5五角なら▲6六銀△6四角の千日手のコースも見える。後手に選択肢があるのでやはり先手の作戦は成功したとは言えないと思う。
しかし、佐藤棋王も乱戦の雄だ。売られた喧嘩を買って出た。▲7五銀△6五桂と千日手コースを否定。かくして両者足を止めての壮絶な打ち合いとなった。居飛車振り飛車対抗形でここまで激しい攻め合いは記憶にない。

このような乱戦は手番を渡すのはとても勇気が必要だろう。現在手番は後手が持っている。ここで寄せきれれば後手の勝ちなのだが。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:金 銀二 桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 龍 ・ ・v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v玉v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 金 ・ ・v馬 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 金二 桂 歩二 
【手数=41 ▲6八玉 まで】

ここから△5六金▲7八玉△7七歩▲8九玉△6七金▲7六角△7八銀▲8八玉と進んだ。
△5六金と攻防に金を置いたが、▲7八玉の早逃げ。△7七歩にも▲8九玉として先手玉は相当安全になった。△6七金に▲7六角が真の攻防手で先手勝ちがはっきりしたようだ。

乱戦だけあって57手の短手数だったが、スリリングな将棋だった。
久保は初タイトルまであと1勝だ。

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2009-03-01

第58期王将戦第5局

深浦王位の先手中飛車。第5局は意表の戦型となった。

図は後手羽生王将が8筋の歩を切ったところ。
この図で少し奇異に感じるのは3筋と7筋に突き合った歩だ。▲7五歩は△6四銀に▲6六銀をぶつけた結果伸びたものだ。△3五歩は位ということなのだろうが、傷にもなり得る。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩v飛 ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 ・ ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=40 △8六同飛 まで】

ここから▲7四歩△同歩▲5五歩△1五歩▲9七角△8二飛▲5四歩△5八歩▲同飛△5二歩▲6五桂と進んだ。
▲7四歩は悩ましい手で、ここで封じ手となった。先手は中飛車らしく5筋突破を狙う。▲9七角〜▲5四歩〜▲6五桂で5筋突破は確実となった。
しかしながら中飛車ペースとは言えない。美濃の急所である端に手を付けられているのと、△5八歩▲同飛と一本叩かれているのが大きい。うまく行っているようでも7八の金はポイントが低い。

図は△5七歩ともう一度飛車先を叩いたところ。ここでは先手は5筋を破っているものの駒が重く、後手は龍が出来ているので後手乗りの声が大きかった。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 圭 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ 歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 香|六
| 角 ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 ・ 飛 ・ 銀 玉 ・|八
| 香v龍 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:銀 歩四 
【手数=60 △5七歩 まで】

ここから▲6八飛△3六歩▲7九金△9九龍▲8八角△9六龍▲4四角△3三香▲1三銀と進んだ。
手の流れからするとこの歩を▲同飛と取って7八の金は取らせる感覚で攻め合い勝ちにならないと中飛車ペースとは言えない。▲6八飛はこれを断念した手で本意ではないだろう。
しかし▲7九金に△9九龍としたのが羽生らしからぬ疑問手。▲8八角が絶好でおかしなことになった。やむを得ない△9六龍に▲4四角で事件だ。
△9九龍では△3六歩を活かす意味でも△8五龍の一手だった。

羽生にしては優勢を勝ちきれないという珍しい結果となった。
深浦は先に3勝目を挙げて二冠まであと一つとなった。

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2009-02-22

第58期王将戦第4局

第4局は後手深浦王位の一手損角換り。先手羽生王将は早めに1筋の歩を突き越した。右玉かとも思われたが腰掛銀に。
図は△3五歩としたところ。先手が3六歩を保留しているので、ならばという積極的な手だ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩v歩v銀v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 歩|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角 
【手数=34 △3五歩 まで】

ここから▲4五銀△6三銀▲5六角と進んだ。
▲4五銀のガッチャン銀に対し、△6三銀が勢いの意味からもらしくない一手だった。△4五同銀は▲同歩で後手が損な感じなので、ここは△5五銀の一手だと思う。なにより図の△3五歩と相反する。
▲5六角と大砲を構えて先手の狙いが分かりやすくなった。

図は▲3七桂に対し△4四歩としたところ。先手の猛攻が始まる。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂v銀v金 ・v銀v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v角 ・v歩 歩 歩|五
| 歩 ・ 歩 歩 角 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:銀 
【手数=52 △4四歩 まで】

ここから▲2四銀△4六角▲3三銀成△同金▲2四歩△同歩▲3四銀△3六歩▲3三銀成△同玉▲2六飛△3七角成▲3四金と進んだ。
歩頭に打つ▲2四銀が強手。これで後手陣は潰れているようだ。△4六角と各筋で2筋を守るものの、一旦▲2六飛とし△3七角成に▲3四金。今度は▲2四飛と走れる。

以下はブルトーザーのように俗手で攻めて問題なし。先手の完勝となった。
佐世保出身の深浦王位だが、今回の大分対決では地の利を生かせなかった。

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2009-02-14

第58期王将戦第3局

凝り形という言葉がある。本局の後手の陣形はまさに凝り形だった。
後手羽生王将のゴキゲン中飛車に先手深浦王位は▲7八金と持久戦の構えを採用した。

図は▲7九玉としたところ。先手の当面の方針は玉を囲うことだ。後手としては軽い形から動いていきたいところ。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v飛 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v角v歩 飛 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=27 ▲7九玉 まで】

ここから△3三銀▲2八飛△2六歩▲7七角△8二玉▲8八玉△7二銀▲3六歩△2四銀▲3七桂△3三桂と進んだ。
後手は2筋からの逆襲を狙うべく、△2六歩〜△2四銀〜△3三桂とした。がなんとも凝り形だ。△2四銀△3三桂の形は仮に2筋を逆襲できたとしても、兵力を使い過ぎな気がする。特に2四銀は処置に困りそうだ。

中盤の下図。先手は5三に桂を打ち込んでいる。これが今現在は楔となっているが、△5二歩とその桂を取りに来たところ。
桂を取りきれれば、先手の指し過ぎということになる。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v角 ・v飛 ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v銀v金v歩 ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 桂 ・v銀 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩 飛 ・|六
| 歩 歩 角 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=54 △5二歩 まで】

ここから▲2四歩△2一飛▲4一桂成△2四銀▲2二歩△同飛▲4四角△3三桂▲2九飛△2五歩▲6二角成△同角▲7七銀と進んだ。
▲4一桂成に△2二銀が控え室で発見されていた手。これで成桂を取り切れる。無筋のようだが方針には則っている。
しかし本譜は△2四銀。▲4四角に△3三桂と打たされて、またしても△2四銀△3三桂の形が出現。どうも後手陣が凝り形だ。先手の方が伸び伸びしており、ぱっと見で後手を持ちたいという人はよほどの受け好きだろう。
先手持ちではあるが実際にどう指せば良いのかは難しいところ。そんな中先手はばさっと▲6二角成だったが、この手は本局で最も驚いた。角を切っておいて▲7七銀と手を戻すのも変調な感じだが、6筋への飛車の転回を見ている。

図は終盤。後手は2三に角を打っており、打った時は4一の成桂にも当たっている攻防手だったが、感触は悪い。
たった一歩の▲3二歩で、後手の飛車はこれで使用不能に陥っている。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ 圭 ・v香|一
| ・v玉 ・ ・ ・ ・ 歩v飛 ・|二
|v歩v歩 ・ ・v歩v金v桂v角v歩|三
| ・v銀 歩v歩 歩 ・ ・v銀 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v角v歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 ・ ・ ・vと ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 
【手数=89 ▲3二歩 まで】
ここから△7六歩▲同銀△5四金▲同銀△同歩▲6四飛△6二歩▲6三歩△7七歩▲同桂△4六角▲6二歩成△6四角▲7二金と進んだ。
後手も何とか2枚の角を世に出したが、時既に遅し。先手は予定通り6筋に飛車を転回して6筋を突破。△6四角と飛車を取るものの▲7二金以下ばらさせて万事休す。

左辺に放置された後手の駒を見れば、これでは勝てるはずがないのは一目瞭然だ。後手としては終止凝り形に苦しんだ将棋だった。

それにしても深浦は羽生に強い。本局を勝って対羽生戦を25勝25敗の5分とした。

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2009-02-09

第34期棋王戦第1局

振り飛車受難の時代が到来して久しく、角道を止める振り飛車はほとんど見られなくなった。台頭するのが角道を止めない、ゴキゲン中飛車系の力戦振り飛車だ。
久保八段も多分に漏れず、四間飛車からゴキゲン中飛車と石田流三間飛車に基軸を修正した振り飛車党の一人だ。そして最も成功を収めている一人とも言える。
今期の勝率は0.719と圧倒的だ。タイトル挑戦は過去4回(第26期棋王戦、第49期、第55期王座戦、第57期王将戦)。ちなみに相手はいずれも羽生四冠。そろそろ初タイトルと行きたいところだ。
受けて立つ佐藤棋王としては虎の子の棋王位である。やすやすと手放す訳にはいくまい。

第1局は後手久保のコキゲン中飛車から5筋の位を確保した。対する佐藤の作戦は今や主流ではない3七銀〜4六銀とする指し方。いずれに左銀も繰り出して5筋を奪還するのが狙いだが、後手が面白い対応策を見せたのが下図。
図は△4四歩に▲4六銀と繰り出したところ。このままでは5五の歩が取られてしまう。

後手:久保利明八段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v飛v銀 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:なし
【手数=19 ▲4六銀 まで】

ここから△4五歩▲同銀△4三銀▲4六歩△3二金▲4七金△2二角▲9六歩△3三桂と進んだ。
△4五歩▲同銀と一歩を犠牲に銀桂交換に持っていくのが狙いの手だ。しかしこの手は▲4六銀と出た時から先刻承知であろう。

少し進んで下図。先手は2筋の歩を切った。そろそろ捌きのアーティストの捌きを見たいところだ。

後手:久保利明八段
後手の持駒:銀 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v金 ・v飛 ・v金v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| 歩 ・ ・v銀 歩 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 金 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋王
先手の持駒:桂 歩三 
【手数=45 ▲2八飛 まで】

ここから△5五飛▲同角△同角▲7七銀△4四角打▲5四歩△7七角成▲同桂△7六銀と進んだ。
△5五飛はこう行きたいところ。個人的にはこのような手が指せるのが振り飛車の醍醐味と思っている。
▲7七銀はやむを得ない受けだが、△4四角打が力を貯めた手。次に△7七角成▲同桂△7六銀の狙いがある。
ここで▲5四歩が不可思議な手だ。本譜は結局先の手順を許す訳だが、その代償がない。例えば▲5四歩では▲4一飛とでもしておけば、本譜の牽制にはなる。

久保にとって初タイトルに向けて幸先の良い先勝となった。

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2009-02-01

第58期王将戦第2局

第2局は後手深浦王位が4手目3三角戦法を採用。先手としては△3三角には気合いからも▲同角成としたいところ。羽生王将も▲同角成と踏み込んだ。
3三角戦法は居飛車のまま銀冠を目指す作戦と、飛車を振る作戦に分けられるが深浦は後者を選択した。深浦の振り飛車は珍しいが予定の行動だろう。

図は△2五桂としたところ。ゴキゲン中飛車系の力戦振り飛車に見られるポンポン桂だ。
後手の狙い筋の一つだが単純なのでプロ的には向かないと思われていたが、意外と優秀な手法であることが認知されてきたのか、よく見かけるようになった。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v飛v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v銀 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・|七
| 香 ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 銀 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角 
【手数=24 △2五桂 まで】

ここから▲同飛△2四歩▲2八飛△2五歩▲3八桂と進んだ。
△2五桂に対し先手は直ぐに▲同飛とした。いつでも取れるところを直ぐ取ったのは羽生らしい。

少し進んで下図。▲1四歩に△同香としたところ。もちろん▲同桂は飛車が抜かれてしまう。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v飛 ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v歩v銀 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v香|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 桂v歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂|七
| 香 銀 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ 金 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角 歩二 
【手数=44 △1四同香 まで】

ここから▲1八歩△1七歩成▲同歩△4二金と進んだ。

▲1八歩は意外としか言いようがない。受けの手だが、状況が改善していない。コメントにもあるように▲2五桂とするよりなかったと思う。

早くも後手優勢と思える局面になったが先手は下図の反撃に本局の明暗を賭けたということかも知れない。
図は▲2四飛と当たりになっている飛車を切ったところ。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・v金 ・ 歩v飛|二
| ・v歩v歩v歩v歩v歩v銀 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 桂|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 角 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 香|七
| 香 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・v馬|八
| 玉 桂 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:香 歩二 
【手数=63 ▲2四飛 まで】

ここから△同銀▲同角△5二金寄▲1三香△2三飛と進んだ。
△同銀▲同角で4二の金取りにはなるが普通に△5二金寄で何もない。▲1三香で1二の飛車は死ぬが△2三飛があっては飛車切りの勝負手は空振りだろう。

本局は羽生にしては珍しく序盤で大差の将棋となってしまった。
それにしても狙いが単純なポンポン桂だが、羽生でさえも餌食になってしまったことに少なからず衝撃を受けた。優秀な手段なのだろうか。

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2009-01-24

羽田で田中寅彦九段と森下卓九段を目撃

今日は義母が帰省するのを見送るため羽田空港へ行った。義母のフライトは12:00だが、時間に余裕を持って10:00位に到着した。
うろうろしていると、向こうの方から長身の男性2人組がこちらにやって来た。なんと、その二人組は田中寅彦九段と森下卓九段だった。
ご両人は丁度自分とすれ違うように去っていった。10:30位の出来事である。

2009-01-19

第58期王将戦第1局

羽生王将が3連勝しながら4連敗という予想外の終焉となった竜王戦の記憶は新しいが、新たに年が変わって最初のタイトル戦である王将戦が開幕した。
ここでも羽生が登場。現在四冠だ。挑戦者は激闘の王位戦を戦った深浦王位、対羽生戦に結果を出している数少ない棋士の一人だ。王位戦に続いて二冠目のタイトル奪取と行きたいところだろう。

深浦先手で始まった第1局は一手損角換りに。腰掛け銀に展開した後、4、2、1、7、3筋の順に歩を突き捨てる定跡の仕掛けとなった。
先手の仕掛けが一段落して、後手に手番が回った。後手も持ち歩を使って、飛車先の歩交換を行う展開に。
7六の銀を▲8七銀としたのに対し△8一飛と下段まで引いて、▲3三歩成としたのが封じ手の局面。一日目はさくさく進んだ。
図は封じ手の△3三同金の局面。△同銀は▲8二歩〜▲7一角の筋があるのでない手とのこと。△同桂もないので消去法で△同金はこの一手と思う。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v金v歩 ・|三
|v歩 ・v金v歩v銀v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ ・ 飛 ・|六
| ・ 銀 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩四 
【手数=66 △3三同金 まで】

ここから▲7二角△8二飛▲6一角成△8六歩▲9八銀△7七歩▲同玉△8五桂▲6八玉△7七歩▲7九金△2四歩▲4二歩と進んだ。
なんと先手は敢えて△8六歩の楔を打たせる方針の▲7二角を選択した。深浦は最強の指し方で受けきる決意だ。後手は気持ちの良い手が続く。
△2四歩は飛車の展開を見せた味の良い手で後手ペースを感じさせる。それは許さじと▲4二歩は軽妙な手だが先手が押されている感じはする。

図は大詰めの局面。▲6七金左と馬に当てたところ。先手は上部を開拓し、入玉含みで指すしかなさそう。

後手:羽生善治王将
後手の持駒:銀 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v金 ・|三
|v歩 ・ ・ 馬v銀 ・ 歩v歩 ・|四
| ・v桂 ・ ・ ・ ・v銀 ・v歩|五
| 歩v歩 玉 歩v馬 ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| 銀 ・ ・ 金 ・vと ・ ・ ・|八
| 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 歩六 
【手数=111 ▲6七金左 まで】

ここから△7五歩▲同玉△7四歩▲8六玉△7七桂成▲8二歩△同飛▲同馬△6七成桂▲4一歩成△8四金と進んだ。
▲8六玉と飛車筋に玉を誘って△7七桂成の空き王手が狙いの手だが、当然▲8二歩と止められた。しかし△同飛の強手が成立しているようだ。

中盤の優勢をそのまま維持して羽生が勝ちきった。

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2009-01-12

棋王戦挑戦者は久保八段

- 対局者:久保利明八段○vs●木村一基八段
- 棋戦名:第34期棋王戦挑戦者決定戦第1局(Web中継)
- 対局日:2008/12/26

棋王戦挑戦者決定戦は勝者の山から木村八段、敗者復活の山から久保八段が勝ち上がった。
既に久保が二連勝して挑戦権を得ている。ここでは第2局ではなく第1局を振り返る。

図は▲6五歩としたところ。角道を止めない中飛車だったが、歩越銀には歩で対抗ということで▲6六歩から延ばしたものだ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩v銀v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 ・ ・ 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 
【手数=29 ▲6五歩 まで】

ここから△同銀▲6八銀△7六銀▲5五歩と進んだ。
後手木村は堂々△同銀だが、▲6八銀が久保らしい軽快な手だ。△7六銀と突っ込んでくるが▲5五歩の味が良い。振り飛車を持ちたい感じだ。
なお、▲5五歩は戸辺四段の著書「楽しく勝つ!! 力戦振り飛車」で紹介されている。

しかし、木村も知らないはずがなく、想定の局面と思われる。歩得を主張して、押さえ込むつもりで、これはこれで木村らしい。
図は△5五歩としたところ。控え室に来た戸辺四段も「これはひと目良さそうな手ですね」。森けい二八段はこの手を予想していたとのこと。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・ 歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v銀 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:久保利明八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=38 △5五歩 まで】

ここから▲7七桂△8六歩▲同歩△同飛▲4五歩△5四金▲5六歩△4五歩▲5五歩△4四金▲5四歩△5二歩▲4三歩と進んだ。
捌こうとする先手、押さえ込もうとする後手の攻防が続くが、押さえ込み網が今にも崩壊しそうだ。▲5四歩に△5二歩と卑屈に受けて何もなければ良いが、▲4三歩の手裏剣で痺れた。

久保は第26期以来、8期ぶりの棋王戦挑戦になる。第26期棋王戦の相手は羽生棋王。この時久保はタイトル戦初登場だったが羽生の前に屈した。特に第4局の羽生の妙手は印象に残っている。
今回は佐藤棋王が相手だ。羽生が絡まないタイトル戦ではあるが、興味深い顔合わせとなった。

2008-12-29

情熱大陸 extra棋士

竜王戦7番勝負の渡辺竜王と羽生四冠を追った今回の情熱大陸
第7局はそれこそ世紀の一戦となった。

思えば圧倒的な強さで3連勝した羽生がなぜ失速し、渡辺が4連勝できたのか。この考えられない事態がなぜ起きたのか。

確かに第4局はターニングポイントだった。渡辺を含む誰もが羽生の勝ちだと思ったが、打歩詰めで逃れていたなんてドラマチックすぎる。これを機に渡辺の反撃が始まった。

それにしても、あの羽生から4連勝してしまうとは。
答えにはならないが、人間同士の戦い故にこの筋書きのないドラマは起ったと考えている。

羽生も所詮人の子である。3連勝して心に隙が全くなかったかと言えばそうではないだろう。
劣勢の渡辺はもう開き直るしかない状況に追い込まれて、本来の渡辺らしい思い切りのよい将棋が指せた。
そういうことなのだと思う。

裏舞台が見れるかと思ったが、特に新しい発見はなく平凡な編集だった。
コメンテータが野村克也氏だったが、そこにも特に印象に残るコメントもなく、ドキュメンタリ番組としては平凡なものだった。
楽しみにしていたので、ちょっとがっかり。

7番勝負後の羽生へのインタビューがあったが、そこでの羽生の言葉はさすが。至高の一言だった。
「完璧は難しい。答えが出ない時があるが、そこで何をやるのか」

DVD版「情熱大陸×羽生善治・渡辺明・佐藤康光・谷川浩司」は3月に発売予定とのことだ。

2008-12-26

竜王戦直後の順位戦

- 対局者:渡辺明竜王●vs○久保利明八段
- 棋戦名:第67期B1級順位戦10回戦(Web中継(有料))
- 対局日:2008/12/22

竜王戦の興奮冷めやまぬ中、19日に一斉対局予定(さすがに前日竜王戦なのにこの日程は無理でしょう)だった渡辺竜王vs久保八段の10回戦が22日に行なわれた。
慌ただしい日程だが、一流棋士ならばこなさなければいけないだろう。

久保の中飛車に対して、渡辺が得意の穴熊を目指して▲9八香としたところ。角交換型の中飛車は穴熊にしにくいというのが定説。そこを敢えて▲9八香だ。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v銀 ・v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| 香 玉 ・ ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 
【手数=19 ▲9八香 まで】

ここから△4四角▲7七桂△5三銀▲5六歩△6四銀▲5七銀△8二玉▲7八銀△7四歩▲6六銀△9二香と進んだ。
△4四角で穴熊にはできない。▲9八香は△4四角を誘ったのかどうかは不明だ。以下美濃に変更するが、これを見て今度は後手は△9二香だ。
▲9八香はキズになる可能性があるが、果たして本局も咎められることになる。

図は5五の地点で角銀交換が行なわれたところ。先手は駒損をする代償として7四の歩をかすめ取っている。△7六歩を見れされてるが、次の一手があるので大丈夫と見ている。

後手:久保利明八段
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂v銀v金 ・ ・ ・ ・v香|一
|v香v玉v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩 ・v歩v金v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ 銀 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・v角 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 桂 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| 香 玉 銀 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:銀 歩二 
【手数=42 △5五同角 まで】

ここから▲2六飛△6四金▲8六飛△7五金▲8三銀成△9一玉と進んだ。
▲2六飛〜8六飛が狙いの手順だったが、あっさり8三の地点を破らせて△9一玉で、後手優勢。

図は△9九銀と▲9八香のキズに銀を放り込んだところ。一目▲7八玉と右辺に逃げるところだが。

後手:久保利明八段
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v玉v桂v銀 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v香 ・v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v角v歩 ・ ・|四
| ・v桂v金 ・ 銀 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 飛 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| 香 玉 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
|v銀 ・ ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:飛 角 歩二 
【手数=58 △9九銀 まで】

ここから▲7八玉△6五金▲4四銀△5六金▲3三銀不成△8六歩と進んだ。
▲7八玉以下5六の飛車と4四の角を取り合う展開となったが、△8六歩が好手だった。これで先手は困っているようだ。
渡辺明ブログによると、

正解は▲同玉で△7七桂成に▲8八銀と埋めれば大変な勝負でした。実戦は▲7八玉とよけてしまったために△6五金▲4四銀△5六金▲3三銀不成に△8六歩が決め手。

とのことだ。控え室でも▲7八玉の一手という雰囲気だったが、これが間違っているというのだから将棋は難しい。

渡辺は本局を落として4勝5敗と今期の昇級は絶望的、残留を目指して戦うこととなった。久保は6勝3敗で昇級戦線に踏みとどまった。

渡辺は羽生四冠との永世竜王対決で、多くのことを学んだはずだ。一目この一手と思える局面でもその手が正しいとは限らないのが将棋である。
おそらく羽生も二十代は一目の手を迷わず指していてそれで十分強かったのだが、純粋に局面を見つめることで大局観を進化させたのだと思う。
さらなる進化を遂げて一刻も早くB1級を通過するのは、永世竜王としての使命であろう。

2008-12-21

第21期竜王戦第7局

初代永世竜王を賭けた第7局は世紀の一戦といっても良い。渡辺竜王が5連覇で獲得するか羽生四冠が通算7期で獲得するか。羽生の場合は他のタイトルを合わせて史上初の永世七冠となる。

第3戦までは羽生が怒濤の3連勝。大局観の違いを見せつけたという印象がある。このままあっさり奪取すると思いきや第4戦からは渡辺が3連勝。第6局の後、15日に行なわれた第2回朝日杯でも両雄は対局しており、これも渡辺の完勝で、渡辺は実に対羽生戦竜王戦の3連敗後の4連勝ということになる。

さて世紀の一戦の目撃者になるべく2日目は速攻定退し帰宅した。18時過ぎに観たBS中継は77手目の局面だった。羽生優勢と判断したが、BS中継が終了する19時には渡辺優勢に思えた。形勢が二転三転する熱戦になった。

本局は振駒で羽生先手となったが、後手渡辺の作戦は第6局同様の急戦矢倉だった。手を変えたのは羽生で△5五角と5筋の歩を角で交換した時に▲7九角ではなく▲2五歩とした。これに対し△3三銀と飛車先の歩交換を拒否したが、突っ張った指し方だ。急戦矢倉なので△5四銀くらいが相場だが、渡辺も趣向で応えた。
そして戦いは思わぬところから始まった。図は▲7五歩△同歩としたところ。こうなると次の手は明白だが、普通はあり得ない場所から戦火が開かれた。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v玉v桂v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v銀v歩v歩|三
| ・v角 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 銀 ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=36 △7五同歩 まで】

ここから▲8六歩△同歩▲8二歩△7三桂▲8一歩成△5二飛▲9一とと進んだ。
▲8六歩が継続手で、こう指せば桂か香は取れる形ではある。しかし2歩損していることと、戦っている場所が悪すぎる。ということで先手の選択肢としては「ある手」ではあるが、「指し難い手」でもある。
形勢は互角だろう。個人的には陣形は乱れるものの、得した香を5九に打つ手(少し後に実現)の味が良いので先手を持ちたい。

少し進んで下図。5五の銀を▲6四銀としたところ。5九の香が素通りになった。味の良い手だ。しかし先手陣も△8七歩成を見せられて忙しい。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| と ・ ・ ・v飛 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v金 ・v歩v銀 ・v歩|三
| ・v角 ・ 銀 ・ ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩v銀 ・ ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 香 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二 
【手数=57 ▲6四銀 まで】

ここから△6二飛▲5二香成△同飛▲6三銀不成△5一飛▲2三歩△4二金と進んだ。
渡辺ブログによると、

2日目に入って、ほぼ読み筋通りに進みましたが55手目▲6三歩成〜59手目▲5二香成と踏み込まれるのを軽視していました。ここで悪くなったと感じました。
とのことだ。
飛車を追って、▲2三歩は手筋で退路の封鎖だが、△4二金とされると継続手が難しい。▲2三歩では▲5二金も有力視されていたが、あっさり△2二玉▲5一金△8七歩成とあっさり飛車を見捨てる手がある(※)。
▲2三歩に関しては、渡辺ブログでは、
羽生名人が63手目▲2三歩を長考している時間は▲2三歩と▲5二金のどちらでも悪そうなので、さすがにまずいのではないか、と思っていました。
と振り返っている。

少し進んで、冒頭の77手目の局面。ここから数手はBS中継でリアルタイムで観戦している。
6二と6三の金銀が無骨だが、飛車さえ奪ってしまえば良いという一環の流れが感じられる。一目後手優勢と思うがどうなのだろう。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| と ・ ・ 金 ・v金 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・ 銀v飛v歩v銀 歩v歩|三
| ・v角 ・ ・ 香 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 金 ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 
【手数=77 ▲5四香 まで】

ここから△6二角▲5三香成△同角▲6一飛△4一香▲5四銀成△3五角と進んだ。
△6二角▲5三香成△同角までは必然だが、ここでどう指すか。先手は飛車を奪って当初の目標をクリアしたが、後手は今まで働いていなかった角が好位置に移動した。
本譜の▲6一飛は△4一香とされて飛車による攻めにも関わらず後手玉は若干安定し、直ぐに行く手段がなくなった。
ここは、▲2二銀として△同銀▲同歩成△同玉▲2三銀(取ったら詰み)△3一玉としてからこのタイミングで▲4八飛と落ちている金を取るのが良かった(※)。
そこで▲5四銀成として6五の桂を龍で抜いて自陣の安全度を高める方向にシフトチェンジした。これに乗じた形で△3五角としていよいよお荷物の角を捌いた。

角が手駒になると桂を外す▲6五飛成は△8七角から王手飛車のラインである。本譜もそのように進んで、もうどちらが勝っているか分からなくなってきた。
下図はその△8七角に対し▲6七玉としたところ。先手変調というのは間違いなさそう。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:金 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v香v玉v桂v香|一
| と ・ ・ ・ ・v金 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v銀 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 全 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 龍 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩v角 ・ 玉 ・ ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 桂 
【手数=89 ▲6七玉 まで】

ここから△6五角成▲同金△6九飛▲5六玉△6四歩▲6六角と進んだ。
飛車を取られるとやはり△6九飛が厳しい。後手優勢か?
△6四歩は渡辺らしい筋の良い手だが、▲6六角の返し技があった。これでまた分からなくなった。
渡辺ブログでは、この辺りをこう振り返っている。

88手目△8七角と王手竜取りがかかっては逆転かと思いましたが95手目▲6六角があまりにもピッタリの手でまた逆転。ここから1分将棋で、祈るような気持ちで指していました。

ただ、BS中継観戦中▲6六角はリアルタイムで予想できたので、この局面なら第一感級の手だと思う。

この辺りでBS中継は時間切れになってしまった。両者時間も切迫しており、勝負はもはや指運次第といった模様を呈してきた。
少し進んで下図。後手は△7三金と待ち駒をして手を預けたのに対し、▲2二角△3二玉▲1一角成としたところ。
△7三金は下駄を預けた手だ。これに対し、▲1一角成はまたしても手番を後手に渡すが、こちらは勝ちに行った手と言える。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:金 銀 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v香 ・v桂 馬|一
| と ・ ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v金 ・ ・v歩v銀 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 全 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩 玉 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ 桂 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・v龍 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 香 歩二 
【手数=105 ▲1一角成 まで】

ここから△5五歩▲2四飛△6四歩▲5五玉△4四銀打▲同成銀△同銀▲同馬△6五金▲5四玉△6三銀▲4五玉△4四歩▲同角△3三桂と進んだ。
将棋は最後に間違えた方が負けるゲームである。それが▲2四飛だ。指された時は既に先手優勢の雰囲気だった検討陣からも「決め手」という声さえあった。
しかし、本譜の様に玉を追われると1一の馬は消えさらに6六の角も消されそうだ。△3三桂に▲同角成は△同桂が逆王手になるため取れない。
今度こそ形勢がはっきりした。

140手におよぶ熱戦の末、初代永世竜王は渡辺竜王の手に。歴史の一頁が刻まれた瞬間をネットを介してだが立ち会えた。

渡辺は3連敗後は開き直って戦っていた節がある。これがプラスに作用したのは間違いなさそうだ。
永世竜王まで5連覇の相手には森内九段、佐藤棋王も含まれており、羽生世代を一網打尽にした格好になっている。棋界初の大逆転劇(●●●○○○○)のおまけ付きだ。
しかしながら永世竜王がB1級ではなんともバランスが悪い。早くA級に上がって、さらには他のタイトル獲得も果たして欲しいものだ。時間の問題とは思うがなるべく早く。

一方の羽生、3連勝した時は誰がこのような結末を予想しただろう。第17世永世名人も森内九段に先を越されたが、またしても永世タイトルを先に持ってかれてしまった。
第4局といい本局といい、羽生ならば勝ちきるだろうと思われた将棋を落としているのが気になるところだ。来年早々には王将戦で王位戦で争った深浦王位との防衛戦が待っている。

文中の(※)は12/20のBS囲碁将棋ジャーナルに出演していた羽生四冠自身!の解説より。

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2008-12-14

羽生キラーが王将戦挑戦者に

- 対局者:郷田真隆九段○vs●佐藤康光棋王
- 棋戦名:第58期王将戦挑戦者決定リーグ戦第7局(Web中継)
- 対局日:2008/12/08

- 対局者:深浦康市王位○vs●丸山忠久九段
- 棋戦名:第58期王将戦挑戦者決定リーグ戦第7局(Web中継)
- 対局日:2008/12/08

王将戦のリーグ戦は混戦だった。ここまで

久保利明八段 2勝3敗
佐藤康光棋王 3勝2敗
森内俊之九段 3勝3敗
深浦康市王位 3勝2敗
高橋道雄九段 2勝3敗
郷田真隆九段 2勝3敗

という成績。
7回戦は高橋vs久保、郷田vs佐藤、深浦vs丸山というカード。佐藤と深浦が挑戦の目がある。佐藤と深浦の将棋を振り返る。

まずは郷田vs佐藤戦から。タイトル戦でも奇想天外な序盤で魅せてくれる佐藤棋王だが、この将棋も魅せてくれた。
図は▲2五歩としたところ。△3三角とすれば無難だが、もちろんそんな当たり前の手ではない。

後手:佐藤康光棋王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆九段
先手の持駒:なし
【手数=5 ▲2五歩 まで】

ここから△3二銀▲2四歩△同歩▲同飛△3三角▲2八飛△2四歩▲4八銀△2三銀▲3六歩△3二金と進んだ。
なんと△3二銀として飛車先の歩交換を許してしまった。もっとも前例がない訳ではなく佐藤のオリジナルではないらしい。
確かに本譜のように銀冠にする指し方は「あり」な気がする。

先手は4筋に焦点ありとみて右四間にした。なるほど、後手の陣形に呼応した指し方で参考になる。
この将棋、力戦となったが、やはり後手陣にどこか無理があったのか、先手郷田の制することとなった。
面白い指し方なのでメモがわり。

さて次は本題の深浦vs丸山戦。丸山九段にしては珍しく袖飛車を採用している。
図は△6五桂としたところ。後手は端を突き捨てており、もう攻め切るしかない。

後手:丸山忠久九段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v金 ・v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・v飛v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| 歩v歩 ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 香 歩 ・ 歩 角 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 玉 ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩四 
【手数=46 △6五桂 まで】

ここから▲7五銀△7三飛▲6六角△4四銀▲6八金上△6二金▲8八玉△5四歩▲7七歩と進んだ。
▲7五銀が局面を決めに行く手だ。数手前に▲7九玉と敢えて飛車筋に玉を移動しているが、これは▲7五銀を決行した時に△5七桂不成の筋を警戒したものか。
右金を引きつけ玉を8八に入城し、仕上げは▲7七歩。これで先手陣に全く憂いがなくなった。

激辛流を撃破して、深浦王位が勝利。佐藤が負けたため羽生王将への挑戦権を獲得した。
無念の降落は丸山、高橋、郷田。

深浦は王位戦で2年連続で羽生を下している。今や羽生キラー第一人者の挑戦で王将戦も目が離せない。

2008-12-12

第21期竜王戦第6局

羽生四冠が足踏みしている。永世竜王を含む永世七冠に対するプレッシャーなのか。
3連敗で土俵際に追い込まれた渡辺竜王だが、2局を返して本局を迎えた。がっぷり四つの相矢倉になるかと思ったが、渡辺としては珍しい後手急戦矢倉を採用した。

図は▲4六角に△6四銀として角交換を防いだところ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩 ・v角v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 角 ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=28 △6四銀 まで】

ここから▲7五歩△8四飛▲7四歩△同飛▲5六歩△3一玉▲2五歩と進んだ。
▲7五歩は▲4六角と覗いた時からの継続手。同歩と応じることのできない後手は△8四飛。
後手陣が飛角銀が凝り形としたところで▲5六歩。ここまでは前例があるようだ。ここで前例は△5五歩と合わせたが、渡辺はじっと△3一玉とした。▲6五歩が心配だが大丈夫と見ている。
△3一玉に関して渡辺は自身のブログで、

34手目△3一玉は新手で、誰にも言わずに温めていました。最近、後手で普通に組み合う矢倉で連敗していたので、思い切ってやってみました
と述べている。
▲6五歩に対しては△同銀▲7三角成△同桂▲6六歩が予想され、銀が逃げれば▲8三角の痛打がある。▲6六歩に銀を逃げずに△8六歩が好手難しいとのことだ。
羽生も▲6五歩の決戦策を見送って▲2五歩とした。

数手進んで下図。封じ手の▲3六歩に対して、△2七歩と叩いたところ。▲3六歩の前に指された△6二角が凝り形をほぐしつつ先手の飛車先の歩交換の逆用を見た味の良い手になっている。
▲3六歩は格調高い手で本譜の△2七歩はやってこいということだ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v角 ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v飛v銀 ・ ・v歩 角 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・v歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二 
【手数=42 △2七歩 まで】

ここから▲同飛△2六歩▲2八飛△7七飛成▲同金寄△2七銀▲2二歩△同玉▲2三歩△同玉▲2五飛△3三桂と進んだ。
△7七飛成〜△2七銀は後手の狙い筋で、両者承知の強気の応酬だ。
先手は△2七銀の瞬間に手を作らなければいけない。その手段が▲2二歩からの一連の手順だが、全て強く玉で取られて指し手に窮している。▲2五飛にも△3三桂で受け切りだ。
本譜の手順で飛車を取らせる順は後手玉が低い陣形なだけに無理筋だったようだ。図の△2七歩には悪いながらも▲3八飛とするのが、局面毎の最善手を求める羽生らしい選択だったように思う。

羽生らしくない将棋で完敗し、遂に3勝3敗となった。羽生3連勝で始まった当初を思うと全く予想外の展開だ。
3連敗後の4連勝は将棋界では前例がない。お互いにプレッシャーが最大値に達するであろう永世竜王対決は、もうどうちらが勝つが予測不能だ。

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2008-12-07

第21期竜王戦第5局

矢倉は激しい将棋である。第5局は矢倉戦に。先手渡辺竜王が細い攻めを繋いで勝ち切るか、後手羽生四冠が受け切るかという将棋となった。

図は▲1二歩と叩いたところ。
まずは後手玉の位置について記す必要があるだろう。後手玉は2一にいるが、これは仕掛けの前に2二から移動したものだ。角道から玉を反らしつつ4二の銀を3一〜2二へとし、更に玉を固める手を見せる受け重視の手だ。少し前に宮田五段の指した手とのことだ。
さて局面だが、4五の銀は行き場がなく先手は銀損が確定している。この瞬間攻めを繋げきれるかか勝負だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v玉v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ 歩|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・v歩v銀|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 銀 歩 ・ 銀 ・ 歩v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:桂 歩 
【手数=63 ▲1二歩 まで】

ここから△同玉▲3四銀△同金▲1四歩△同銀▲2六桂△2五金▲1四桂△2六桂▲6四歩と進んだ。
△同玉は少し意外だった。△2一玉との関連性に乏しく手の流れからは△同香の方が自然に感じたからだ過去を断ち切ってこの瞬間の最善手ということなら△同玉だということか。
銀損が確定した先手だが、さらに過激な手段に出た。△2六桂の飛香両取りに対し、▲6四歩! なんと飛車取りを放置した。攻めを続けられるか否かというのが最大のポイントとするならば、当然の一手なのかもしれない。

図は終盤戦。▲3四香としたところ。銀ではなく香なのは▲3四銀では△9二飛が攻防になるとのことだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 角 銀 桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ と ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v玉 ・ 銀|二
| ・ ・ ・ 全 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩 香 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v金v歩|五
|v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩v馬 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・v圭 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:金 銀 歩二 
【手数=101 ▲3四香 まで】

ここから△3三歩▲5三金△9七銀▲同桂△同歩成▲7九玉△4九飛▲6九歩△2四角▲3五歩と進んだ。
△3三歩▲5三金で後手玉は風前の灯火に見える。しかし△9七銀から王手で追って、▲7九玉の形になったので、後手は大駒を使った攻防の手がありそうだ。
△4九飛も△2四角も攻防手だが、△2四角に対する▲3五歩が好手で先手の勝ちが明らかとなった。

渡辺は2局連続で好局を勝ち切った。第6局は渡辺にとって課題の後手番だ。鬼門は続く。
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2008-11-29

第21期竜王戦第4局

追いつめられた渡辺竜王。ここまでの内容が大差なだけに、心境としてはむしろ開き直った状態だったかもしれない。
大方の予想に反して第4局は相掛りとなった。

先手羽生は早繰り銀で繰り出した銀を5六の腰掛銀の一まで戻し、更に6七に引きつけ銀矢倉に進展。後手渡辺玉は中住まいで、バランス重視の陣形だ。
先後の関係もあるが、現代将棋の申し子のように言われている渡辺が中住まいで、玉形に進展性があるのが先手の羽生陣なのが面白い。

後手陣は飽和状態なので遂に△9五歩と仕掛けたのが図。堅そうに見える先手陣だが、9筋の歩を突き合っているので端攻めは効果大だ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金 ・v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩v桂v歩 ・|三
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v歩 ・v歩|四
|v歩 ・ 歩 ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 歩 
【手数=52 △9五歩 まで】

ここから▲7四角△8八歩▲同玉△8三金▲9五歩△7四金▲同歩△同飛▲7五歩△8四飛▲6七金右△7四歩と進んだ。
▲7四角は捻った受け方だ。生角なので本譜のように取られてしまうのは覚悟の上だろう。駒損になっても先手陣は堅く7筋に築いた厚みが直接後手陣を圧迫するという判断。
▲6七金右を見て61手目の▲7五歩に対して今度は△同銀と応じたのは4筋に飛車を転回する順が4七に飛車を成る順を見せているからだ。

本譜もそのように進んで後手は龍を作ったが、先手は7三に桂馬を取りながらと金を作った。
図は▲7九歩としたところ。現代的な先受けの歩だ。この手で先手陣は飛躍的に守備力が向上したかに見えた。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角二 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ とv歩v歩 ・v桂v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・v歩|四
| 歩 ・ 銀 ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 歩 ・ ・v龍 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金 桂 歩 
【手数=85 ▲7九歩 まで】

ここから△4三玉▲3五飛△4五銀▲5六金△7七歩▲同桂△3四歩▲4五飛△同桂▲5五金△2八飛▲3六桂△7八飛成▲9七玉と進んだ。
△4三玉に▲3五飛で5五の銀取り。△4五銀の受けに▲5六金が堅陣を活かした手で羽生好調だ。永世七冠誕生近しを感じさせる局面になった。
しかしこの瞬間△7七歩が好手。△7七歩▲同桂を利かして△3四歩、▲4五飛△同桂▲5五金で金銀と飛車の二枚換えになっていよいよ先手好調かと思ったが、△2八飛が思いのほか早い手だ。△7七歩が利いている。
▲3六桂と攻めを継続するが、△7八飛成を▲同玉とは取れない。

少し前の局面まで先手優勢を通り越して勝勢と思っていたが、こうなってみるともうどちらが勝っているか分からなくなってきた。
羽生は手順を尽くして7八の龍を取り切ったが、後手玉を寄せ切ることが難しくなってきた。持将棋は点数の関係で先手負けの公算が高い。

図は△8九飛と飛車を下ろしたところ。度胸を決めた一手で、後手玉は打ち歩詰めで逃れている。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角二 桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ とv歩v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| 歩 ・ 銀 金 ・ 飛 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 桂 ・ 歩|六
| 玉 歩 桂 ・ ・ ・v玉 ・ ・|七
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|八
| 香v飛 ・ ・ ・ 銀 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金二 桂 歩 
【手数=126 △8九飛 まで】

ここから▲3八金△3六玉▲4六金△2六玉▲9八香△4九飛成と進んだ。
▲3八金はこう押さえていところだが、4五の利きが強すぎて打ち歩詰めになってしまう。△9九飛成とされるとダメなので▲9八香としたが△4九飛成と4九の銀を取られてしまった。
こうなっては後手勝ちが確定した。

最後は秒読みの中、指運の勝負という感じだったようだが、渡辺の肝のすわった手が目立った。渡辺将棋の代表局になることが約束されたと言っても良い内容の濃い将棋だった。穴熊だけでなく、本譜のようにバランス重視の将棋も強いということを証明した一局でもある。
現代将棋っぽく堅い、攻めている、更に指し手が羽生であるということから、観戦していて容易に先手良しという形勢判断をしていたが実は難しい形勢だったということだと思う。特に印象に残っているのは鉄壁だと思った▲7九歩が二枚飛車に対してあまり役に立っていなかったことだ。

今年最後のタイトル戦が12月を待たずに終わってしまうことは回避できた。野次馬としてみれば接戦になればなるほど盛り上がるとしたものだ。

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2008-11-24

倉敷藤花は女子高生

- 対局者:里見香奈女流二段○vs●清水市代倉敷藤花
- 棋戦名:第16期大山名人杯倉敷藤花戦第2局(Web中継)
- 対局日:2008/11/23

出雲のイナズマというキャッチフレーズが定着しつつある里見女流二段。強いけれどもまだまだダイヤモンドの原石という印象だ。
正直女流のレベルはさほど高くなく、一部のトップ棋士以外の将棋はほとんどアマチュアと同等のレベルであると思っている。そういう意味では清水倉敷藤花は女流の中では頭一つ抜きん出ている実力者だ。今期倉敷藤花は里見にとって試金石と言える。

第1局は里見が得意の中飛車で制している。本局も迷わず中飛車を選択した。中飛車はアマチュアレベルでは作戦勝ちし易い。しかし、清水に通用するかどうか。
図は△8九角としたところ。△8九角は第一人者という自負が選択させた手という感じがするが、当然先手は対応策を準備しているはずである。一目危険だ。

後手:清水市代倉敷藤花
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v銀 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v飛 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| 歩 ・ 桂 歩 ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香v角 ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:里見香奈女流二段
先手の持駒:角 歩二 
【手数=40 △8九角 まで】

ここから▲6八金△8八飛成▲6五桂△4二銀▲7七角△7八角成▲8八角△6八馬▲8三飛と進んだ。
▲6八金が里見用意の手で、この筋は最近の本にも載っている。展開によっては取り残されてしまう公算の高い7八の金が角(または飛)と交換できるのだから、先手満足の展開だろう。

序盤は後手の無策もあってペースを掴み、中盤以降も無難に指しこなした里見は、女流トップに対しても互角以上の将棋を指せることを示し、清水に対して2連勝で倉敷藤花を獲得した。
女流棋界に新しいヒロインの登場は、明るい話題ではある。一方気がかりもある。
清水ってこんなに弱かったけ?
本局も△8九角という無策な勝負手で不利となっているし、石橋女流王位に挑戦した第19期女流王位戦も、右四間の一辺倒で敗退している。当然巻き返してくるとは思うが、終盤頼みの将棋を修正する必要があるだろう。
女流棋界をブラッシュアップしていくには強い清水が必要だ。

2008-11-16

第21期竜王戦第3局

第3局は一手損角換りに。第49期王位戦第7局(羽生●vs○深浦)と同一局面。羽生四冠はこの重要な将棋を先手番で落としているが、今回は後手番だ。
図は渡辺竜王が▲7九玉と新手を指したところ。
王位戦の羽生はここで▲7七銀と指している。▲7七銀以下△3六歩の猛攻を受けたが、▲7九玉はこの筋に対して戦場から離れているというメリットがある。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=35 ▲7九玉 まで】

ここから△3六歩▲5六歩△3七歩成▲5五歩△2八と▲5四歩△3八と▲同金△4九飛▲6八玉と進んだ。
▲7九玉は△3六歩に対してより価値の高い手ということだったが、それでも後手は△3六歩を決行した。以下は騎虎の勢いで角銀と飛車の交換になった。
後手は銀一枚取られた上に、次に▲5三歩成を見せられている。しかし壁銀+7九玉型で最も嫌な駒を入手している。飛車である。

控え室でも、この攻め合いは銀一枚取られるので有力視されていなかったようだ。しかし、この筋が成立していることを見抜いた人物がいる。羽生は純粋に局面を読むことで、一流棋士さえも選択肢から外してしまう枝葉からこの有力筋を発見した。
後手優勢という雰囲気になった。

先手玉は形が悪すぎて、手入れが難しい。故に攻め合いに活路を見出すしかない。
そこで▲5二歩の手裏剣が下図。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:金 銀 桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ 歩 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ 馬v歩 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・vと ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ 歩v龍 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 銀二 歩 
【手数=53 ▲5二歩 まで】

ここから△4一玉▲2一銀△4二銀▲3二銀成△同玉▲2二歩△3一金▲2一金△5三銀打と進んだ。
▲2一銀では▲7五角や▲5三銀もあるが、羽生は全て受け切る自信があるようだ。
以降は無理に攻めさせて切らして勝つという、(想像するに)羽生のイメージ通りに進んだ。

これで羽生の3連勝となった。
3局を振り返ると、仕掛けの時点で羽生が優勢になっている将棋ばかりだ。
一見不利になりそうな局面が実はそうではないという、第一感を覆す見事な大局観が光っている。まさに「名人に定跡なし」だ。

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2008-11-03

村山慈明五段来たる

茂原市文化祭の一環として将棋大会が毎年11月3日に行なわれている。祭日は土日とくっついていないと休みにならないので、11月3日は必ずしも休日ではない。
そんな訳で、過去2回しか行ったことがなかったが、今年は3回目の出場となった。今回は村山慈明五段を招待するという、大判振舞(?)もあり、このことを知ったのが、足を運ぶつもりになった最大の理由だ。
聞くと村山五段は去年も一度、茂原支部に招待されており、2回目の来茂原という。2007年度勝率第1位という若手有望株の棋士を招待するとは、茂原支部もなかなかやるね。
「序盤は村山に聞け」とよく言われる。序盤に明るいということは研究熱心であるということだろう。本人にお会いしたが、若いけど落ち着いていて、ふてぶてしい(失礼)という印象は変わらなかった。芯の強そうな好青年だった。

写真は村山五段と終わり間際に来た長男との3ショット。

Img_2003

2008-11-02

第21期竜王戦第2局

羽生四冠先手で始まった第2局は▲7六歩△8四歩の出だしから矢倉に。今期竜王戦は矢倉を軸に展開しそうだ。

図は封じ手△9八歩の局面。後手が先攻しているが、後手故に攻めが細い。△9八歩は攻めの継続を決意した手だが、いかにも細い。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:香 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v角 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩v銀v金 ・v歩 ・|三
|v飛v歩 歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩|四
| ・ ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 歩 歩 歩|六
| 歩 玉 ・ 金 角 歩 桂 ・ ・|七
|v歩 ・ 金 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:桂 歩 
【手数=68 △9八歩 まで】

ここから▲2五歩△1三銀▲9八玉△6四歩▲同歩△6一香▲7六桂△8五歩▲7七金寄と進んだ。
後手は6筋から攻めの継続を図るが、△6一香に▲7六桂と自然に受けて先手不満がないように思える。
▲7七金寄も▲6八飛を見せて味が良い。先手の完封勝ちさえ予感させられる展開だが、対局者は難解と思っていた様だ。

後手の攻めを先手が受ける展開が続いて下図。上図から3手後の局面だ。

後手:渡辺明竜王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
| ・ ・ とv香v銀v金 ・v歩v銀|三
|v飛 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 銀 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 歩 桂 ・ 歩 銀 歩 ・ 歩|六
| 歩 ・ 金 ・ 角 歩 桂 ・ ・|七
| 玉 ・ 金 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩三 
【手数=81 ▲7三歩成 まで】

ここから△6五香▲6三と△7四歩▲5三とと進んだ。
△6五香は渡辺竜王が自身のブログ

「△6五香と浮いて難解だったのは読み筋ではなく、たまたま」

と述べている。少なくとも渡辺はこの局面を悲観してはいないようだ。
本譜は▲6三とから一直線に5三の銀をと金で取りに行ったが、違和感を感じる手順だった。▲6三とでは▲7四ととして、と金で厚みを形勢した方が安全に勝ち易いと思う。
確かに銀得の成果を得るが、角道が通る等の弊害もある。

羽生が攻め合いに転じたこともあってか、先手優勢の雰囲気から僅差へと評価が変わっていたが、結局先手の勝ちとなった。

おそらくまったりと受けた方が先手は勝ち易かったと思う。しかし格調高い羽生将棋はそれを許さない。羽生の将棋は局面毎に最善手を追求しているので、本譜の手順を選択したのではないだろうか。
渡辺2連敗。防衛に黄信号が灯った。

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2008-10-26

杉本昌隆流四間飛車の定跡 居飛車の右四間飛車・▲4五歩早仕掛けを粉砕

- 著者:杉本昌隆
- 出版社:創元社

2003年の本である。藤井システムの台頭で四間飛車が元気だった当時が懐かしい。というのはさておき、本書は副題の通り右四間飛車と早仕掛けにフォーカスした良書と思う。

(1) 対右四間飛車
従来の基本的な指し方をおさえている。他の対右四間飛車との差としては、腰掛け銀にしないで▲5六歩と突く形も解説していることが挙げられる。この形も受けを苦にしないなら有力だ。

(2) 対早仕掛け
△8六歩に▲同角と取る変化は小林九段のスーパー四間飛車時代に指されていたが、△1五歩の郷田新手の出現で無理筋というのが現時点の結論になっている。本書でも「この形を避けるようになった」とされている。
そこで注目された玉頭銀について解説している。玉頭銀は以前からあった指し方だが本筋から外れたいわば変化球という位置付けだったと思う。郷田新手対策というポジションで四間飛車戦法の系統だったシステムの一部として玉頭銀が蘇った。

なお、本書は盤面こそ四間飛車が先手で書かれているが、全て四間飛車が後手で解説している。杉本の棋書には外れがない。

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2008-10-21

第21期竜王戦第1局

初代永世竜王を賭けた対決だ。羽生世代とその台頭と目される渡辺世代(もっともこちらは渡辺竜王の孤軍奮闘という感じだが)という世代間の対決という見方もある。

渡辺は第51期王座戦で羽生に挑戦者として対峙している。この時は先に2勝したものの敗退したが、その一年後、竜王戦で若干20歳で森内九段から竜王位を奪取して、今に至っている。
羽生の指が勝ちになった時に震えることは有名だが、初めてこの症状(?)が現れたのは王座戦だと言う。

さて、将棋の神様が組んだとも思える、大注目の竜王戦がパリで開幕した。

本局は後手羽生の一手損角換りになった。先手渡辺の棒銀を見て後手は右玉に。これを見て2六の銀を▲3七〜4六に組み換えるという流れに。
駒組が続く展開になれば、現代将棋において当然の流れがある。そう▲9八香からの穴熊への組換えだ。ましてや先手は渡辺である。
後手は悠然とそれを許した。

図は先手が飛車先の歩を交換した瞬間に、△6五歩とした局面。△2三歩と謝るのはつまらない指し方だが、相手は穴熊である。▲2三角くらいでももたないのでは、という局面だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀v銀 ・v桂 ・ ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩 飛v歩|四
| ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 歩 
【手数=52 △6五歩 まで】

ここから▲2三角△同金▲同飛成△6六歩▲3三龍△6七歩成▲同金直△6九角▲6八金引△4七角成▲4三金△6四角と進んだ。
やはり▲2三角である。▲3三龍まで進むと先手の二枚換えでかつ龍ができている。これで先手が悪いはずがないというのが大方の第一感ではないだろうか。
先手は畳み掛けるように▲4三金とした。これに対する△6四角が好手と評判だった。

後手の駒損だが、先手も4六の銀と3七の桂が働いていない。△6四角に▲4五桂打と3七の桂を捌く順が成立すれば良いが、△同桂▲同桂の時に△4一桂があってうまくは行かないのだ。
驚いたことにここでは後手優勢の目もあると言う。

終盤は壮絶な攻め合いとなった。図は▲7五歩に△7六歩としたところ。後手は一歩も譲らない。すでに一手勝ちを見切っている雰囲気だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v銀 金 龍 ・ ・|三
|v歩 ・v銀v角v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 銀v歩v歩 ・v馬 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 金 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:桂 歩四 
【手数=76 △7六歩 まで】

ここから▲5三金△同角▲7四歩△7七歩成▲同桂△8六角▲7三歩成△同馬▲6五桂△6七銀と進んだ。
ずばっと△8六角が鋭かった。▲6五桂が詰めろだが、△6七銀が詰めろ逃れの詰めろ。

本局に限っては羽生の大局観と読みが渡辺を上回っていた。誰もが二枚換えで龍までできているので先手よし、と考えるところが羽生は違った。
相手の得意形を叩くのが羽生の凄いところだが、本局では渡辺得意の穴熊に組換える手法を叩いた。
羽生強しという印象だけが残った第1局だが、竜王位を4年連続キープしている男がこれで引き下がるはずはあるまい。

竜王戦中継plusでは、第79期棋聖戦第1局同様、サバティカル休暇中の梅田望夫氏(My Life Between Silicon Valley and Japan)がWeb観戦記を執筆している。一気通貫はこちら。必見です。
特に「(12) 佐藤康光棋王、現代将棋を語る」の現代将棋というキーワードで本局の一面を考察しているのは興味深い。

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2008-10-19

決断力

- 著者:羽生善治
- 出版社:角川ONEテーマ21
- 出版日:2005/07/10

第21期竜王戦開幕を記念して、挑戦者羽生四冠の名著を紹介。

「決断力」それは将棋において最も必要な力かもしれない。相応しいタイトルと言える。

羽生は言わずと知れた棋界の第一人者だ。羽生の文章(言葉)は分かり易く説得力がある。例えが平素で的を射ているのでそう感じるのだろう。
3年前に読んだが、「才能とは、同じ情熱、気力、モチベーッションを持続することである」という一言が最も印象に残っている。
プロフェッショナルでの「24時間365日プロであり続けること」にも繋がるものがある。

頭脳勝負—将棋の世界

- 著者:渡辺明
- 出版社:ちくま新書
- 出版日:2007/11/10

第21期竜王戦開幕を記念して、渡辺竜王の名著を紹介。

羽生世代の次代を担う世代代表というべき渡辺が新書に挑戦。
ターゲット層は将棋通ではない。むしろ将棋を知らない人へ向けてメッセージを発信しようとしている。

プロ棋士って?
どうやって生活しているの?
将棋って難しいんでしょ?

という人に将棋を知ってもらう、という難題への挑戦だ。
という訳で、あれもこれもという内容になっている。発散している感もあるが、意欲は十分伝わってくる。
このような切り口の書物はこれまでになく、本書を執筆した渡辺には、第一人者としての、ある種の使命感を感じる。

2008-10-05

羽生の七冠遠のく

10月2日、羽生四冠は34期棋王戦挑戦者決定トーナメントの3回戦で久保八段に破れた。
これで事実上来年中に七冠になる可能性はなくなった。

ベスト8の顔ぶれは以下となった。棋王戦はベスト4まで行くと、敗者復活戦システムがある。
振り飛車党の旗色が悪いが、羽生に勝った久保には是非挑戦者になって欲しい。

阿部八段
渡辺竜王

鈴木八段
木村八段

深浦王位
橋本七段

阿久津六段
久保八段

2008-10-02

第56期王座戦第3局

第3局は相矢倉に。図までは先の竜王戦挑決戦第1局(羽生○vs●木村)と同様の進行になった。角番となった木村八段は臆せず、敗戦の手順を踏襲している。
挑決戦の羽生王座はここで▲3三歩成だった。

後手:木村一基八段
後手の持駒:桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金v歩v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 歩v銀 ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・v桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩 
【手数=58 △3三歩 まで】

ここから▲2五歩△同銀▲1三歩△同香▲3五銀△1六歩▲4六角△同角▲同歩△2七角▲6八飛△5三銀と進んだ。
勝った方が手を変えるのはよくあることだが、本局も手を変えたのは羽生だった。しかしまだ前例があるようで、△1六歩で前例から離れたようだ。
△1六歩は「攻めて来い」という手で、木村らしい。△5三銀もらしい手で、受け切りを目指している。


以降、羽生の攻め、木村の受けという形で進行した。先手陣は穴熊で、後手陣はすぐにでも寄ってしまいそうだが、のらりくらりと先手の攻めを躱す。
図はようやく先手の攻めが一段落したところ。▲7二角は直接的な狙いがなく、手を渡したという感じだ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 桂二 香 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
|v香 ・ 角 ・ ・v歩 ・v銀 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v玉v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v香 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 馬 ・v全 ・ ・|七
| 香 ・ 金 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:銀 
【手数=117 ▲7二角 まで】

ここから△9五桂▲8八銀打△8七桂不成▲同銀△8六香▲2五桂△3二玉▲8八銀△8七香成▲同金△9五桂と進んだ。
一目の△9五桂が指された。▲8八銀打で手駒がなくなったが、穴熊を攻めるには駒を渡さなければならない。ここで攻めさせて桂香の小駒を入手するのが、先手の狙いだった気がしてならない。

図は△2四角と攻防の角を放ったところ。先手は最も欲しい駒を持っている。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 銀 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
|v香 ・ ・ ・ ・v歩v玉v銀 ・|二
| ・ ・ ・ 馬 ・v金 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v香v角 ・|四
|v桂v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 金 金 ・ ・v龍 ・ ・ ・|七
| 香 銀 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:銀 香 歩 
【手数=134 △2四角 まで】

ここから▲4八香△6八角成▲4七香△4九飛▲4三香成△同玉▲5二銀△4四玉▲5四馬と進んだ。
▲4八香は厳しい手だ。穴熊を攻めさせて入手した香だ。▲5四馬でようやく先手優勢がはっきりした感じだ。

この後30手以上粘るものの、171手で遂に木村投了となった。
木村は持ち味を出したものの、残念な結果になった。

本局は117手目の▲7二角が最も印象に残った。絶妙の間合いだったと思う。

王座戦17連覇。羽生が強いのは周知だが、王座戦の強さは格別で、特に第53期から4期連続の3タテ防衛となった。

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2008-09-27

第49期王位戦第7局

振駒で先手を握ったのは羽生四冠。運は羽生に見方したのか。
後手深浦王位の一手損角換りという将棋となった。図は△7七桂としたところ。ここまでは前例ありで、近いところでは、24日のA級順位戦木村vs佐藤(千日手)もこの形だった。
ここで木村八段は▲7七角だったが。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=34 △3三桂 まで】

ここから▲7七銀△3六歩▲5六歩△3七角成▲同桂△同歩成▲2六飛△4七と▲7九玉と進んだ。
▲7七銀は新手ということになる。確かに▲7七銀でよければ角を手持ちに進めることができる。△3六歩は勢いというものか。
角桂交換の駒損でも4七のと金も大きいと見ている。とはいうものの▲7九玉の早逃げでと金の存在価値が大きく下がった。やはり無理筋という印象が強い。

しかし、△8六歩▲同歩△8七歩と挟撃の攻めがあって、先手玉も気持ち悪い形だ。後手玉は手掛かりがない。先手優勢と思っていたがそうでもなさそうだ。

図は5筋の歩を切って△5二歩を起点として先手が攻めに転じている局面。▲3五桂に強く△3四金とされて、さて先手はどうするか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:銀 香 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ 歩v玉 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・v金 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂v歩 ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 金 桂 歩 ・vと ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
|v銀 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角二 銀 歩二 
【手数=66 △3四金 まで】

ここから▲2三桂不成△5二金▲3一角△3二玉▲3五歩△同金▲2二角打△2六香と進んだ。
▲2三桂不成はひねり出した感じの手だ。▲3一角から▲2二角打も継続手だが、角がだぶっている。羽生の寄せは異筋と思える手順が多々ある。本譜もその類いだろうか。

少し進んで下図。雰囲気は先手の異筋攻めが成立していそうで、やはり先手が押し切るかという印象だった。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:飛 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ 角 銀 ・|一
| ・v飛 ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v金v歩v歩 馬 桂v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 桂 ・ ・ ・v金v歩 ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 金 桂 歩 ・vと ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・v杏 ・|八
|v銀 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:香 歩 
【手数=82 △5二玉 まで】

ここから▲8五桂△5七と▲同玉△7八飛と進んだ。
▲8五桂は9九の銀取りでもあり、控え室では決め手との声もあった様だ。しかし△5七と▲同玉△7八飛と進んでみると、先手玉はほとんど受けなしだ。
以下▲4二角成から王手を続けるものの、9四まで逃げ切って後手の勝ちとなった。

これで七冠ロードはひとまずおあずけ。星ふたつ以上差の角番を跳ね返すのはいかに羽生と言えども容易なことではないということか。この辺りは9x9=81の「羽生のがけっプチ」シリーズに詳しい。
しかし思い起こせばあの時も七冠目を賭けた王将戦で谷川王将に破れたものの翌年再挑戦しての偉業達成だった。ロードが断たれてしまった感じではない。羽生としては目の前の目標に対して各個撃退するのみだろう。

深浦は王位初防衛。奪取も防衛も羽生とのフルセットにおよぶ死闘で、価値ある防衛だ。
これで朝日杯(これもカウントされるのね)と合わせてタイトル3期となり、九段昇段が決まった。

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2008-09-20

第56期王座戦第2局

「相手の得意形を叩く」
羽生将棋の強さはよくこのように表現される。オールラウンドタイプの羽生四冠が、どのような戦型でも普通に勝ってしまうので、結果としてこのような印象になっているだけかも知れない。
木村八段と言えば「千駄ヶ谷の受け師」と呼ばれるように、柔らかい受けが特徴だ。
矢倉となった本局は後手羽生の強行を先手木村が受ける展開となった。戦型ではないが、木村の受けに攻め勝ちを目指している。

そんな雰囲気が醸し出されたのが下図。後手は6五の桂を取られてた代償に8六歩を取込んでいる。更に角取りを放置したのが△4五歩だ。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v角v歩 ・v歩v銀v歩|四
| ・ ・ ・ 銀 ・v歩 ・ 桂 ・|五
| 歩v歩 歩 ・ 歩 銀 歩 歩 歩|六
| ・ ・ 金 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 ・ 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 歩 
【手数=58 △4五歩 まで】

ここから▲6四銀△同歩▲5七銀△8七銀▲7九玉△2五銀▲8五歩と進んだ。
後手が遮二無二攻めている感じだ。▲8五歩が大駒を近づけて受ける手筋。いかにも木村ペースの将棋ではないか。

そうは言うものの、後手陣は堅陣で、攻めているのは羽生である。後手の無理攻めに見えた仕掛けだが、その手は緩まない。
図は△7五金として更なる攻めの継続をはかったところ。▲1三銀の筋があるが、これは怖くないと見ているということは、後手の勝ちになっているのか。
疑心暗鬼にさせる金だ。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v金v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・v金 ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 角 金 ・ 歩 ・ ・ 歩 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|七
| ・ 歩 玉 銀 ・ ・v全 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 銀 桂 
【手数=80 △7五金 まで】

ここから▲1三銀△同玉▲1一飛成△1二銀▲7五角△同歩▲7七金△7六桂▲7九銀△4六角▲1五歩△7九角成と進んだ。
先手は銀を放り込んで攻めに転じたが、▲7五角△同歩に▲7七金と手を戻した。
手番を握った後手。端玉には端歩の▲1五歩にズバッと△7九角成。怒濤の攻めで、はやり後手の攻めは切れていなかったのか、という雰囲気は更に濃厚になってきた。

後は羽生の華麗な収束を見るばかりなのか。強すぎる。この将棋を攻めきってしまうなんて。
図は後手必勝か。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:金 銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 龍|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v金 ・v銀|二
| ・ ・ ・ ・ ・v金v桂v歩v玉|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ 歩|五
| 歩 ・v歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|六
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|七
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・v全 ・ 香|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角二 金 桂二 香 
【手数=96 △7六同歩 まで】

ここから▲6八角△5七銀▲8六角△6八金▲同角△8八歩成と進んで、以下後手の勝ちに。
木村は最後のお願いとばかりに角を打ったが、ここでは▲3一角!の鬼手があって先手勝ちだったらしい。
控え室の谷川九段が発見したようだ。図が後手必勝、というのは否だったのである。

両対局者が気付かない好手というのはよくある話だが、羽生がバシバシ攻めてくると、まさか羽生も見逃している手があるとは露程も思わない心理状況になってしまうのは想像がつく。羽生ブランドの成せる業か。
木村にとっては、自分らしい将棋が指せていただけに残念な一局となった。
相手の得意形を、心理ダメージがより多く残る形で勝ってしまうことに羽生のとてつもない強さを感じた。

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2008-09-13

永世竜王を賭けた対決に

- 対局者:木村八段●vs○羽生四冠
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント挑戦者決定戦第3局(Web中継)
- 対局日:2008/09/12

王位戦も踏ん張った羽生四冠だが、負けられない戦いの道はまだ半ばだ。
注目の竜王戦挑決戦第3局は、後手羽生が自ら角交換して向飛車に。しかし9手目▲7七角に△3三角と合わせて、さらに△4四歩としたことで、旧型の向い飛車になった。
そして長い序盤戦が始まった。

先手木村八段は銀冠から居飛穴に、後手も美濃から銀冠そして今△9二香としたところ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
|v香v玉v金 ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v歩v歩 ・v銀v桂v歩v歩|三
|v歩v歩 ・v角v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 角 歩 歩 銀 ・ ・ 歩|七
| 香 金 ・ 金 ・ ・ ・ 飛 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:なし
【手数=44 △9二香 まで】

ここから▲7八金右△9一玉▲5六歩△6二金左▲5八飛△5一飛▲3八飛△8二金▲3五歩と進んだ。
相穴熊。お互い駒組でポイントを稼いで、彼我の布陣の優劣から仕掛けのタイミングをはかる将棋となった。
こうなるとどうしても居飛車の方が飛車先が伸びているだけ得、と言うのが定説で、後手は先手に仕掛けさせないことを優先せざるを得ない。
しかし遂に先手が3筋の歩交換に成功したのが▲3五歩だ。
すなわち先手がポイントを稼いだことになる。後手は良くて千日手、という感じだ。

図は85手目の局面。今だ駒組み進行中。
先手は4七の銀を6七に移動することに成功しており、これもポイントアップだ。ただし、仕掛けのタイミングは依然難しい。
後手は玉頭を盛り上がって局面の均衡を保とうとするが穴熊相手に効果は薄い。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v玉v桂 ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
|v香v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v金 ・ ・v角v銀v桂v歩 ・|三
|v歩v歩v銀 ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 銀 ・ 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|七
| 香 金 金 角 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩二 
【手数=85 ▲6八角 まで】

後手の指し手は△7三桂!
俗にパンツを脱ぐと比喩されている桂跳ねだ。勝負手か。

109手目、長い序盤戦が終わろうとしている。
仕掛けの間合いをはかっていた先手だが、遂に仕掛けたのが下図。△4六角は▲3一歩成で攻めが続くということか。


後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
|v香v金 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|二
| ・v金v桂 ・ ・v銀v桂v歩 ・|三
|v歩v歩v銀v角v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・v歩 歩 ・ ・v歩 歩 ・|五
| 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 銀 角 銀 ・ ・ ・ 飛 香|七
| 香 金 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:歩 
【手数=109 ▲6五歩 まで】

ここから△4六角▲3一歩成△同飛▲2四歩△6五桂▲6六角△4五桂▲4七歩△6四角▲2三歩成△5七桂左成と進んだ。

先手が果敢に仕掛けてはみたが、ものの数手で後手優勢になってしまった。パンツの桂が6五に跳ね3三の桂も跳躍。後手は先手の仕掛けに素直に応じただけだ。
▲4七歩に4六の角を成らずに△6四角としたのは3一の飛車に紐を付けた手で、後ほどその意味が分かる。

図は▲2二飛成としたところ。飛車取りだが6四角の紐付きだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v香|一
|v香v金 ・ ・ ・ ・ ・ 龍 ・|二
| ・v金 ・ ・ ・v銀 と ・ ・|三
|v歩v歩v銀v角v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v桂 ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 歩v歩 角 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 銀v銀 歩 ・ 歩 ・ ・ 香|七
| 香 金 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:桂 
【手数=127 ▲2二飛成 まで】

ここから△8八銀不成▲同金△7七金▲9七銀△8七金▲同金△7七歩成と進んだ。
あれほど堅かった先手穴熊があっという間に崩壊だ。
食いついてしまえば大駒はいらない。▲3一龍△同角▲5一飛なら△8一飛で角を取らせても良いというのが穴熊の指し方だ。

図は▲3一龍と王手で飛車を取ったところ。今は6四に角がないのでただでしかも王手の先手だ。
しかしここでは後手勝勢。8一に埋めるのは角か金か。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 金 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・ 龍 ・v香|一
|v香v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v金 ・ ・ ・v銀 と ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 歩 金 歩 歩v角 ・ ・ 歩|六
| 銀 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 香|七
| 香 玉 ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ 桂 ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:飛 桂二 歩五 
【手数=167 ▲3一龍 まで】

ここから△8一角▲7五金△7七金▲9九玉△7九銀成▲8七銀△6四角と進んだ。
ここでは合駒は角が正解。△7九銀成は△8七桂の詰めろなので、▲8七銀は涙の出る手だが、△6四角があまりかっこいい決め手となった。取れば△7五桂がある。

木村にしれみれば、優勢に進めていた将棋を仕掛けのミスで不利となり、△6四角のような華麗ではあるが難くはない手で仕上げられた本局の心理的ダメージは大きそうだ。
羽生は裏街道もなんのその、ものの見事に挑戦権を獲得、永世竜王対決実現の運びとなった。

2008-09-11

第49期王位戦第6局

角番の羽生四冠にとって、何はともあれ後手番の本局をブレイクしなければいけない。
▲7八金△3二金の形から羽生が△4四歩と角道を止めて、変則的な居飛車戦となった。一目散に銀冠を目指す作戦だが、先手も呼応して矢倉に組んで、玉を囲い合う将棋となった。

図は後手が5筋から動いて△5五飛と走ったところ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩 ・v金 ・v銀 ・|三
|v歩 ・v歩v銀 ・v歩v歩v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩二 
【手数=50 △5五飛 まで】

ここから▲5九銀△5二飛▲6七金右△7三桂▲5八飛△5五歩▲4六角△2二玉▲9八香と進んだ。
王位戦の中継は解説がないが、局後の感想では両雄ともこの辺りを振り返っているが、互いに違うニュアンスなのが面白い。

- 羽生「5筋から攻めましたが、5五歩(五十六手目)と打つのでは、成果が出ませんでした。玉頭にキズが残っているので、少し悪いと思いながら指していました。勝ちになったと思ったのは6五銀(百四十二手目)のところです」
- 深浦「飛車をぶつけ、5五歩(五十六手目)と打たせて一段落ですが、5九銀(五十一手目)と引く指し方はよくなかったようです。穴熊も薄いので自信はありませんでした。終盤は何かありそうでしたが、分かりませんでした」

△5五歩と打たせたのは先手の得で一致してるようだが、形勢は互いに自信がないととらえている。
▲5九銀は飛車をぶつけるところまでは気持ち良いが、このままでは不安定なのでどこかで▲6八銀としなければいけない。穴熊への組み換えも常套手段だが、あまり堅くはなりそうもない。確かに互いに指し難い局面なのかも知れない。

5五の地点で飛車交換が行われて下図。▲5五同角と飛車を取ったのが77手目だ。
△7六銀とすり込まれて堅くない穴熊は安閑としていられない局面だ。▲4一飛と反撃した。次の一手はよくある手だが、5五の角に注目。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 飛 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・ ・v歩v歩v銀v歩|四
| ・v桂v歩 ・ 角 ・ ・v歩 ・|五
| 歩 銀v銀 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| 香 金 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩 
【手数=79 ▲4一飛 まで】

ここから△3一飛▲同飛成△同金▲7六金△同歩▲7二飛△6九飛▲5二銀△3三金▲5一銀不成△5二歩▲同飛成△4一金打と進んだ。
後手は先手の攻めを丁寧に受ける。この後角は5一の銀に取られるが、△5二歩の効果で△4一金打が龍取りの先手になっており、先手は▲6三龍と逃げることになる。
先手の5五の角は一歩も動いていない。▲9一角成と香車を取る手が出て来るが、実に103手目だ。

下図は△5五角としたところ。ここでは既に後手が良いと思うが、後手の5五の角はどうだろう。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|三
|v歩v歩 ・ ・ ・v歩v歩v玉v歩|四
| ・v桂 ・ ・v角 ・v桂 ・ ・|五
| 歩 銀v歩 ・ ・ ・ 歩v銀 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ ・v杏 ・ ・ ・|七
| 香 玉 銀 龍 ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:飛 角 金 歩 
【手数=126 △5五角 まで】

ここから▲6六角△1九角成▲8四角△5五馬と進んだ。

角で香車を拾うのは、手渡しの場合が多いが、後手は直ぐに△1九角成と香車を取った。
▲8四角に△5五馬とした局面は、▲8四角があまり一手の価値がないので0手で香車を取って馬となって戻ってきた感じだ。

互いの5五角の振る舞いの差が、本局を象徴しているように思う。
羽生の快勝で、前期に続いて、今期も最終局にもつれ込むこととなった。

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2008-09-07

第56期王座戦第1局

竜王戦挑戦者決定戦でも番勝負中の両雄。羽生四冠の七冠再びの機運が高まっているが、逆の見方をすれば木村八段が一気に二冠を手にする機会であるとも言える。
それにしても王座戦の羽生の強さと言ったら、半端ではない。現在16連覇中もさることながらあっさり3連勝で決めるケースも多い。佐藤棋王でさえ、第50期、53期、54期に3タテで、王座戦に限れば対羽生戦9連敗というから驚く。
それだけに木村にしれみれば第1局は重要だ。

その第1局は、(結果として一手損)角換り腰掛け銀に。羽生の先手ということもあるが、予想通り羽生の攻め、木村の受けという展開になった。
図は△6一角としたところ。このまま先手の攻めが炸裂して終局という可能性もある局面だ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ 角 ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v銀v歩 飛 歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩 
【手数=53 ▲6一角 まで】

ここから△4二玉▲3二飛成△同銀▲7二金△9二飛▲2三歩成△同銀▲2二歩△1三桂と進んだ。
△4二玉は顔面受けだ。先手は予定通り▲3二飛成と飛車を切って攻撃の継続をはかる。
▲2二歩に対する△1三桂が地味だけど凄い手だ。▲2二歩の瞬間に攻めに転じるのが呼吸というものだが、木村は丁寧に△1三桂と相手をして受け切りと見ている。

実際、受け切っているようで、控え室も後手持ちの雰囲気だった。
図は▲6八銀と7七の銀を引いて△7八角成りを防いだところ。後手に手番が回ってきた。

後手:木村一基八段
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・v香|一
|v飛 ・ 金 ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・ とv桂|三
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・ ・v銀v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 銀 ・ ・ ・v飛 ・|八
| 香 桂 ・v角 ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩 
【手数=71 ▲6八銀 まで】

ここから△7八角成▲同玉△8八金▲6七玉△6五歩▲4四角△6二金▲3四角成と進んだ。

それでも後手は△7八角成。ここが決め所という判断だったのだろう。送りの手筋△8八金には▲6七玉の一手。ここで△6五歩が厳しく後手優勢と思われた。
しかしそこで▲4四角が攻防の一手で、この手を境に控え室でも後手優勢の声が出始めた。
△6二金も狙い筋だが、金を見捨てて▲3四角成とするのが冷静だ。

大事な緒戦を制したのは羽生だった。
木村は受け切って反撃して勝利するという、理想的なパターンに入りつつあっただけに残念な結果となった。

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2008-09-05

木村八段耐える

- 対局者:木村八段○vs●羽生四冠
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント挑戦者決定戦第2局(Web中継)
- 対局日:2008/09/03

本局も木村八段の受け羽生四冠の攻めという展開となった。羽生の一手損角換りで前例のある戦いとなった。
図の40手目△1四歩で前例のない将棋となった。この忙しい時にこの端歩が正解だとは思えないが、意味深長な手だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 銀 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=40 △1四歩 まで】

ここから▲3六歩△4五桂▲3四銀△8六歩▲同歩△6六歩▲同歩△5七桂成▲同玉△5六銀打と進んだ。
▲3六歩桂頭を咎める強い手ではある。△4五桂は受けきれると見ている。
△1四歩では単に△4五桂もあるが、本譜の▲3六歩との交換は後手が得した様だ。してみると▲3六歩では▲7九玉もあったか。

その理由は以下の手順に現れる。
下図は▲2三銀成に△6九角と打った局面。この2手は互いの棋風をよく表していると思う。最強の受けと最強の攻めという感じだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・ 全 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 歩v銀 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 銀 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金v歩 玉 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・v角 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:角 桂 歩四 
【手数=54 △6九角 まで】

ここから▲6八玉△4七角成▲2四角△6二玉▲3二成銀△2三歩と進んだ。
後手の狙い筋通り、先手は王手飛車を避けることはできない。これが▲3六歩が損な理由だ。しかし、飛車を取られても後手陣が居玉なので、後手必勝になった訳ではなさそうだ。
王手飛車は掛けた方が悪いと言う。プロが王手飛車を見落とすはずもなく、木村も承知だろう。

下図はクライマックス。いよいよ木村玉がピンチである。次の一手は△9五桂が予想されていた。▲9六玉の一手に△7三玉が攻防の決め手とのことだ。確かに難しい手順ではない。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ 龍|一
| ・ 金 ・v玉 ・ 全 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 玉 銀v銀 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 金 ・ 金 ・ 歩 ・v馬 ・|八
| 香v龍 ・ ・ ・v圭 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:香 歩四 
【手数=89 ▲8八金 まで】

ここから△6八銀不成▲6一龍△5三玉▲5二龍△4四玉▲4三龍△3五玉▲3六歩△2六玉▲2七歩△同馬▲8九金と進んだ。
王手で▲6一龍と金を取られて逆転である。

最近では珍しい羽生の着地点での逆転だ。しかし疑問手はこの△6八銀不成くらいで、迫力ある攻めだった。木村も受け師らしい応手で、中盤以降の攻防は見応え十分な将棋だった。

両雄は5日(って今日じゃん)に王座戦の舞台でも相見える。

2008-08-31

羽生四冠の完勝譜に挑む木村八段

- 対局者:羽生四冠○vs●木村八段
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント挑戦者決定戦第1局(Web中継)
- 対局日:2008/08/28

第21期竜王戦決勝トーナメントも大詰め。木村八段の二年連続挑戦になるか、羽生四冠が挑戦権を得て永世名人対決が実現するのか。大きな意味を持つ三番勝負が始まった。
木村は王座戦でも挑戦権を得ており、羽生の七冠ロードに立ちはだかる第2の刺客といったところか。

羽生先手で始まった、挑戦者決定戦第1局は相矢倉。つい先日の王位戦第5局と同じ仕掛けだ。羽生にしてみれは当然自信のあるところだろう。深浦王位に完勝した仕掛けに対し、木村はどのような対策を講じるのかが、最初の見所だ。
木村は56手目で手を変えた。王位戦は△3五同歩だったが、△2五桂。木村はこの手を経験済みとのことだ。

後手:木村一基八段
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩v銀 ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ 歩v桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=56 △2五桂 まで】

ここから▲3四歩△3三歩▲同歩成△同銀上▲1四歩△同香▲2五歩△同銀▲5五歩△同歩▲5八飛△8六歩▲同銀△3五歩▲2八飛△2四銀と進んだ。
木村らしく受け切りを狙っている。途中△3五歩は分かりにくい手だ。△2四銀まで進むとにわかに攻めるのは難しいとう気がしてきた。

少し進んで下図。後手だけ桂馬を持っているが、▲1七桂は図の少し前に打った桂馬。後手陣の網の目をこじ開けるための手始めの軽手があった。

後手:木村一基八段
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金v玉 ・ ・|三
|v歩 ・v歩 ・v金v歩 ・v歩v香|四
| ・ ・ ・ 歩 ・v銀v歩 ・v歩|五
| ・ 銀 歩 ・ ・ ・ ・ 飛v銀|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ 桂|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 歩三 
【手数=90 △3三玉 まで】

ここから▲6四歩△同角▲3五角△3二桂▲3四歩△同玉▲6八角△3五歩▲6六飛と進んだ。
▲6四歩が飛角交換を半ば強要するきっかけの突き捨て。▲6六飛まで進んでみると、飛角交換は避けられないことが分かる。角を持てば後手陣を攻め易い。受け切りが難しくなってきた。

先手優勢で進んだが、ちょっと面白くなったかと思ったのが下図。▲6八歩としておけば鉄壁の局面。

後手:木村一基八段
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ 馬 ・ ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・v金v桂 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|三
|v歩 ・v歩v歩v金v歩v銀v歩 全|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|五
| ・ 銀 歩 ・ ・ 歩 ・ ・v銀|六
| 歩 歩 角 金 ・ ・ ・ ・ 桂|七
| 香 ・ 金 ・vとv飛 ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:香 歩二 
【手数=122 △5四同金 まで】

▲5六香△5七と▲5四香△同玉▲5七金△7八飛成▲8八金と進んだ。
▲5六香は強い手で△7八飛成が実現したところでは、後手が盛り返したのではないかと思った。

しかしこれはおりこみ済みだったか。少し進んで下図。3一の馬取りになっており対処しなければいけない。ちょっと思いつかない手が放たれる。

後手:木村一基八段
後手の持駒:金 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ 馬 ・ ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|三
|v歩 ・v歩v歩v玉v歩v銀v歩 全|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|五
| ・ 銀 歩 ・ ・ 歩 ・ ・v銀|六
| 歩 歩 角 ・ 金 ・ ・ ・ 桂|七
| 香 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・v龍 ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=134 △3二同金 まで】

ここから▲6六桂△6三玉▲4一馬△7三玉▲7四馬△7二玉▲4七馬△7九龍▲7四桂と進んだ。
▲6六桂は7七の角道を止めてしまうので、凡人には思いつかない手だ。しかしこの桂馬は3一の馬を有効利用するための好手。▲4一馬〜7四馬〜4七馬は華麗な馬の舞だ。
さらに▲7四桂として▲7七角の角道が再び開いた。

この一連の手順で先手優勢は拡大した。
木村は玉を9筋(駒柱出現)にまで逃げて191手まで粘ったが及ばなかった。

羽生は竜王挑戦まであと1勝となった。こうして王座戦の前哨戦ともいえる戦いは終局した。

---
週刊将棋誌によると、△6九龍の位置が悪いとのこと。△6九龍は130手目▲8八金と弾かれた時の逃げ場所だが、△4八龍としておけば、後手優勢とのことだ。7八の金を取らせる本譜の指し方は危険だった。
[8/31 追記]

2008-08-29

第49期王位戦第5局

▲7六歩△2六歩▲6八銀に△3四歩。先手羽生四冠の矢倉指向に後手深浦王位が追従して第5局は矢倉になった。
一度矢倉と決まったら、一日目はすらすら進み、60手目を深浦が封じた。57手目までは前例のある将棋だという。
図が封じ手の△4五歩。先手玉は穴熊で羽生の本気モードを感じる。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・ 歩 ・ ・v銀 ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・v歩 ・ 桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀v歩 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=60 △4五歩 まで】
ここから▲3三桂成△同銀上▲4五銀△8六歩▲同歩△3七歩成▲5八飛△4四歩▲5三歩成△4五歩▲4三と△同金▲2四角と進んだ。
後手の狙いは△3七歩成で作ったと金の活用だ。この手に期待して本譜を選んだと思われる。
しかし、幸便に▲5八飛と回られてしまった。△4四歩は変調で、矢倉の金と攻めの銀の交換は明らかに先手得だろう。

結局3七のと金は3七から動くことはなかった。
羽生は完勝で角番を凌いだ。

ちょっと大差になってしまったが、受けて立った後手番の矢倉戦ということで、深浦の痛手はなさそうだ。
羽生は依然角番だが、負けられない戦いが続く。七冠はまだ遥かに遠い。

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2008-08-21

丸山九段の腰掛銀を迎え撃つ

- 対局者:丸山九段●vs○羽生四冠
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント(Web中継)
- 対局日:2008/08/19

竜王戦決勝トーナメント、羽生四冠の次の相手は丸山九段。本局は角換り腰掛銀となった。丸山はこの戦法のスペシャリストとして名高い。敢えて相手の得意形で戦うのは羽生将棋の魅力の一つだ。

図は▲4三歩成としたところ。この局面は第63期名人戦第3局(羽生四冠●vs○森内名人)と同じだ。
森内名人はここで△4三同歩と応じ、以下▲6四飛△同金▲5三角△2一玉▲6四角成△1一玉▲4一銀と進んでいる。この▲4一銀で先手良しという雰囲気だった(結果は後手勝ち)。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ 角|一
| ・v飛 ・ ・ ・v歩v金v桂v香|二
| ・ ・v桂v金 ・ と ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v馬v歩 ・ 歩v銀 ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v桂v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久九段
先手の持駒:銀 歩二 
【手数=85 ▲4三歩成 まで】

ここから△同金▲4四歩△3四金▲4三歩成△同歩▲6四飛△同金▲5三角△2一玉▲6四角成△1一玉と進んだ。
羽生はここで手を変えた。形にとらわれない羽生らしい手か。先の名人戦と似たような展開になっており、どちらも後手が辛そうな気がする。
と言うのは後手陣は堅くならないし、上部への脱出も難しそうで、一度手がつくと簡単に寄せ形になってしまいそうだからだ。

しかし、ここからの攻防に見せ場が何回も登場する。

図は▲3六龍と龍を3八から引いたところ。先手の駒損だが、玉の安全度の差で先手優勢だろう。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:角 香 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ 馬 銀v歩 ・v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩v桂v香|二
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v飛v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・v金v銀 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v桂v歩|五
| 歩 ・ 銀 ・ ・ ・v龍 ・ ・|六
| 玉 歩 桂 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 歩 ・ ・ ・ ・ ・|八
|v金 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久九段
先手の持駒:金 銀 桂 
【手数=120 △3六龍 まで】

ここから▲5六歩△6四角▲7五桂△5六龍▲6五銀打△9五歩▲同歩△7五角▲9六玉△3六龍▲5六歩△5七角成と進んだ。
厳しく攻め続ける後手だが、△5七角成し遂に手番が先手にまわった。

そしていよいよ大詰めの下図。▲3一歩成で後手絶体絶命だ。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:角 桂 香 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 銀 と ・v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|二
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v金v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v銀 ・|四
| 歩v歩 ・ 銀 ・ ・ ・v桂v歩|五
| 玉 ・ 銀 ・ 歩 ・v龍 ・ ・|六
| ・ 歩 桂 ・v馬 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 歩 ・ ・ ・ ・ ・|八
|v金 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久九段
先手の持駒:飛 金 歩 
【手数=135 ▲3一歩成 まで】

以下△2一香▲6一飛△7三角▲9七玉△9六歩▲8八玉△5一桂までで後手の勝ち。
△2一香は唯一の受けだが、▲6一飛がまた詰めろ。△7三角は空き王手の時に△5一桂の合駒を可能とするとともに△9五香以下の詰めろを見ている。
ここで▲8三金なら羽生は投了するしかなかっただろう。▲8三金は激辛流の一手で丸山好みの一手だが、先手は▲9七玉。終盤、しかも着地段階での大逆転である。

羽生は先の対深浦戦に引き続き、終盤相手のミスで逆転勝ち。
神様も2回目の七冠達成を見たいのだろうか。

2008-08-15

王位戦の裏の大一番

- 対局者:深浦王位●vs○羽生四冠
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント(Web中継)
- 日時:2008/08/13

羽生が名人に復位し、佐藤棋王から棋聖位を奪取した辺りから「七冠ロード再び」の気運が高まってきている。
しかしこの七冠ロードを冷静に見てみると当然ながら敷居が高い。
直近では、まず現在進行形の王位戦で王位を奪取する。次に決勝トーナメントまで勝ち進んでいる竜王戦で挑戦権を得なければいけない。
両方とも立ちはだかるのは深浦王位である。王位戦は、現在羽生の1勝3敗で深浦が防衛にリーチを掛けている。そして竜王戦決勝トーナメントも大一番だ。

戦型は後手羽生四冠の一手損角換り。9筋の位を取って一旦四間飛車に振って、更に向飛車にするという趣向だ。
手損を厭わない最近の流行系の一つだが、素人四間飛車党にはちょっと理解できない指し方ではある。

対する先手深浦の指し方は9筋の位を積極的に咎める構想で参考になる。
と言っても狙いは簡単で地下鉄飛車を絡めた9筋の逆襲だ。後手もそれを警戒して早めに8三銀と銀冠を目指すが、それでも先手の狙いは9筋にロックオンだ。
図はいよいよ▲9六歩としたところ。先手陣は玉が6八に留まっているのが端攻めを見据えた布陣であることが分かる。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金 ・ ・v飛 ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 桂 歩 歩 銀 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 
【手数=33 ▲9六歩 まで】

ここから△同歩▲同香△9四歩▲5六銀△6三金左▲9九飛△8三銀▲8五歩△同歩▲9三歩と進んだ。
これで手になっているようだ。しかし▲8五歩では▲6六角の方が明快だった気がする。

端が破れて先手優勢は明白だった。序盤で費やした△9四歩〜9五歩がまともに咎められているのが痛い。

図は△4二歩としたところ。ただ飛車が狭くなるだけの筋悪の歩に見えるが狙いがあった。

後手:羽生善治名人
後手の持駒:銀 桂 香 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| と 銀 ・v玉 ・v歩 ・v飛 ・|二
| ・ ・ ・v金v歩 馬 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・v銀v歩v歩 ・|四
| ・v金 ・ ・ ・ 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 歩v角 ・|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩三 
【手数=70 △4二歩 まで】

▲3四馬△8六桂▲8八金△8七歩▲同金△3二飛▲1六馬△3六飛▲4七銀△5九銀と進んだ。
▲3四馬では▲2三歩が勝ったようだ。本譜のように▲1六馬として完封勝ちを狙ったが、これは後手の罠だった。
△3二飛〜3六飛と働きのなかった飛車が世に出て事件だ。▲4七銀が手順の受けのようでも△5九銀があった。
すわ羽生マジック!△4二歩の勝負手が逆転に繋がった。

強敵深浦を退けたが、羽生の竜王戦挑戦までには丸山九段と木村八段が立ちはだかる。
王位戦も瀬戸際に追い込まれており、七冠ロードへの道はなお険しい。

2008-08-13

郷田九段の振り飛車

- 対局者:木村八段○vs●郷田九段
- 棋戦名:第21期竜王戦決勝トーナメント(Web中継)
- 日時:2008/08/08

居飛車正統派の郷田九段だが、本局は陽動振り飛車を採用した。ハチワンダイバー以降、千駄ヶ谷の受け師というニックネームが定着しつつある木村八段はミレニアムを採用。
最近では見られない居飛車vs振り飛車の持久戦だ。後手は千日手辞さずの構えなので、先手がいかにして手を作るかというのが中盤のポイントになった。

図は駒組が頂点に達したので△5五歩としたところ。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v銀 ・ ・v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 桂 銀 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:なし
【手数=46 △5五歩 まで】

▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲5五歩△2二飛▲3八飛△4四角▲3三歩△4三金▲3五角△3三角と進んだ。
△5五歩はきっかけの欲しい先手に手段を与えることになるが、そこをいなすのが振り飛車の真骨頂だろう。後手がうまくやっている感じだ。

図は▲2二角成と飛車を召し捕ったところ。さらに4四の金取りにもなっている。
指し方がここでは完全にギアチェンジしている。いなす指し方から、敵陣しかみない指し方だ。ここで先手玉を寄せてしまう構想は居飛車党の発想と言えるかもしれない。

後手:郷田真隆九段
後手の持駒:金 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ 馬 ・|二
| ・v銀v桂 ・ ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩v歩 ・v桂 歩v金v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 歩v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ 銀v馬 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 玉 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:木村一基八段
先手の持駒:飛 銀 歩四 
【手数=105 ▲2二角成 まで】

ここから△7七桂▲9八玉△9五歩▲6一飛△9六歩▲9二歩△8五歩▲9一歩成△8六歩▲9四銀と進んだ。
△7七桂は指したくなる手ではあるが、週刊将棋誌によるとここでは△6六歩が有力だったとこのこと。
端と連動して先手玉は寄っている感じがするが、△9六歩に▲9二歩があってこの攻めは無理だったようだ。
9〜7筋まで6の段に歩が並んで先手陣から見ればかなり圧迫感があるものの、▲9四銀が決め手。

木村八段が勝って、2年連続挑戦へ向けて決勝トーナメント三番勝負へと駒を進めた。

郷田九段の将棋はいい意味で古風だ。時代の最先端にある小手先の技術に媚びないとことが魅力だ。そして本局のようなオールドスタイルの振り飛車もなかなか巧い。
最近は角道を止める振り飛車を指す棋士がめっきり減ってしまった。郷田九段は振り飛車を指して欲しい棋士の一人でもあるし、時流に反するという観点から意外と指してくれるかも、という期待感もある。

2008-08-10

第49期王位戦第4局

後手番の有力戦法としてすっかり市民権を取得した感のある一手損角換りだが、気になる記事があった。
将棋世界誌7月号「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」(p71)に

羽生四冠は《1手損には黄(または赤)信号が灯っているフォーメーションがある》と思っているのではないかと推測(バックワードフィネス)し、それは早繰り銀ではないか。と予測しました。

とあるのがそれだ。確かにタイトル戦での羽生の一手損角換り採用率は少ない。しかし本局(主催紙Web)は一手損角換りを採用した。対して先手深浦王位は早繰り銀。羽生は飛車を四間に振って受けた。これが早繰り銀対策なのだろうか?
序盤の形は省略するが、先手は▲3四歩△同銀とすることで飛車先の歩を切り、後手は▲2四同歩に△2三金と受ける展開となった。
図は▲7九玉と寄ったところ。後手がここで仕掛けた。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・v金 ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 銀 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 歩二 
【手数=39 ▲7九玉 まで】

ここから△4六歩▲同歩△同銀▲4三歩△同飛▲3二角△4二飛▲2三角成△5七銀成▲4四歩と進んだ。
玉の整備をし合うのは後手としては得ではない。王手飛車の位置関係に入ったこの瞬間が仕掛け時ではある。しかし、▲4三歩△同飛▲3二角の返し技があってうまくいくかどうかは微妙である。

少し進んで下図。2三の金と5七の銀を取り合う形になったことは分かると思うが、少し複雑な手順を経ている。
△5五角の飛車取りに対して▲2七飛と一つ浮いたところ。後手は5七の成銀の処置をどうするかだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ 馬v歩|四
| ・ ・ ・ ・v角v飛 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩v全 ・ ・ 飛 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 歩 
【手数=59 ▲2七飛 まで】

ここから△4七飛成▲同飛△同成銀▲2五馬△3九飛▲4九歩△5二銀打▲4七馬△1九角成▲9二銀と進んだ。
後手は4七の地点で飛車交換することで、一旦は成銀の取りを回避した。しかし成銀が敵陣から離れるので感触は良くない。
結局馬に取られて見捨てる形となった。2三の金も4七の成銀も遊び駒なので取らせてしまう感覚なのだろうか。
そうは言ってもちょっと理解に苦しむ感覚だ。駒得なので穏やかな流れにすれば先手が良いと思っていたら、▲9二銀。局面を決めに行く手だ。

少し進んで下図。先の▲9二銀は△同香に▲9一飛として、9筋に龍をつくるのが狙いだが、本譜はその狙いが現実になっている。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角 銀 桂 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| 龍v香v玉 ・v銀 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・v龍 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 金 歩 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角 金 香 
【手数=78 △2八龍 まで】

ここから▲4七角△6五桂▲2九香△1八龍▲2一香成△4六角▲4八金と進んだ。
局後深浦は「▲4七角〜▲2九香が苦労した局面」と感想を述べている。▲4七角は△6五桂と攻防の手で返されるのであまり手の価値がなさそうだが、▲2九香からの駒得が狙いだった。
局面を決めるまでには至らず、まったりとした流れになったきた。▲4八金も玉とは反対の方向に動く手で、セオリーとは逆だ。難解。

下図は終盤戦。▲9二銀に続く第2段のような手が出現した。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 桂 歩六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂v金 ・ ・ ・ ・ ・ 杏|一
| 龍v香 銀 ・v玉 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
|v銀 ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 桂 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 香 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 角 ・v龍 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 歩 ・ ・v馬|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:なし
【手数=103 ▲7二銀 まで】

ここから▲7二銀△5五銀▲7一銀不成△5六銀▲同角△5五馬▲9八玉△9五桂▲3四角△4三銀▲4四銀と進んだ。
再度敵陣に銀を放り込んだ。この手が好手で厳しかった。馬のラインで何とか自陣を支えようとするが、▲3四角〜4四銀が決め手。

深浦強し。複雑で難解な羽生好みの展開の中で一歩ずづリードを保つ差し回しは見事だった。
やはり一手損角換りは早繰り銀が鬼門なのだろうか。

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2008-08-03

第49期王位戦第3局

第3局(主催紙神戸新聞)は相掛り系の将棋になった。後手深浦王位は先手羽生四冠に銀冠に組ませて戦う方針。
図は△4二飛に▲2六飛としたところ。後手玉は入玉しても銀冠に対してメリットがない。後手番ということもあり、先手の攻めをいなす展開にしたいがさてどうするか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v金v角 ・|二
| ・ ・v桂v金v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 歩 歩 歩 銀 歩 歩 飛 歩|六
| ・ 銀 角 金 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=53 ▲2六飛 まで】

ここから△4一玉▲3五歩△5二玉▲3四歩△同銀▲3六飛△3五歩▲2六飛△3三金▲1五歩△3六歩▲同飛△2四金と進んだ。
△4一玉〜△5二玉と間合いをはかりつつ中住まいにするのが深浦の選択だった。正直ちょっと作戦的に失敗したのかと思った。
しかし、△3三金〜△2四金が力強い継続手。攻め駒の飛車を攻めるというわけだ。

この数手後飛車銀交換が行われた。
その時、先手陣は銀冠ながら、まだ入城していないだった。飛車銀交換から△2九飛と先手で飛車を下ろしたところでは、後手も主張が通った。
素人目には飛車銀交換の駒損のうえその飛車を先手で下ろされてはダメとしたものだが、この展開は先手も想定範囲のはずだ。
果たしてどちらが読み勝っていたのか。
解説がないとお手上げだ。
途中の面白くも難解なところはすっとばして下図。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 金 桂 香 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩v角|三
|v歩 ・v歩v金 ・v龍 ・ ・ ・|四
| ・ 銀 ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 ・ ・v金 ・ ・|六
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:飛 銀二 桂 歩七 
【手数=104 △4四龍 まで】

ここから▲6二飛△5二桂▲5六桂△4八龍▲4四銀△7八龍と進んだ。
△4八龍は本譜の△7八龍以下の詰めろだ。しかし羽生は▲4四銀とした。以下△7八龍と詰まされて終局となった。
さて、△4八龍は詰めろだったわけだが、羽生も分かっていたはずであり、ということはここではすでに後手の勝ち筋に入っているということなのだろうか。

深浦強し。現在好調の先手羽生をブレイクした。

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2008-07-26

第49期王位戦第2局

旬の戦法を積極的に採用するのが羽生四冠の特徴だが、本局は2手目△3二飛戦法を披露した。
後手の早石田は無理筋と言われていたことに一石を投じた手だ。この戦法で今泉三段が升田幸三賞を受賞したことは記憶に新しい。

将棋世界誌4月号に、プロの公式戦ではじめて採用した長岡四段による講座が記載されており、▲6五角が成立するかどうかが焦点の一つとされているが、奇しくも同講座の通り進行した。
図は互いに馬を作り合い、▲5八金右に△7四馬としたところ。序盤早々に9筋の歩を突き合ったことを活かして端に綾をつけいる。▲9二歩〜▲9一飛の筋が見えており先手が一本取ったに見えるが...。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v飛v銀 ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 馬 ・v歩v歩|三
| ・ ・v馬 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:歩 
【手数=18 △7四馬 まで】

ここから▲9二歩△同香▲3二馬△同金▲9一飛△8四歩▲8一飛成△7二銀▲7五歩△8一銀▲7四歩△同歩▲6六角△3三角▲8四角と進んだ。
▲9一飛に△8四歩が用意の一着で先手は桂馬は取れるものの本譜の順で龍を消される。同講座でも△8一銀▲7四歩と龍と馬を取り合って、後手桂損ながら飛車を手持ちにしていることが大きく後手有利としている。
実際、講座の内容は納得するもので、ここでは後手有利だと思う。しかし深浦王位も当然知っているはずで、▲6六角〜▲8四角と一歩を取ったのが事前に検討した対策だと思われる。

難解な中盤戦は飛ばして終盤。図は▲5四銀と打ったところ。先手は4筋に飛車を回っており、その上に香を配置している。4筋から殺到できれば後手陣は一気に崩壊だ。しかし、1四角もよく利いており、4七の香がいなくなると先手陣もたちまち寄ってしまう。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:飛 角 桂 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉v歩v金 ・ ・|二
| ・ ・v金v歩 ・ ・v銀 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ 銀 歩v歩v歩v角|四
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 香 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:金 歩二 
【手数=73 ▲5四銀 まで】

ここから△4四銀▲2五歩△2七角▲6五銀△2五角▲3六金△5三銀▲2五金△同歩▲2八歩と進んだ。
△4四銀は気持ちの良い手と目されており、現場でもこの手が指されて後手優勢の空気が支配的になったようだ。
しかし後続の手を見るとそうでもなさそう。▲2八歩とされた局面ではもう形勢不明だ。

この瞬間に後手は技を掛けに行った。図は6七に打った飛車を▲7八金とはじき、△6九飛成とした局面。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:金 銀 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉v歩v金 ・ ・|二
| ・ ・v金v歩v銀 ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ 銀v歩 ・ ・v歩 ・|五
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 香 歩 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v龍 ・ ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市王位
先手の持駒:角二 桂 歩 
【手数=94 △6九飛成 まで】

ここから▲7一角△6二銀打▲5四銀と進んだ。
▲5四銀が強手で後手玉は寄ってしまった。先手玉に寄せはない。

2手目△3二飛戦法に正面から立ち向かった深浦が本局を制した。しかし、3二飛対策としては今ひとつだった。

一見手を狭めるだけでメリットがないと思われる2手目の△3二飛だが、後手番でも早石田を目指せるという、新しい観点から見れば全く新しい発想だ。将棋はまだまだこんな序盤にも未知の可能性が隠されているということを再認識させたという点でも評価される手であろう。
しかし先手が相振り飛車を選択すれば、3筋に飛車を振ってしまっているので自ら手を限定しいるので少し損ではある。

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2008-07-19

プロフェッショナル 羽生vs森内

7月15日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀」は羽生vs森内の名人戦を振り返った内容の1時間スペシャル番組だった。
この番組は、プロフェッショナルであるゲストがホストである「アハ体験」で有名な茂木健一郎氏との対談と、着目したテーマを軸にしたビデオ編集がおり混ざった構成となっている。
対談編は森内元名人と羽生三冠が各々別収録となっていた。茂木氏が相当な羽生ファンであることは有名だが、この人ホントに将棋が好きだなと思える表情が印象に残っている。

ビデオ編のテーマは「ライバル」。少年時代から切磋琢磨しあって、互いに永世名人という頂点まで登りつめた2人。第67期名人戦の檜舞台を振り返る内容だった。

羽生が七冠になった頃、森内は無冠の帝王などと揶揄されており、それをバネとしていた。完璧であること目標としていたが、ある日身の丈に応じた将棋を指せばよいと考えるようになって、タイトルを取れるようになったそうだ。森内は名人戦で羽生に破れて無冠になったわけだが、これを期に更に強くなる予感がする。

一方の羽生は七冠という前人未到の頂点に立ち時の人となった。しかし、登り詰めてしまったゆえ、自身の立ち位置や物理的な目標設定に迷いが生じたのは、なんとなく想像がつく。そんな時に中原、加藤等の還暦を過ぎても現役で指し続けている大先輩を目の当たりにして、何かが変わったという。

なにがしか大きな壁を突き抜けることが、超一流には欠かせない事象であることを強く感じだ。
このような、熱くて厚い世代に恵まれた将棋界は幸せだと思う。
この番組を観て、同じ職業とは思えない、などと言うプロ棋士がいらっしゃるが、(気持ちは分からないではないが)もっと精進するしかないでしょう。

ゲストに「プロフェッショナルとは?」と問うのがお約束であるが、羽生は「24時間365日プロであり続けること」と言い放った。
流石である。突き抜けている。

見応えのある一時間だった。
えっ、8月5日は宮崎駿ですか。この番組はあなどれない。

#再放送は7月19日(翌日)午前1:10~翌日午前2:10です。見逃した方は要チェック。

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茂木氏のブログ
茂木健一郎 クオリア日記
茂木健一郎 プロフェッショナル日記

第79期棋聖戦第5局

七冠再び、というのもまんざらでなくなってきた羽生三冠。棋聖戦も2連敗のスタートから折れずに最終局に辿り着いた。

佐藤棋聖先手で始まった本局は後手羽生が一手損角換りから向飛車を採用した。佐藤がタイトル戦でも時々試みている手法だ。本局では羽生が採用。
図は▲6五角に△7四角と合わせたところ。この辺りの攻防が本戦法の序盤の見所だ。後手は▲4三角成は怖くないと見ている。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・v角 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:なし
【手数=12 △7四角 まで】

ここから▲同角△同歩▲4六歩△6二玉▲4七銀△5二金左▲6八玉△2四歩▲7八玉△6四歩▲8八玉△7二銀▲9八香と進んだ。
先手は▲4三角成とせず▲同角と応じた。結果△7四歩と指した局面と同じになった訳だが、△7四歩の突きどころとしては不自然かも知れない。
△7四歩が入ったので穴熊には組みにくいと判断したのか、後手は美濃を視野に入れた駒組に、対して先手は▲9八香で居飛穴の意思表示。

図は中盤戦。△6五角から7六の歩をかすめ取ったところ。ここからの先手の指し方は素人(私)には理解しがたいものだった。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二
|v歩v歩 ・ ・v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・v銀v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v角 ・ 銀 歩 ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 
【手数=34 △7六角 まで】

ここから▲4五歩△同桂▲5八金△3五歩▲6八金寄△3七桂成▲同桂△3六歩▲6九金引△3七歩成▲7八飛と進んだ。
▲4五歩△同桂と仕掛けてから▲5八金と自陣を守った。この呼吸はよく分からない。
更に一旦▲6八金寄としてから▲6九金引もどうなのだろう。▲7八飛の転回が狙いであることは分かるが、間合いをはかったということなのだろうか。

この折衝で桂交換になったが、後手は狙い通りと金ができた。普通はこれで振り飛車良しなのだろうが、相手が居飛穴となると話が違ってくる。居飛穴崇拝時代ではむしろ先手を持ちたい人が多いかも知れない。
冷静に見てみると形勢不明としか言いようがないか。

図は△4七ととしたところ。飛車成りを見せられ先手も忙しくなってきた。この瞬間に攻め立てる穴熊らしい手順が見えるが、本譜もそう進んだ。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:角 桂 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩|三
| ・v桂v歩 ・ ・v歩v飛v歩 ・|四
| ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩vと ・ ・ 歩|七
| 香 銀 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 金 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 
【手数=66 △4七と まで】

ここから▲7四銀△7三歩▲8三銀成△同銀▲5六角△8六歩と進んだ。
▲8三銀成まではこの局面で次の一手を考えれば一目の順だろう。自陣は穴熊、▲5六角の両取りで決まり。
ところが両取り受けるべからずの△8六歩がそれを上回る鋭い一手だった。堅陣に見える穴熊最大の急所に手がいっており、攻防が逆転した。
佐藤も局語「△8六歩をうっかりしていた」と述べている。穴熊を過信しすぎた例と言えるのではないだろうか。

図は△8七歩の叩きに▲同玉としたところ。決め手とも言える次の一手は比較的易しい手だ。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:角 金 銀 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・v歩|三
| ・ 馬 ・ ・ ・v歩v飛v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 玉 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| 香 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:銀 桂二 歩六 
【手数=87 ▲8七同玉 まで】

ここから△2一角▲7六歩△7四金と進んだ。
△2一角は易しい一手だが厳しい。角道を遮断するのは容易ではないという好例だ。▲7六歩と飛車先に歩を打つようでは勝負あった。

羽生は名人に続いて棋聖位もゲット、王座王将と合わせて四冠になった。現在進行形の王位戦も幸先よい出だしとなっており、その勢いは止まりそうもない。
佐藤は6年間守り切った棋聖を手放すことになった。

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2008-07-17

第49期王位戦第1局

19世名人の資格を得た羽生三冠のリベンジなるか。夏の風物詩、王位戦が始まった。
羽生は王位戦に16期連続出場中だ。最近は七冠再びという雰囲気さえ出てきた。
羽生から本タイトルを奪取し念願の初タイトルを得た深浦王位は、順位戦もA級に昇級した。名実共にトップ棋士となった。
両雄の対戦成績は深浦の18勝、羽生の20勝。拮抗している。

第1局は一手損角換りの腰掛け銀となった。
図は先手が4筋から動いて一段落後、後手が端を突き捨て反撃開始。さらに△7五歩。
これに対して▲6六角と打ったところ。一応7五歩と4四銀の両取りにはなっているが、いかにも狭い。▲7五角としても生還できない可能性が高い。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・v歩 ・v歩v銀v銀v歩 ・v歩|四
| 歩 ・v歩 ・ ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 角 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:歩 
【手数=45 ▲6六角 まで】

ここから△4三銀▲3五歩△6五歩▲7五角△6三金▲9四歩△7四歩▲8六角△8五歩▲9三歩成△6二飛▲9五角△9三香▲7三角成△同金▲9三香成と進んだ。
長手数進めたが、見所は先手の放った角の行方だ。案の定△9三香で詰んだが、▲7三角成〜▲9三香成で角と桂香の二枚換えとなった。
▲9三香成の局面をどう見るか。一応二枚換えだが、手順に6筋に飛車を展開しており、後手を持っても指せそうな局面だろう。

下図。▲4四香に△9六角としたところ。△5五桂は数手前に打った桂馬だ。4七の金は両雄とも見向きもしない。
▲4四香は露骨で厳しい手だが、△9六角もいかにも急所という感じの筋の良さそうな手だ。果たしてどちらが読み勝っているのか。

後手:深浦康市王位
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・ ・v金 ・ ・|二
| 杏 ・v金 ・v歩v銀 ・ ・ ・|三
| ・ ・v歩 ・ ・ 香v歩v歩v歩|四
| ・ ・ ・v歩v桂 銀 歩 ・ ・|五
|v角 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 銀 歩 歩 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:銀 桂 歩三 
【手数=70 △9六角 まで】

ここから▲4三香成△同金▲5一銀△6六歩▲同歩△2五香▲2六歩△同香▲同飛△7八角成▲同玉△6七角▲8八玉△8七歩▲9八玉△7八角成▲2八飛と進んだ。
▲5一銀と飛車取りに銀を掛けられ、後手は忙しくなってきた。△2五香は2八にいる攻防の飛車を動かす犠打。飛車が自陣に利かなくなった瞬間に先手玉を寄せるべく△7八角成と角を切った。
しかし冷静に▲2八飛と引かれて後手の攻めが切れている。

しっかり受け切って、羽生の勝ち。
二枚換えの辺りでは後手が良さそうな気がしたが、後手の猛攻を見切った羽生の受けが光った一局だった。

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2008-07-10

第79期棋聖戦第4局

第4局は一手損角換りの出だしから、のっぴきならない展開となった。

図は▲2四飛に△3五角としたところ。これで後手の馬が確定だが、ことはそんなに簡単ではなかった。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v角 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 歩 
【手数=12 △3五角 まで】

ここから▲2八飛△5七角成▲1五角△3三桂▲2二飛成△同飛▲3三角成△4二飛▲5八金左△3五馬▲1一馬と進んだ。

なんとも華々しい展開である。▲1五角には△3三桂しかないが▲2二飛成から本譜の順で先手の三枚換えとなった。
どうやら、このあたりは周知で定跡化されているようだ。三枚換えなら先手よしとしたものだが、後手は飛車を持っているので、先手は自陣の整備が難しく、形勢は互角ということだ。

定跡手順とはいうものの手将棋であることは間違いなく、どちらかというと佐藤棋聖のフィールドかも知れない。

それにしても、素人の理解を超越した手順が随所に出て来る将棋だった。
例えば下図からの応酬は、その意味すら理解出来ない。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:飛 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v金 ・ ・ ・|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・v香 歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 馬v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 香 歩v馬 ・|六
| ・ 歩 桂 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 玉 金 ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂v龍|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:銀 桂 
【手数=50 △6四香 まで】

ここから▲4三香成△4八歩▲5八金上△3九飛▲5三歩成△同金▲5五馬△5七歩▲同金直△1八龍▲5三成香△同馬▲5四歩△3一馬と進んだ。
まず▲4三香成。私ならノータイムで▲5五馬(次に▲4三香成)と馬を逃げると思う。まあ数手後に▲5五馬とするわけだが、▲5三歩成△同金を利かしての本譜のタイミングの方がきっと勝っているのだろうが、その理由が分からない。
△5七歩に▲同金直では、▲1九馬はないか?
また、△3一馬では△3八龍(詰めろ)で何か不都合があるのだろうか?

他にも不明点は沢山あるが、下図における次の一手が決め手になったというのは間違いないと思う。図はと金を清算しないで▲5四歩としたところ。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:銀 桂 香 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v金v馬 ・ ・|一
| ・ ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 と ・ ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ 歩 馬v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v香 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 金 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 玉 金 ・v歩v龍 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・v飛 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:金 桂 歩二 
【手数=75 ▲5四歩 まで】

ここで△5六桂が決め手。この桂は▲4七龍があるので取れない。

土壇場に追い込まれた羽生三冠がここにきて2連勝。第5局が大一番となった。

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2008-07-07

最新戦法の話

著者:勝又清和
- 出版社:浅川書房

本著は将棋世界誌に好評連載(2006年)された「これならわかる!勝又教授の最新戦法講義」がベースとなっている。勝又はデータベースを駆使した随一のIT棋士である。
深浦の「最前線物語」シリーズが、同種の棋書になるかと思うが、「最前線物語」が著者の肉声という感じなのに対し、こちらは、授業のテキストのような分かり易い仕上がりとなっている。
そういう意味では、高段者ではなくでも読み物として読める内容となっており、この仕事は真に教授である。

内容は当時以前の流行戦法の移り変わりが、流行の理由とともに解説されている。
当時は2大流行戦法だった8五飛中座飛車戦法と藤井システムに陰りが見えてきて、変わって流行は一手損角換り、ごきげん中飛車と相振り飛車へと移行しつつあった。これらの戦法に加えて、石田流とコーヤン流の両三間飛車もテーマとして挙げられている。

「勝又教授の最新戦法講義」は将棋世界誌で断続的に連載しているので、続編も楽しみだ。

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とっておきの相穴熊

- 著者:広瀬章人/遠藤正樹
- 出版社:毎日コミュニケーションズ

相穴熊はプロではあまり見られなかった時代から、持ち時間が短く、また一敗も許されないアマ棋戦では相穴熊は重点戦法の一つだった。
実利を追求すると穴熊に帰結するためか、アマ強豪には穴熊のスペシャリスト達が比較的多く存在する。アナグマンこと遠藤氏はそんなアマ強豪の筆頭と言える。
今回その遠藤氏が、これまたプロ棋界の若手穴熊スペシャリストである広瀬プロとタッグを組んだのが本著だ。

対話形式という試みは名著「読みの技法」でも採用された形式だが、本著でも成功していると思う。
相穴熊というフィールドを知り尽くしている両雄だからこそ語れるエッセンスがうまく抽出されている。

理論的には「相穴熊は居飛車が有利」と言われている。確かに一方的に飛車先を突いている分だけ居飛車が有利、というのは感覚的にも正しいと思われる。
これに対して、遠藤氏は「相穴熊は経験値の高いほうが有利」と説いている。そんな些細なことよりも、肝心なのは経験値なのだ。穴熊でアマトップに登りつめた遠藤氏の言葉は説得力がある。
広瀬も振り穴のスペシャリストである。もちろん居飛穴も得意だが、振り穴を好んで指すようだ。この辺りの考え方は一致していると感じた。

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杉本昌隆の振り飛車破り

- 著者:杉本昌隆
- 出版社:毎日コミュニケーションズ

振り飛車党が語る振り飛車破り。掟破りの定跡書だが、視点も斬新で面白い企画だと思う。
思い起こせば、大山十五世名人や藤井九段が時折見せる対振り飛車は実戦的でうまい。
振り飛車のツボを知っている振り飛車党は対振り飛車もうまいというのは道理なのである。
本著は、比較的新しい定跡を踏襲しつつ、実戦的な観点からの解説もあり、バランスよくまとまっている。

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新・振り飛車党宣言!3 進化する相振り飛車

- 著者:千葉幸生/藤倉勇樹/中村亮介
- 出版社:毎日コミュニケーションズ

相振り飛車は居飛車党の参入もあって近年技術的に開拓が進んだ戦法だ。その結果、実戦的に組み負けし易い金無双は見かけなくなった。まさに、進化する相振り飛車、なのだ。
最近は出現頻度も落ち着いてきたが、相振りの新たな息吹を若手新鋭3人が解説する。

内容は新しい相振り飛車である△3三角戦法と対後手三間飛車が中心。やはり金無双は皆無だ。
千葉は△3三角戦法に対して居飛車で対抗する形も解説している。

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2008-07-06

最前線物語2

- 著者:深浦康市
- 出版社:浅川書房

「最前線物語」に続く第2段(「最強将棋塾 これが最前線だ」も含めると第3段)。
現在進行形の(当時の)最新形を当時の知識をあますとこなく解説する、という趣旨が本著の最大の特徴だ。
これを執筆できるのは、プロ棋士の中でも少ないのではないだろうか。

「最前線物語」では藤井システムと8五飛車戦法が全テーマのうち約半数を占めていたのに対し、2では全体の10/35に減っている。
振り飛車の現状は藤井システムを対居飛穴の軸としていた四間飛車が圧倒的に減って、ごきげん中飛車等の角道を止めない力戦形振り飛車に移行している。
そういう意味では既に最前線ではないのは、このジャンルの本としては宿命だが、「物語」は永遠なのだ。

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2008-07-05

第79期棋聖戦第3局

5番勝負には(7番勝負にもだが)滅法強い羽生三冠は、本局に破れると自身初の5番勝負3タテ敗退となる。
5番勝負に限定すると、出だし2連敗は、第46期王座戦(vs谷川 ●●○○○)と第31期棋王戦(vs森内 ●●○●)の2回ある。
この辺りのデータは9x9=81の「羽生のがけっぷちシリーズ(現在2007年8月の8が最新)」に詳しい。

という訳で本局に勝って防衛を果たすと、7連覇と同時に史上初羽生に対して3タテを喰らわせた棋士となる。
佐藤後手番ということで、何か飛び出すかと思ったがオーソドックスな矢倉戦となった。

否。やはり佐藤の手は尋常ではなかった。

後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩v角v歩v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:なし
【手数=35 ▲2五歩 まで】

ここで佐藤の指し手は△5二玉。

4一の玉を5二に移動するのはたまにあるが、居玉からダイレクトに中住まいにしたのはが新工夫。
佐藤が暖めていた手のようだが、以降の展開を見ると普通に悪くなってしまったようだ。

図は終盤戦。▲2四歩△同歩と突き捨てたところ。

後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:銀 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀v角 ・ ・ ・ ・|三
| ・v歩v歩v歩v銀 歩 ・v歩v歩|四
|v歩v桂 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 銀 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:金 歩 
【手数=64 △2四同歩 まで】

ここから▲4三金△同銀▲同歩成△同金▲2四飛△5八銀▲2二飛成△4二歩▲4五銀△7三玉▲7五歩と進んだ。
▲4三金とぶち込んで、2三に利いている駒を剥がして、2筋を突破する。平凡な手しか指していないが、これで先手優勢だ。
後手は平然と飛車成りを甘受して、△4二歩。これで持ちこたえるのが予定の行動なのだろうか。
早めに△8五桂としたのは本譜の△7三玉の余地を残したものと思われるが、▲7五歩でやはり先手の攻めは切れそうもない。

佐藤の対羽生3タテをするチャンスは潰えた。
矢倉からいきなり中住まいの構想も空振りに終わった。
しかし7連覇の偉業の可能性は依然高い。

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2008-06-22

第79期棋聖戦第2局

第1局以降、羽生三冠は17日の名人戦で森内名人を4-2で破って見事に5期目の名人位(=永世名人)に就いた。また19日には新鋭橋本七段を破って王位戦挑戦権を得ている。
一方の佐藤棋聖は17日にA級順位戦緒戦で鈴木八段と対局し、勝利している。

さて第2局は後手羽生が4手目△3三角と趣向を見せた。先手佐藤もこの注文を堂々と受けて、▲3三同角成△同桂と進んだ。
後手は居飛車にする手もあったが、一旦四間に飛車を振って力戦振り飛車を採用した。

図は△7二玉としたところ。先手の6八玉に違和感があるが、その後の展開を見れば納得。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:角 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀 ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 
【手数=12 △7二玉 まで】

ここから▲7七玉△2二飛▲2五歩△4二銀▲8八玉△8二玉▲9八香と進んだ。
▲7七玉から玉を囲うのが先手の狙い。珍しい駒運びだが、昔からない手ではない。▲9八香は穴熊の意思表示。
後手は飛車を四間から向飛車に振り直した。

図は中盤戦。△4七角としたところ。後手だけ馬ができる展開となれば、当然後手優勢だ。

後手:羽生善治三冠
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
|v香v玉v金 ・ ・v金 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v歩 ・v歩v桂v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀v角 桂 ・ ・|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 
【手数=48 △4七角 まで】

ここから▲1八角△5五歩▲4五歩△5三銀▲4八飛と進んだ。
▲1八角は角には角の第一感の手だ。▲1八角に対しては△3五歩または△6五桂のどちらかと思っていたので、△5五歩は意外だった。
△3五歩や△6五桂とすれば後手としては不満のない中盤戦になると思うのだが、どうなのだろう?
本譜は▲4八飛で角が死んでしまった。

以降も玄妙に手を繰り出す後手だが、大勢は既に決している感がある。
△9二香としたのは△9一飛の地下鉄飛車が狙いだが、飛車は2一から動くことはなかった。
この将棋は端を絡めないと後手が勝つイメージがなかなか湧かない。先手が作戦勝ちしたとは思わないが、なんと言っても先手陣は穴熊なので。

羽生の指し手に、ややちぐはぐさを感じる一局となった。

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2008-06-19

第66期名人戦第6局

今期名人戦は相掛りシリーズのようだ。
このままでは終われない森内十八世名人は相掛りを受けて立った。

図は先手羽生二冠が▲6六角としたところ。この局面は前例があるようだ。▲4五銀があるので△6六同角の一手と思われたが...。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・v歩v角v歩 ・|三
|v歩v飛 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 角 ・ 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:歩 
【手数=35 ▲6六角 まで】

ここから△8二飛▲4五銀△6六角▲同歩△5五歩▲6七角△8四飛▲3四銀△2四歩▲6八銀△9二角▲2三歩と進んだ。
△8二飛が森内らしい手だ。▲4五銀は大丈夫と見ている。
これに対し▲6七角〜▲2三歩は直球勝負という感じだ。▲2三歩は封じ手だが、ここは▲7九玉が一番人気で、私もこれを予想したが、見事に外れた。
△9二角と▲6七角。互いに放った筋違い角がより働く方が優勢になりそう。

少し進んで下図。後手は9二の角を活かして3筋にと金を作った。先手の次の手は当然の一手だが、その後の構想は素晴らしかった。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉v銀v桂v香|一
|v角 ・ ・v銀v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・ 歩 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 角 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 銀 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・vと 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:歩二 
【手数=54 △3九歩成 まで】

ここから▲1七桂△2三金▲4七銀△3二玉▲2五歩△2二銀▲6五歩△2五歩▲3六銀と進んだ。
▲1七桂は当然としても、3四まで出た銀を4七を経由して▲3六銀と活用したのが羽生らしい距離感を掴んだ手だ。
途中の▲6五歩も好手。2三に金が落ちているので△同角とはやり難い。この歩で9二の角を封じ込めた。
後手の唯一の主張は3九のと金だが働きは今ひとつか。

少し進んで下図。▲2五桂と1七の桂馬を捌いた。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v角 ・ ・v銀v金 ・v玉v銀 ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・v歩v桂v金 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 桂 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 角 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・vと ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:歩二 
【手数=67 ▲2五桂 まで】

ここから△3八と▲3三桂成△同銀▲3八飛△6四歩▲2八飛△6五歩▲6八金右と進んだ。
このタイミングの△3八とはBSのダイジェスト解説で木村八段が「おそらく敗着」と断じた手だった。
と金を活用する狙いとしてある筋だが、タイミングが悪かったようだ。ここは△2四歩とするしかなかった。
△6四歩〜△6五歩の取込みは6六の打ち込みを見た手だが、冷静に▲6八金右とされると△6六桂は先手陣にはさほど影響はない。

角の働きは先手が良く、と金も効果的な活用ができなかった。玉形の差も歴然で先手優勢が明白になった。
少し進んで下図。決め手が出る。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v角 ・ ・v銀v金 ・v玉v銀 ・|二
|v桂 ・v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・v歩 飛v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ 桂 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 角 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:金 歩四 
【手数=88 △2三歩 まで】

ここから▲5三桂成△2四歩▲5二成桂△8五桂▲8六銀△6四桂▲7五金と進んだ。
▲5三桂成がきれいな決め手。▲5三桂成に△同銀は▲3四飛で飛車交換になる。陣形の差で飛車交換に応じることの出来ない後手は△2四歩としたが▲5二成桂で寄せ形が見えてきた。
▲7五金はもう絶対に負けませんよ、という辛い手だ。

少し遅れたが羽生十九世名人が誕生した。羽生の永世名人は誰もが異存なしであろう。
2年連続で永世名人を輩出した羽生世代はやはり層が厚いと言える。
今期名人戦は幕を閉じたが、両永世名人の熱い戦いはまだまだ続く。
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2008-06-13

第79期棋聖戦第1局

名人戦の最中、棋聖戦も開幕した。

第1局は後手佐藤棋聖の一手損角換りに。先手羽生二冠は早繰り銀で対抗した。
図は△4五銀の局面。ここまでの折衝で飛車先を切った▲2四同飛に△2五歩▲同飛△1四角として後手は馬をつくるのに成功している。
対する先手も▲3八角として互いに角を手放している。
この局面、佐藤は後手を持って指しているようだ(王位戦予選山崎●vs○佐藤)。ここで山崎七段は▲1五歩だったが。

後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・v馬|四
| ・v歩 ・ ・ ・v銀 銀 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ 角 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:歩二 
【手数=38 △4五銀 まで】

ここから▲2七角△3六歩▲1五歩△2五歩▲1六飛△2三馬▲2四歩△1二馬▲7七銀△4二玉と進んだ。

この順から分かるように先手は生角だが馬を1二の僻地に追いやることによって、角対馬でも均衡を保てると見ていたようだ。
△4二玉が佐藤流の豪傑な手と評判だった。敢えて危険地帯と思える方角に玉を爪弾いた。

図は4五の地点で桂交換になった局面だ。2筋と3筋に垂らした歩は後手に取り切られている。
その間、先手は飛車を右往左往していただけの感じだ。

後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:桂 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v玉v金 ・v馬|二
|v歩 ・ ・v銀v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・v飛v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・ ・ 飛v銀v歩 歩|五
| ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 角 ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:桂 歩三 
【手数=77 ▲4五同飛 まで】

ここから△3六銀▲5五飛△5四歩▲5六飛△3七銀成▲2四桂△2三馬▲3二桂成△同玉▲2九角△2七桂と進んだ。
先手は先に▲2四桂として金桂交換を果たしたが、角が狭い。
△2七桂が好手。角が生角なので対処に窮した。

緒戦は佐藤が後手番で難敵を下して、7連覇に向けて好スタートを切った。

さて本局は「ウェブ進化論」で有名な梅田望夫氏が主催紙Web上でリアルタイムの観戦記を綴っている。とても面白い試みだ。こんな観戦記があってもよい。
スポーツにしても音楽にしてもライブに勝るものはないわけで、臨場感の伝わるよい観戦記だと思う。
それにしても、本局は△2七桂の好手があったわけだが、これを予見するかのような文章が梅田観戦記の「序盤」に出てきたことは、「絶妙手」でしたね。


棋聖戦・梅田望夫氏観戦記はご本人のブログ「My Life Between Silicon Valley and Japan」と主催紙(以下)で閲覧できる。

(1)桂の佐藤棋聖、銀の羽生挑戦者
(2)羽生挑戦者「秘策」に誘導か
(3)未踏領域に突入、「均衡の美」をタイトル保持者が解説
(4)「孤高の脳」が生む無限の広がり
(5)「至福の時間」終演、勝因はやはり佐藤棋聖の「馬」


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2008-06-08

第66期名人戦第5局

第3局に続いて、本局も相掛りに。第3局は先手森内名人必勝形からまさかの大逆転だった。羽生は後手番で受けて立った訳だが、作戦的には失敗だった。
にもかかわらず両雄は再度相掛りを選択した。とかく一流棋士は強情なものだ。

互いに角道を止めて持久戦模様になったが、下図△7四歩で穏やかな流れが一変した。持久戦趣向なら後回しにしたほうが無難な手だ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・ ・v歩v銀 ・v角v歩 ・|三
|v歩v飛v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 銀 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 歩 ・ ・|七
| ・ 角 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩 
【手数=40 △7四歩 まで】

ここから▲6五歩△5一角▲5五歩△同歩▲同角△7三角▲6六角△8二飛▲7五歩△同歩と進んだ。
△7四歩とされたら本譜のように▲6五歩と指したいところだ。△7五同歩は封じ手だが、やや意外。△8四角とかわす手を予想していたが、少し悪いと見た勝負手だったのかもしれない。
先手に不満のない展開となった。

図は▲5三歩に△6三金としたところ。後手は腹を決めて強く指している感じだ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 角 ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・ ・v金v銀 ・|二
| ・ ・ ・v金 歩 ・ ・v歩 歩|三
|v歩 ・ ・v銀 飛v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩|五
| 歩 ・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|七
| ・ 金 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・v角 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩 
【手数=78 △6三金 まで】

ここから▲5二歩成△同飛▲同飛成△同玉▲5九飛△6一玉▲3九飛△7一玉▲4一角△6二金と進んだ。

▲5九飛の王手角取りに△6一玉と逃げてアクロバティックな手が続くが、当然ながら▲4一角の金の両取りが厳しい。
これを受けるなら△6二飛等が考えれられるが、それでは勝負にならないと見て△6二金。羽生らしい勝負手だが、第3局のような波乱は起きなかった。

早繰り銀の▲3六銀と壁銀の△2二銀が投了図まで動かなかったが、壁銀の方が罪が重かったようだ。

角番の森内だが、本局をみる限り手は伸びていた。しかし第6局は羽生の先手だ。これをブレークしないかぎり防衛の道は切り開けない。

羽生は挑戦権を得た棋聖戦が11日から始まる。強いが故の宿命だが、忙しい。

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2008-05-25

第66期名人戦第4局

▲6五角の筋があるため、以前はないと思われていた、角交換後の直接向飛車。佐藤棋聖棋王がタイトル戦で見せた新手法だ。
本局で後手森内名人が採用したが、新機軸を披露した。

図は△4三金▲7四歩△同歩と盤面に打ち合った角と馬を再度取り合って、▲7八金と自陣を引き締めたところ。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・v玉v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 銀 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:角 歩 
【手数=23 ▲7八金 まで】

ここから△5四金▲4六歩△6二玉▲4七銀△4二飛とした。
△5四金は森内らしい、金の力強い動きだ。去年の名人戦第3局(郷田●vs○森内)の△7三金を彷彿させる金。あの将棋で逆転の狼煙を上げ、第18世名人を勝ち取ったという印象がある。
ここは飛車を振り戻して矢倉を目指す順が見えるだけに、振り飛車のまま駒組を進めるという選択は決断の一手だった。角交換を挑む四間飛車(6五ポン戦法)と同様3三の銀をどう捌くかが課題となりそうだ。

少し進んで下図。この辺り、後手陣のまとめ方が難しいと思ったが、△8二角と角を手放した。
なるほどこの手は角は手放すものの先手の駒組に制約をかけている。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v角v玉 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・v歩 ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v金 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 銀 銀 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:角 歩 
【手数=38 △8二角 まで】

ここから▲1八香△1四歩▲1六歩△7三角▲7九玉△6二銀▲2六飛▲4八金△8四角▲2八飛△7三桂▲5八金△7五角▲3七桂△6四角▲2九飛と進んだ。
手順は長いが互いに有効な手がない感じだ。後手は手数をかけて角を6四に移動した。角を手放したことと、3二の銀が捌けそうにないことの2点から先手の模様が良いと思っていたが、この辺りはむしろ後手のりの声が多かった様だ。

長い中盤戦がまだまだ続く感じだったが、突如後手が仕掛けた。
図は△3五歩▲同歩としたところ。以前からの狙い筋だ。△3六歩▲同銀△4六飛!▲同銀△同角(王手)という手で決まれば申し分ないのだが。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂v銀v歩 ・v銀v歩 ・|三
| ・ ・v歩v角v金 ・ ・ ・v歩|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 銀 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座王将
先手の持駒:角 歩二 
【手数=57 ▲3五同歩 まで】

ここから△6六歩▲4五桂△4四銀▲2四歩△4五銀▲同歩△6七歩成▲同金右△7五桂▲6六金△3七角成▲4八銀打と進んだ。
△6六歩は一本利かしだが、取ってくれなかった。放置して▲4五桂。△4四銀に堂々▲2四歩。これで後手は困っている。
△7五桂に期待した様だが、▲6六金が冷静だ。△3七角成にも▲4八銀打で受け切りだ。

6五ポン戦法の感覚で言うと、△4四銀は▲2四歩が間に合わないタイミングであることを見越して指すものだが、本局はそうではなかった。△4四銀では△2二銀と辛抱する方まだ良かったと思う。

序盤の△5四金を見て、第3局の大逆転負けの影響はなさそうだという印象だったが、図の仕掛けは真逆の印象だ。
森内らしくなく、自ら仕掛けてぽっきり折れてしまった感じなので少し心配だ。

対する羽生はいよいよ19世名人が見えてきた。

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2008-05-19

DSしおんの王が当たった

将棋世界と週刊将棋を以前から購読している。この手の雑誌には読者プレゼントがつきものだ。将棋世界の年始のプレゼントクイズと名人挑戦者当てクイズはまめに出しているが当たったためしはない。
4/30号の週刊将棋の読者プレゼントは「DSしおんの王」だったが、たまたま応募してみたら当選した。週刊将棋誌様ありがとうございました。

ゲーム内容は
・メインモード…次の一手を解くとオリジナルストーリーが進むというもの
・対局モード…アニメに登場する8人のキャラクターとの対局
・入門講座…文字通り入門講座
の3本で構成されている。
初心者にも楽しめる配慮がなされているので、アニメを見て将棋に興味を持った人も大丈夫だ。

現在メインモードを楽しんでいる最中だが、正しい(期待の)手ではない手でも、正解してしまう次の一手問題が2問あった。
原因が思考エンジンが応手に間違えたのか、問題自体の検証漏れかは分からない。時間が見つかったら検証してみたいと思う。

「しおんの王」は月刊アフタヌーンに連載された作品。
原作はかとりまさるだが、林葉直子のペンネームである。
去年にはフジテレビ系でテレビアニメとして放送された。

2008-05-13

第2回大和証券杯ネット将棋・最強戦:渡辺○vs●羽生

注目のカードだが、羽生二冠がまさかの切れ負けとなって、色々なところをにぎわしている。

羽生二冠が初の反則負け ネット棋戦、操作で時間切れ」
マウス操作ミスる、羽生が時間切れ敗北

中盤羽生優勢の局面で、時間が切迫したわけではなく、普通に時間切れになってしまったとのこと。
どうやら「着手確認機能」が絡んでいるらしい。

本棋戦はネット上で対局を行なう、という斬新なものだが、しかしよく考えてみると、将棋をネットで指す意味はあるのだろうか?
クリックミスなどの将棋の本質とは全く関係ない事象が勝敗を決めてしまっても良いのだろうか?

本棋戦にはWeb時代に将棋界も乗り遅れまいとする気概は感じる。しかし、そもそも将棋をネット上でPCを介して指すことの意義が分からない。
今一度考え直す必要があると思うがいかがだろう。

大和証券杯ネット将棋公式ホームページはこちら

2008-05-12

ボナンザVS勝負脳 ー最強将棋ソフトは人間を越えるか

- 著者:保木邦仁/渡辺明
- 出版社:角川ONEテーマ21
- 出版日:2007/08/10

将棋ソフトの話題が出た(といってももう日前だが)ついでにこの本を取り上げる。

将棋ソフトが一流プロ棋士に挑んだ、ボナンザ●vs○渡辺明竜王戦を期に、渦中のボナンザ制作者である保木邦仁氏と渡辺竜王のコラボレーション企画だ。

保木氏は言わずと知れたボナンザの生みの親だが、将棋は素人という。ボナンザは全幅検索を採用しており、結果としてこれがボナンザの強さの要因だったようだ。
従来の将棋ソフトは選択的検索であり、将棋をあまり知らない保木氏だからこそ全幅検索を採用し得たという見方も出来る。
将棋もオセロ同様論理的には必勝法(あるいは絶対負けない方法)が存在するはずである。ただし指し手がほぼ無限大なので、人が楽しめるゲームとして成立するのである。
全幅検索を搭載するのは非現実的と思われていため、従来の将棋ソフトはいかに効率の良い選択的検索を搭載できるか、ということに注力していた訳だ。
ハードウエアの進歩と全幅検索の採用、そして保木氏の出現という3つの要素が重なって、ボナンザという既存の将棋ソフトとは一線を引くソフトが誕生したのだと思う。
保木氏の文章はいかにも理系の人間という感じがするが、平坦で分かり易い文章を心掛けている感じがして好印象だ。

対する渡辺竜王は言わずと知れた若手ナンバー1のトップ棋士だ。
勝って当たり前というやりにくい空気の中、いかにしてボナンザ戦に挑んだかが、記されている。
結果は一見渡辺の薄氷の勝利に思えるが、渡辺は「トッププロに迫るにはまだかなりの時間がかかる」と予想している。
渡辺の文章も分かり易さには定評があり、そんな渡辺の、将棋ソフトに対する考え方は一見の価値がある。

コンピュータが発達して来ると、いつかは将棋ソフトが人間を凌駕する。
しかし、その日が来ても将棋の魅力はいささかも衰えることはないと思っている。
コンピュータは計算機であって、ソフトはコンピュータにどのような計算処理をさせるかを決めているものである。ただそれだけのことだ。
コンピュータは人間には到底不可能なその計算処理能力でしらみつぶしに全幅検索をする。
人間は大局観というコンピュータには持ち得ることのできない選択的検索を磨き続ける。
両者は相容れない特徴を持っており、どちらが勝った負けたというのは、興味深いテーマかも知れないが、本質の外だ。

2008-05-11

第66期名人戦第3局

テニスと同様に後手番の将棋をいかにブレークするかということがタイトル戦では一つの課題と言える。
森内名人は、過去千日手のルール改正「一局完結方式」を求めたことからも、先後にシビアなのではないだろうか。
森内先手の第3局、森内としては是が非でもキープしたいところだろう。もちろん羽生二冠それは同じ。ブレークするつもりで本局に挑んでいるはずだ。

戦型は相掛りとなった。

先手は引き飛車から早繰り銀。後手はこれを受けるため浮き飛車に。さらに7筋の歩を突き捨てて、飛車を3四の地点まで素通しにした。
この突き捨て自体は相掛りでは見る手筋だ。
下図は△4四角と5五の角を引いたところ。先手は4五まで繰り出した銀を6七まで引き戻している。ゆっくりとした展開になっており、後手の7筋の突き捨てを咎める方針だ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v銀v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v飛 ・ ・v歩v角 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ 角 金 玉 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩二 
【手数=46 △4四角 まで】

ここから▲8六歩△5五歩▲8五歩△5四飛▲7六銀△3三銀▲6七金左と進んだ。
▲8六歩は▲7四歩があるので取れない。▲8五歩も△同桂なら▲8六歩がある。先手優勢。

少し進んで下図。いよいよ▲7四歩が実現して先手優勢、いや勝勢と言ってもよい局面だ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v歩v角v歩v歩|三
|v歩 ・ 歩 ・ ・ ・v飛 ・ ・|四
| ・ 歩 銀 ・ ・ ・v銀 ・ 歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 角 玉 桂 金 ・ 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩 
【手数=79 ▲7四歩 まで】

△7二歩▲5七金上△2四角▲2五歩△3三角▲7八飛△2二玉▲7三歩成△同歩▲6五桂△6二金と進んだ。
後手の指し手は我慢を超越している。△7二歩、駒損を甘んじて受けるだけの手だ。以下も後手は受けるだけの手で効果的な手は一つもない。
一方先手には難しい手はないが、ここまでの構想は素晴らしかったということだろう。構想の仕上げとも言えるのが▲7八飛。
森内快勝譜の出来上がりは間近かと誰もが思ったことだろう。

しかし、しかしである。この将棋がひっくり返ってしまった。
下図は△7八歩としたところ。あの必勝形からしてみれば、相当怪しくなっているが、冷静に指せばまだ入玉は出来そうだ。

後手:羽生善治王座王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ 圭 ・ 角 ・v角 ・v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v銀v金v歩|三
|v歩 玉v桂 ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 歩 金 ・ ・ ・|六
| ・ ・ 金 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|七
| ・ 銀v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香v飛 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:金 銀 歩六 
【手数=140 △7八歩 まで】

ここから▲9八銀△8六桂
▲9八銀が受けになっておらず、△8六桂で大逆転だ。
50年に一度の大逆転というのは大袈裟かも知れないが、必勝形の先手番をキープ出来なかった森内のショックは相当大きいと想像する。
それにしても将棋は恐ろしい。トップ棋士の一戦でさえ、このような逆転が起こりえるのだから。人が指すからドラマが生まれる。
今回の逆転劇は勝負を捨てなかった羽生の執念が呼び寄せたと言えるのではないだろうか。

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2008-05-06

コンピュータ将棋がアマトップを越えた日

毎年恒例のコンピュータ将棋選手権はここ数年GWに開催されている。
彗星の如く出現したBonanzaが優勝したのはもう一昨年のことになる。
2007年3月には渡辺竜王とBonanzaの公開対局が行われ、接戦の末プロが面目を保ったことは記憶に新しい。

第18回である今年の上位の顔ぶれは、以下である。
 1位 激指
 2位 棚瀬将棋
 3位 Bonanza

選手権結果は順等だが、エキシビジョンマッチが凄いことになった。
アマチュア若手強豪の加藤幸男氏と清水上徹氏がそれぞれ棚瀬将棋と激指に平手(15分秒読み30秒)で負けたというのだ。
棚瀬将棋は相手のミスを的確に咎めて圧勝、激指は居飛車振り飛車対抗形を勝ち切った【棋譜】。

レギュレーション(持ち時間、番勝負or一発勝負)の設定が難しく、将棋ソフトのレベルは一概に断ずることは出来ないが、普通のアマチュアでは容易に勝てないレベルになったということなのだろう。

これはもはやプロでさえコンピュータ将棋に負ける日はそう遠い日ではないということを暗示している。
仮にその日が明日やってきても、ハードウエアとソフトウエアの進歩を鑑みると驚くにはあたらない。ただ、プロには簡単には負けないための努力を惜しまないで欲しい。

2008-04-29

訃報:小野修一八段

去年健康上の都合で現役を引退された小野修一八段の訃報を知った。

「モグラだって空を飛びたい」
新人王戦優勝の自戦記だったと思うが、今でもに印象に残っている名台詞だ。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

2008-04-25

第66期名人戦第2局

そういえば今期から名人戦は朝日と毎日の共同主催となった。ファンも含めた将棋界にとってどのような恩恵があるのか、あるいはないのかが今ひとつ分からないが名人戦が始まった今日でも少なくともネット観戦をしている範囲ではその差異は分からない。

そんなことはさておいて、第2局は後手森内名人が一手損角換りを選択した。先手羽生二冠は早繰り銀で対抗、今期順位戦最終局で佐藤二冠が見せた作戦を踏襲した。
あの将棋は佐藤がA級残留を決めた将棋として記憶に新しい(佐藤○vs●木村)。

図は森内が△6三銀としたところ。ここで佐藤vs木村戦とは別れを告げた。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 桂 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王王将
先手の持駒:角 歩二 
【手数=30 △6三銀 まで】

ここで羽生の指し手は▲3五歩。
つい先程歩交換したばかりの地点に合わせる手だ。△6三銀と上がったことで事情が変わったのということだろうけどなかなか思いつかない手だ。

玉を囲えない将棋でかつ角を手持ちにしているので神経の使う将棋となった。
先手は8七に歩を受け(これで8三に歩を叩く筋がなくなった)、後手は6四に角を放って先手陣を牽制する動きの後下図となる。
5五の地点で銀交換が行われて△5五角。これに対し▲1八飛としたところ。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩v角v歩 ・v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 桂 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王王将
先手の持駒:角 銀 歩 
【手数=55 ▲1八飛 まで】

ここから△4六歩▲5八飛△5四銀▲2四角と進んだ。
△4六歩は積極的な手だが、▲5八飛がさらに上を行く手だった。△5四銀と手厚く受けたところでは後手が良いのではないかと早合点してしまったが、さにあらず。▲2四角が用意の手だった。王手で4六の歩を処理しようとする手だ。
もっともこれで後手が悪くなった訳ではない。4六で角交換をすると△4七角が好打となるからだ。

本譜も△4七角が実現した。▲1八角が対抗策の好手で密度の濃い応酬が続いている。
図は▲5七飛と飛車を逃げたところ。

後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v玉 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v銀 ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・v歩 ・|六
| 歩 歩 桂 歩 飛v角 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ ・ ・ 角|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王王将
先手の持駒:銀 歩 
【手数=69 ▲5七飛 まで】

ここから△2七歩成▲6三銀△4二玉▲4七飛△1八と▲5四歩と進んだ。
森内は強く△2七歩成と踏み込んだが、この瞬間に▲6三銀と放り込んだのが妙手。
勢い角の取り合いになった。更に▲5四歩も△3六角の飛銀両取りの筋を消しつつ後手の急所に手を付けた一石二鳥の好手だった。

この辺りで先手持ちの声が大き